見出し画像

自家製パンチェッタでトマトパスタ

我が家に貴族のラップこと『ピチット』がやってきたのは、8月上旬のこと。


敬愛する凄腕料理人さん界隈で、ちょくちょく話題にあがる『ピチット』。

肉や魚をこれで包むと、浸透圧?とかいうアレがナニしてどうにかなることにより、食材のうまみが凝縮されたり、保存状態が良くなるという優れもの。その機能を利用して、なんとベーコン(の一歩手前?)のような保存肉もおうちで手作りできるという。


これはぜひともやってみたいと思った私は、さっそくわがまちのホームセンターに足を運んだ。この時点ではまだ、ピチットは林家ペーパータオルのような、どこでも───安さがウリな、庶民御用達の量販店でも───簡単に購入できるものとばかり思っていた。

だかしかし、ホムセンKにもホムセンKⅡにも、ホムセンBにもホムセンKGにも、どこにも売っていない。(ホムセンの多さでわがまちの田舎っぷりが察していただけましょうや……あとホムセンの頭文字がKの店大杉問題)

ええいならば、と早馬を飛ばした最終兵器万屋、ドン・キホーテ。あのごちゃついた店内をしらみつぶしに探して回ったけれど、どうにも見つからない。ちくしょうめ……こうなったらAmazonでポチーしてやるわ!


そうして、ここで初めてその値段を知る。

ほっほーん、32枚入りで約2,000円弱……ふむふm


一枚約60円ですと?!

バチクソたっか!!!!!!


私の中で『ピチット=貴族のラップ』が確定した瞬間だった。しかしながら、頭の中が塩漬け肉でいっぱいになってしまった今、もう後には引けない。震える手で一箱ポチったものが、翌々日には玄関先に届いた。素早いお仕事いつもありがとうAmazon……(拝み)


大いなる支配者・大帝国ロピアで買ってきた豚肩ロース肉ブロック(100g99円)の全身に、たっぷりの塩&マジックソルトをまぶし、肉の表面によくよく擦り込み、モミモミする。お肉モミモミするのってなんでこうも楽しいんですかね……(恍惚)。さらにお好みのハーブ(今回はローズマリーとタイムを使用)もペタペタとはたきつける。これを林家ペーパータオルでくるみ、さらにごく普通の庶民のラップで包んで、一晩冷蔵庫にてお休みいただく。

翌日、水分が若干抜けてちょっと引き締まった様子の肉塊を、いよいよ貴族のラップにてピチットする。ちなみに貴族のラップは、一枚あたりB4サイズくらいで、ミシン目から切り離す仕様になっていた。最初の一枚目をちぎる時は緊張で手が震えた。何しろ一枚60円である。

貴族のラップの上に肉塊をうやうやしくお載せ申し上げ、空気を抜くようにしてしっかりピチット包む。


画像1

ピチットしたものを、さらにジップロックに入れて仕込みは完了。あとは冷蔵庫にて2週間程度お休みいただく。熟成期間中に貴族のラップがぷよぷよしてくるので、適当なぷよ度になったら新しいものと交換する。


元々の肉塊のコンディションにもよるけれど、5日~1週間に一度交換するようなイメージだろうか。脱水するほど保存状態は良くなるし、旨みも増すものらしいので、わりとこまめに変えるようにした。交換するたびに「いちまいろくじうえん……!」と手は震えるし呼吸は荒くなるし心拍数は急上昇するし肉の匂いを嗅ぎ付けたねこは寄ってくるしで、なかなかに心乱される半月間だった。


そして半月後。


画像2

すっかり脱水され、引き締まった肉体をさらす豚肩ロース。ヒュウ!なんてセクシーなんだ、いい感じである。ローズマリーがちょっと多かったせいで、なんか芝生の上に落ちた肉みたいになってるけど。

匂いを確認してみると(とにかくまず匂いを嗅ぎたがる勢)、臭みはまったくない。ハーブのいい香りだけが鼻腔をくすぐる。とても半月前に買ってきたお肉とは思えない。


画像3

このまま冷蔵庫保存も可能らしいけれど、初心者なので切り分けて冷凍保存した。半分は弟一家におすそわけ予定。


さて、こうして完成した自家製パンチェッタで何を作ろうかな?と考えたのだけれど、


画像4

ちょうど作りおきのトマトソースがあったので、まずはパスタでいただいてみることにした。


パンチェッタを適当な大きさにカットして、油を敷かないフライパンに入れ、弱火でゆっくり加熱。そうするとパンチェッタが自身の持つ脂でじゅうじゅう言い始め、なんとも言えぬいい香りがしてきた。なにこの香り、エロスが過ぎやしないか?焦がさないようにコロコロしながら炒めて、全体の色が変わったところでトマトソースと黒オリーブを投入。

トマトソースは、生トマト(義妹ちゃんからのおすそわけ)ににんにくとオリーブ油、バジルペーストと塩こしょうを入れて気長に煮込んだもの。のちのちアレンジしやすいように薄めに味つけしておいたので、パンチェッタの塩気と合わせてもよかろう、と思った次第。実際、非常にいい塩梅に仕上がってくれた。

アルデンテ直前に茹であげたパスタを、茹で汁少量と共にソースの中にぶちこみ、全体をよく混ぜつつ水分を飛ばしてお皿にホイ。仕上げに乾燥パセリを振ってできあがり。


画像5

アラ~~~いいじゃないのぉ。


フライパンでソテーしている時から「これがおいしくないわけがない」ってくらい、むちゃくちゃいい匂いさせてたパンチェッタ。見た目はベーコンによく似ているのに、食べてみると紛れもなく豚肉そのものの味!凝縮されたお肉の旨みと、ジューシーなジル(つーか脂)、適度な塩っけが最高にマーベラス。これはおいしいー!そして、ひと噛みごとに口の中にふわっとハーブの香りが広がるのもうれしいー!ハーブっていつも煮込むものにばかり使っていたけれど、焼いたお肉と合わさるとこんなにおいしんだ!とびっくりした。

もひとつびっくりしたのは、ほとんど調味料を入れずに仕上げたにも関わらず、味のバランスがむちゃくちゃいい感じになっていたこと。甘酸っぱいだけだったはずのトマトソースが、パンチェッタからにじみ出た塩気と脂、ハーブの香りによって華麗なる変身を遂げている。トマトソースにベーコンの組み合わせとはまた違うおいしさだ!ベーコンよりも、もっとシンプルで滋味をしみじみ感じるというか、素材そのものの味というか、そこはかとない野趣が漂うというか……うまい表現が見つからないけれど、とにかくおいしい!

なんかこれ、野外で食べたくなる味だな。太陽の恵みを凝縮したかのようなトマト味と、ハーブの持つ草の香りのせいだろうか。青空の下で風に吹かれながら食べたら最高だろうな。うーん、すてきな味だった。ごちそうさまでした。


というわけで、初めての自家製パンチェッタ作り、首尾は上々だった。ちょっと時間はかかるけれど、毎日熟成が進んでゆく肉塊を眺めてわくわくするのは楽しかったな。貴族のラップを交換する時は、大変な緊張を強いられたけれども。

残りのパンチェッタを使って、作ってみたいメニューのあれこれを試すのも楽しみ。そして貴族のラップはまだたくさん残っておるので、今度はこいつでお魚を締めてみたいな。

いただいたサポートは、外で暮らすねこさんたちの生活が少しでもよきものとなるよう、関係団体に送らせていただきます。