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貧乏人のキャビア

今夜のおつまみ、貧乏人のキャビア。なすのがくを外し、側面に沿うようにして皮に浅く包丁を入れる。このなすを魚焼きグリルにて、皮全体が真っ黒に焦げるまで焼く。焼いている間ににんにくひとかけ、黒オリーヴ数粒、アンチョビ一切れをみじん切りにしておく。なすが焼けたら火から下ろし、まとめてサランラップで包んで少し蒸らし、ちょっとふにゃんとなったところで皮を剥いて、ペースト状になるまで包丁でメッタ打ちにしておく。

フライパンにオリーヴ油を熱し、にんにくとアンチョビを香りが立つまでゆっくり炒めたら、メッタ打ちなすと黒オリーヴ、バジルペースト、黒こしょうを追加する。焦げ付かないように注意しつつよくよくよーく炒め、全体の水分があらかた飛んだら火から下ろす。粗熱が取れたら保存容器に移し、冷蔵庫でしっかり冷やしてできあがり。


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要するになすのペーストなのだけれど、美食の殿堂国・フランスではこれを『貧乏人のキャビア』と呼んでいるらしい。もともとのルーツはロシアにあるという説も聞いたことがある。自分が初めて知ったのは、我が国の誇るシャンソン歌手・石井好子さんの著作でだった。


作中では『なすのイクラ』という名前で登場する。なすの種のツブツブ感をキャビアに見立てた代用料理らしい。

日本のパリこと府中にお住まいの凄腕料理人であるケイチェルおじ上殿も、先日これをお作りになっておられました。


(ビーツ入りポテトサラダ……!おしゃん……!アタイの求める映えがここにある……ッ)


レシピを検索すると色んな作り方が出てくる。石井好子さんはセロリや玉ねぎを使っていらしたし、トマト入れてもいいらしいし、シンプルになすのみで作ってもいいみたい。自分も色々試してみた結果、アンチョビを少しだけ入れるこの作り方に落ち着きました。


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今夜はクラッカーに載せていただく。かりかりに焼いたトーストに載せてもヨシ、サンドイッチにしてもヨシ、パスタに載せてもヨシ、なんならごはんにも合う。いずれにしても『キャビア』と銘打たれている以上、キンッキンに冷やしたワインやウォッカは必要不可欠。スパークリングワインとの相性もばっちり。

初めて作った時は「こんなほぼ野菜でできたものの一体どこに魚卵要素が……」と甚だ疑問だったのだけれど、いざ食べてみると、魚卵要素とかどーでもよろしくなるくらいおいしい!油と合わさったなすの旨みに、にんにくとバジルの香り、黒オリーヴのほのかな酸味とクセが効いていて、ほぼ野菜とは思えないほど濃厚なコクがある。アンチョビはごく少量しか入れないのだけれど、しっかり海の香りを主張してくれている。パリパリのクラッカーにこのねっとり感が合わさると、いくらでも食べられてしまいそう(イクラ(キャビア)だけに)。口内を満たすこってりした味わいを、すかさず爽やかな白ワインで追いかけるとモー最高です。ごちそうさまでした。


これがキャビアの代用品になり得るか?となると、そもそもキャビアをまともに食したことのない自分は皆目見当がつかんのですが、これがとってもおいしいオードヴルやおつまみになり得るってことだけは分かる。瓶詰めにして冷蔵庫に入れておけば日持ちもするので、なすが安くなる時期の常備菜として重宝しています。今年も秋までたくさん作るぞー!


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