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【融資相談室】ベンチャーデットの種類と選ぶポイントを徹底解説!

スタートアップの融資を支援しているINQの若林( @wakaba_office )です。

また、「スタートアップ投資TV」というYouTubeチャンネルで、#融資相談室 というスタートアップ融資に関する情報を発信しています。本記事は「【融資相談室】ベンチャーデットの種類と選ぶポイントを徹底解説!」という動画の内容を書き起こしたものです。

Gazelle Capital 株式会社の近藤絵水さんを司会に、ベンチャーデットのプレイヤーについて語っています。

ベンチャーデットの傾向

近藤さん:直近のベンチャーデットのプレイヤーの動きとして、どのような傾向があるのでしょうか。

若林:2023年後半の動きとして目立っていたのが、まず、UPSIDER BLUE DREAM Fundです。みずほフィナンシャルグループとUPSIDERによる100億円規模のデットファンドが立ち上がって、AIを活用した与信でクイックにグロースしたいスタートアップのためにデット性の資金を供給するという発表がありました。

その他にも、りそな銀行が通常レイターに対して供給されるベンチャーデットを、少し早い、アーリー以降のフェーズのスタートアップに、ベンチャーデットを提供していこうという動きを見せました。

またSiiibo証券では、私募債のセカンダリーマーケットをスタートした点も、2023年のベンチャーデットのプレイヤーたちの特徴として挙げられます。

ベンチャーデットの種類

近藤さん:ベンチャーデットにはいくつか種類があると思うのですが、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。

若林:そもそも、「ベンチャーデット」の定義は「新株予約権付きの融資」です。新株予約権という株式を購入する権利を融資にくっつけた、融資資金の一部が新株予約権付きになっている、エクイティとデットを組み合わせた資金供給方法をベンチャーデットと定義します。
つまり新株予約権が付いているかどうかがベンチャーデットの特色の一つにあたります。具体的には、静岡銀行、あおぞら企業投資、東京スター銀行、横浜銀行、きらぼし銀行、日本政策金融公庫などが、本来の意味でのベンチャーデットを提供しています。

一方で、新株予約権を付けないスタートアップ向けのデットファイナンスもあります。代表格として、大和ブルーフィナンシャル、Siiibo証券、Fivot、静岡銀行などが提供しています。

近藤さん:他にも特色はあるのでしょうか。

若林:最近デットファンドという言葉をよく聞くようになったと思います。デットファンドから融資するのか、本体のBSから融資するのかという点も特色と言えるでしょう。
例えば、あおぞら企業投資はあおぞら銀行系のデットファンドがありますし、みずほキャピタルもデットファンドを立ち上げています。それからSDFキャピタルもスタートアップ向けの資金を供給するデットファンドですし、Yoiiもデットファンドを作る可能性を匂わせています。

※収録後、Fundsが金融機関共同研究型ベンチャーデットファンド「Funds Venture Debt Fund 」を立ち上げました。

デットファンドでも本体でもないところでいうと、Siiibo証券はまさに、個人投資家が集まって私募債を引き受けるというプラットフォームを持っています。これは特殊な形ですね。

近藤さん:出所が違うことによって特性は何か変わるのでしょうか。

若林:銀行には「融資する」という目的もあるので「銀行がお金を出せばいい」と考えている方もいると思います。しかし伝統的な銀行融資でいうと、決算書をもらって格付けをすることで融資のスタートラインが決まり、そのスタートラインが低いと、どうしても貸倒引当金を積むといったことをせねばならず、ルールが厳しくなります。スタートラインが低いところから大きい金額を融資してもらうにはそれなりの理由が必要です。そのため銀行は思い切った融資がなかなかできません。このような背景があります。

それらの制限から全く自由になるわけではないのですが、切り出しをデットファンドにすることで融資の意思決定は比較的しやすくなる可能性があります。

近藤さん:だからこそファンドを作るということですね。


若林:あともう1つ切り口としては、銀行系か否かという点も挙げられます。銀行系でいうと静岡銀行、りそな銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、SBI新生銀行、三菱UFJ銀行などがあります。これらの銀行はスタートアップ向けのデットファイナンスを強化している印象です。

一方、銀行系以外のデットのプレイヤーとしては、大和ブルーフィナンシャル、Fivot、Siiibo証券などが挙げられます。

他にも、与信(審査)の方法をデータ中心でするのか否かによっても分類できます。データ中心に与信を行うところだとFivot、Yoii、UPSIDERなどは、AIを駆使した与信をしていると謳っています。

近藤さん:UPSIDERでは日々の資金繰りでUPSIDERのカードを使うことで見てるので、データ構築ができるということですね。

若林:そうですね。以前までトランザクションレンディングと呼ばれたGMOあおぞらネット銀行は管理画面に入ると借りることができる金額が表示されて、入出金のデータを活用して融資する手法はありましたが、それをさらにスタートアップ向けに展開しているプレイヤーが出てきている印象です。

近藤さん:以前出演していただいたバンカブルは、どのような分類になるのでしょうか。

若林:これもサービスもデット性の資金といえると思うのですが、厳密にはお金を貸すのではなく後払いしてもらうサービスにあたります。バンカブルの場合、例えば広告費や仕入れといった特定の支出に対して分割払いや後払いにできるサービスです。その他にも受け取った請求書をクレジットカード払いにして支払いを遅らせるという仕組みでいうと、UPSIDERが展開している『支払い.COM』や、ブルーバンクが展開している後払いサービスなどが該当します。さらにRBF(レベニューベースドファイナンス)という、将来発生する債権をまさに今買い取ってもらって現金化でき、資金調達できるという仕組みもあります。これも正確には融資ではないのですが、デット性の資金調達方法ということで、広い意味でベンチャーデットと括って良いのではないでしょうか。

資金調達のステップ

近藤さん:ここまでさまざまなプレイヤーをご紹介いただきましたが、どの企業がどのプレイヤーとマッチしているのか判断するにはどうすればいいのでしょうか。

若林:元々ベンチャーデットはある程度エグジットの蓋然性が出てきたり、融資という性質上ある程度売上がしっかり上がっていて返済原資が将来的に見える場合に対象となりやすかったり、ここ数年ではレイターのスタートアップが対象となってきたことは実際にあるかと思います。
けれど、りそな銀行がミドルアーリー向けにもデットを提供し始めたということもありますし、大和ブルーフィナンシャルはさらに前のフェーズのスタートアップにも融資しているケースもありますし、FivotやRBFのYoiiはもっと早いフェーズでの数百万円単位でも融資していると聞いているので、かなりガバレッジが広く、早いフェーズからレイターまでベンチャーデットはチャンスがあるものだと思います。

近藤さん:本動画をご覧いただいている方々の多くは創業期にあたると思います。プレシードではなかなか難しいという話は分かるのですが、シリーズA前後でベンチャーデットを考えたいとき、若林さんの中で思い当たるプレイヤーはいますか。

若林:原則として融資の手数料はリスクが高いところに出す分、金利が高めになるということは確かにあるので、そういった意味では創業融資などの低金利のものをしっかり使っていくことが大前提としてあります。そういった融資を使った上で急成長してきて、銀行では前期の年商以上の金額は貸せないとか、貸したばかりだから貸さないとかで、銀行融資がスタートアップの成長に追いつかないケースは散見されます。その場合、将来債権を現金化できる形でFivotやYoii、大和ブルーフィナンシャル等から資金調達してブーストをかけることは、シードから少しPMFが見えてかけたプレAといったフェーズのスタートアップでも、融資の対象になり得ると思います。

近藤さん:まさにFY+1を見てくださるプレイヤーだと思うので、スタートアップの今後の成長に期待を寄せて支援してくださるということですね。

若林:そうですね。それからビジネスモデルの話でいうと、将来債権が読みやすいSaaSモデル、リカーリングモデルなどは、ある程度安定的に売上が積み上がってきているがゆえに将来債権が読みやすい場合も融資の対象になると思います。これは早いフェーズで融資しているYoiiや Fivot、大和ブルーフィナンシャル、バンカブルなどが該当します。

さらにいうと、売上の増加に伴って支出も増えていく、例えばDtoCなどがそうですね、EC事業だと基本的に売上が上がっていくにつれて仕入れや広告費もついていくなくてはなりません。そういったキャッシュの先出し支出が必要な場合は、手元キャッシュがないと伸ばしたくても伸ばせないというジレンマになって、結果的にバリエーションも上げられないという事態が起こり得ます。このようなケースではREFや、バンカブルなどを活用して、広告費や仕入れ費を後払いにすることで、キャッシュの出を緩やかにすることができます。そうしてどんどん伸ばしていった先でエクイティファイナンスがより良いバリエーションでできたり、あるいはVC調達ができたタイミングと同時に新株予約権を付けるベンチャーデットにトライする形で発展的に使える道筋が見えてくると思います。

近藤さん:ここまでの説明で、フェーズごとにどのようなベンチャーデットのプレイヤーを活用すればいいのかがクリアになったと思います。とはいえ、資金調達の手段はたくさんあるので、分からない点がある方はぜひ若林さんにご相談いただければと思います。




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本記事は執筆・公開時点で発表されている情報を解説したものです。以後制度が変更になる可能性があります。

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