見出し画像

二日酔い救済茶粥

ひとは如何して、同じ過ちを幾度となく繰り返してしまうのだろう。

かつて野生動物であったはずの我々は、進化の過程でさまざまな知識を身に付けることを赦され、今この惑星上で大きな顔をして生きているわけだけれど、

これは、その代償としての十字架なのだろうか。


三連休の中日の昼下がり。

私はそんなことを考えながら、もはや吐き出すものの無くなった空っぽの胃を抱え、這いずるように―――否、文字通り床を這いながら、トイレを後にして寝室へと向かった。



ということで、本日は二日酔いで撃沈しておりました。溶かしたねー。貴重な休日をほぼ丸一日きれーいに溶かしたね!


ああ……なんで昨夜の夜更けに「日曜の最終回に備えておかねばならぬ」という使命感に課せられて、『鬼滅の刃』無限列車編~遊郭編のイッキ見なんてしちゃったんだろう。いやそれ自体は別に何も悪くない。鬼滅に罪はない。どうしてロクなつまみも用意しないまま飲み始めちゃったかなぁ。お酒×鬼滅なんて途中で席を立つことが不可能なタッグだって考えなくたって分かっるだろ?「うーんあんまりお腹空いてないし、とりあえずカレー塩で始めて、あとで枝豆ペペロンか砂肝アヒージョでも作ればいっかー☆」じゃねえんだよ!ばーかばーか、昨夜のワカナのばーか!おたんこなすー!!!!!


まあそういうわけで、ろくすっぽ食べずに(というか塩を舐めながら)呑み、回を追うごとに緊迫していく鬼滅のストーリーに、もう何度も見ているにも関わらず画面にがっぷり四つのかぶりつき。否応なしに酒が進み、煉獄さんのあのシーンでは溢れる涙を拭いながらグラスの中身を一気に干し、「くそっ……こんなガチムチ系全然タイプじゃないのになんて格好いいんだよ宇随のアニキは」等とぶつぶつ言いながらさらに呑み、先週の放送回の「がんばれ……!みんながんばって!(首を)獲れェエエエエエ!!!!!」と吠えるシーンに辿り着く頃には完全へべれけ状態のワカナが爆誕していたため、もちろん就寝前のしじみ汁はおろか水分補給すらせずオフトウンへ一直線(本当に救いようのないおたんこなす!)。……というわけで、今朝はそれはもう凄まじい吐き気と頭痛で目が覚めた次第です。ああ、久しぶりにやってしまった……。


今さら言うまでもないことだけれど、二日酔いは辛く苦しい。胃の中のものを全て出し切っても収まらない吐き気、視界が揺れるほどの頭痛、焼けつくような喉の渇き。それに加えてうつくしくない。寝床でもんどり打ってるもんだから頭髪は「おっ、なんかの実験帰り?」ってくらいバクハツしてるし、頬っぺたには枕カバーの後がくっきりと刻まれてるし、目は完全に死んだ魚のそれ、唇もお肌もバチクソに荒ぶっている。せっかくここ最近、のりまきさんに教わった例のアレのおかげでお肌絶好調だったのに……(そろそろレビュー記事を書きたいと思っています)

トイレで限界まで絞りきった後に鏡を覗くと、絶望しかありませんね。なんだこの、普段にも増して小汚いのは。ああ、私だ。

いつぞやのソロキャンプ自撮りをご覧になられた方は御存知でしょうが、私は大変に鉈が似合う風貌であるため、体調が絶不調な日は自動的に落武者へと進化を遂げることになっている。今日もいました、落武者が。もう腹を切りたくなったわ。


という具合でほぼ一日、ひたすら「もうしません、もういたしませんから御慈悲を……」と恐れ入りながら臥せっておったのだけれど、夕方になってようやくその祈りが報われたのか、起き上がれる状態まで回復した。洗濯機を回しながらお風呂に入り、さっぱりしたところで食欲も少し出てきたので、空っぽの胃袋に何か入れるべく、表題を作りました。前置きが長すぎる。


画像1

ということで今夜の晩ごはんは茶粥。土鍋にお湯沸かしてほうじ茶のパック入れて、お茶を煮出したところで洗ったお米をぶちこみ、強火でガンガン炊くだけ。お粥はあまり粘りを出さないのが好きなので、私はいつも強火炊きです。味つけは塩のみでさっぱりと。


画像2

トッピングは市販の漬物(紫蘇の実漬け・つぼ漬け)と、自家製梅干し。すっぱい、しょっぱい、甘じょっぱいと三種揃えるあたり、二日酔い起きのくせに我ながら食い意地が張っている。


ほうじ茶の香ばしさをふんだんに含んだ、サラサラのお粥。もう……もうね、涙が出るほどおいしゅうございます。最後の一滴まで絞りに絞り切った胃の腑を、やわらかく、穏やかに、慈愛に満ちたぬくもりでそっと包み込んでくれる。嗚呼……なんてあたたかく、優しいの。水の呼吸・伍ノ型 干天の慈雨で首斬られた鬼の気持ちが今、痛いほどよく分かるわ……(感涙)

そして漬物軍団、とりわけ梅干しが本当に染み入る。私が毎年梅干しを漬けるのは、ひとえにこの時のためなのでは?という気さえしてくる。自分で作った梅干しがいちばん輝く瞬間はまちがいなく今だわ。ひょっとして私、これを味わいたくて二日酔いになっているんじゃないかしら。ごちそうさまでした。


最近はずいぶん機会が減ったけれど、誰かと呑みに行くと「ワカナさんお酒強いですねー」と必ず言われる。けれど実際のところ、私はそんなにお酒強くないです。ザルの父とワクの母の姿を幼い頃から見て育ってきたので、真の強者までは遠く及ばないことを熟知している。熟知しているのに、たまにこうしてやらかしてしまうんですよね……反省。

ちなみに両親の出会いは職場だったのだけれど、飲み会で毎回部署の殿方全てを潰してタクシーで送り届ける係だった母に、初めて最後まで付き合ってくれたのが父で、その姿に母がキュンとキちゃった……というのが二人の馴れ初めだったらしい。なんだよその「ここまで俺についてこられたのは、お前が初めてだ……」みたいな格闘漫画的エピソードは。


大変お恥ずかしい休日を過ごしてしまったけれど、茶粥(と梅干し)のおかげですっかり快復した。明日は人間らしい休日を送ることができそうだ。


もう、今日のような惨劇は二度と繰り返すまい。


最終回視聴に向けて、明日はきちんとおつまみを仕込んでおこうと思います。


いただいたサポートは、外で暮らすねこさんたちの生活が少しでもよきものとなるよう、関係団体に送らせていただきます。