見出し画像

帯広豚丼

先月2回目のワクチンを打った後、「ワクチン後は豚肉教」の敬虔な信者である私は、かねてより熱視線を投げかけていたこちらの豚メニューを作った。


キーポンザって新手のIT用語かなんかだと思ってスルーしてたけど、もしかしてkeep on the のことかってたった今気づいた


敬愛する凄腕料理人・ぽなちゃんによります、帯広豚丼。かつて旅行に出かけた北海道にて、涙にむせびながらこの豚丼を食べた者としては、この記事は即刻聖典入り余裕でした。何しろ帯広の豚丼ときたら、ご家庭ではなかなかにハードルの高い炭火焼きが必須なわけで……室内でガスバーナーを用いてメスティン炊飯してる民でも、さすがに室内で炭火を焚くのは厳しい。私の燃え盛る食欲の炎と共に、おうちも燃え盛ってしまう危険があるのでな。かといって庭に焚き火台持ち出すのも、ちょっとめんどうくさい。こいつを食べたけりゃ北海道にお伺いするしかないのかと、長年思っておりました。ところがですねー、このレシピを辿れば!炭がなくても炭火焼き風の、香ばしいかほりをまとった豚さんが食べられちゃうんですよー!

聖典に従って初挑戦した時は、ちょうどワクチンの副反応がスマホを直撃するという、予想の斜め上すぎる事態に振り回されていたのだけれど、とってもとってもおいしい豚丼ができてご満悦だったし、抜かりなく写真を撮って記事にするつもりだったのだ。まあその写真は撮影から30分後に、絶命したスマホと共に手の届かない処へ逝っちまったんですけどね……。


なお、お弁当でもおいしくいただきました


ということで、今回は逝っちまったアイツの弔い合戦である!


昨夜の晩ごはん、帯広豚丼。トンテキ用の豚肩ロース肉はラップに包んでから拡張工事を施し(=めん棒で念入りにぶん殴る)、ラップをはがしたら今度は貴族のラップでピチットして、冷蔵庫にてしばしお休みいただく。

帯広豚丼のたれは、しょうゆ・砂糖・みりん・料理酒……と、どのご家庭にもあるごく普通のラインナップ。これを煮詰めればたれの完成なのだけれど、ここに、ただの豚丼を帯広豚丼に進化させるひみつがあった!小鍋にぶちこんだ調味料を、わりと強気の火加減でガンガンあおり、ぶくぶくするまで煮たててゆく。サラリとしていたはずの鍋の中身が次第にドロリ感を帯びてきて、あれ……なんかこれやばくね?焦げてね?って匂いがしてきたところで、水少量を加えてジュワー!っとさせる。そうしてちょっとサラリ感を取り戻したたれを加熱し続け、再びドロリ感が戻り、やべえ今度こそ焦げ……?!ってところでまた水。ジュワー!サラリ……ドロリ……焦げ?!ジュワー!!!!!ってのを3回ほど繰り返したら、炭火焼き風たれの完成。ジュワーが楽しかったので私は5回やった。あと、砂糖と一緒に少しはちみつも入れてみた。

貴族のラップでピチットしておいた豚肉を、適当な大きさにカット。フライパンにサラダ油を熱し、肉の両面にこんがりといい焼き目がつくまでソテーする。いい具合になったらいったん肉を引き上げ、フライパンの底にふんだんに滲み出た油を林家ペーパータオルで拭いとる。ここに先ほど完成したたれをぶちこみ、続けて肉もぶちこみ、肉とたれがねっとりと混ざり合い、絡み合い、くんずほぐれつでめくるめく官能の空間を描き出したら火を止める。炊きたてごはんの上に並べて、てっぺんに茹で枝豆をトッピングしたらできあがり。いや、本当はグリーンピースを飾りたかったのだけれど、この時期生のグリーンピースは手に入らないので……代わりに枝豆を使いました。


えっ、缶詰のグリーンピースを使えばいいって?


これはあくまで個人的見解なので生ぬるい目で読んでいただきたいのだけれど、缶詰のアイツはグリーンピースじゃない。あれはグリーンピースに擬態したナニカだから。グリーンピースってのはなぁ!さえざえとした鮮やかな緑色の皮に!ぷりっとした歯ごたえがあって!歯を入れると心地よい抵抗感と共に!ほっこりした優しい豆の甘みと青くささとが!口中いっぱいに広がるもんなんだよ!缶詰のアレはへにょっとして締まりがなくてまるで私の顔面みたいにぼやけてぬぼっとした存在感しかなくてとにかく私はアイツをグリーンピースとは認めねぇ認めねぇよぜってーーーーーになッッ!!

(缶詰グリーンピース愛好家のみなさま、すみません)


画像1

どっしりとした豚さんがたれでてりってりに輝いていて……嗚呼、なんというほとばしるエロス。たまらんのう、たまらんのう。


画像2

昨夜は恋人が晩ごはんを食べに来てくれたので、ちょっとはりきって定食風を意識してみました……といっても残り物流用だけどな。副菜は、お弁当用に作りおきして残っていたひじきの煮付けと、ほうれん草のおひたし。先週末に長野から持ち帰った野沢菜の漬物。味噌汁はなめこと油揚げと長ねぎ。缶チューハイは恋人からの手土産です(いつもありがとう)。


こんがりと焼けた豚肉を頬張ると、まず広がるのは炭火焼きさながらの馥郁たる香り!みんな大好きな、しょうゆベースのこっくりこってり甘辛味に、ふわりと漂う香ばしさ。そして、そんなパンチ力のあるたれに包まれても全く霞まない、豚肉そのもののどっしりとした旨み。どちゃくそめちゃんこおーいしーい!!ピチットしたおかげで肉の臭みは抜けているし、バチクソにタコ殴りにしたのも功を奏して、ほどよくやわらかく、心地よい歯ごたえが楽しめる。噛みしめるとじゅわりと滲み出てくる肉汁がまた、たれに合うこと合うこと!ほんのり透き通った脂身の、プリンとした食感、油の甘みもたまらない!これを炊きたてのホカホカごはんに載せて、勢いよくかっこむ……もうね、最高ですよ。最高の二文字しか浮かばないわこんなん。食べているうちにごはんにたれと肉汁が行き渡っていき、つやつやてりてりの飴色に染まったごはんがまた、もう、ね……(感涙)。

なんと言っても、薄切りの豚バラ丼では決して味わえない、どっしりとしたお肉の重厚感が素晴らしい。いや薄切り豚丼もあれはあれでおいしいのだけれど、このガッツリ感、ボリューム感はやはり別格だなあ。丼にとにかくパンチが効いている分、あっさりめで揃えた副菜とのバランスもちょうどよござんした。この香ばしい甘辛たれ、味噌汁にも最高に合うな。

北海道にお伺いしないと食べられないと思っていたこの味が、おうちで簡単に味わえるなんて思ってもみなかった。ぽなちゃんと北海道に向かって両手を合わせてかしこみかしこみしつつ、ごちそうさまでした。これで先月スマホと共に急逝したアイツ(の写真)も、浮かばれることでしょう。めでたし、めでたし。


最近、年のせい(アラフィフ)かあまり肉が食べられなくなってきた……と嘆いていた恋人も、大絶賛しながらぺろりと完食してくれた。このたれ、鶏肉に使ってみるのもいいかもなあ。お弁当のおかずにも良さそうだ。

いただいたサポートは、外で暮らすねこさんたちの生活が少しでもよきものとなるよう、関係団体に送らせていただきます。