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スタートアップの融資面談と事業計画の失敗パターンとは?金融のプロが解説!

スタートアップの融資を支援しているINQの若林( @wakaba_office )です。

また、「スタートアップ投資TV」というYouTubeチャンネルで、#融資相談室 というスタートアップ融資に関する情報を発信しています。

本記事は「【デットなのに負債じゃない!?】使いこなせばメリットが大きい資本性ローン!|スタートアップ投資TV」という動画の内容を書き起こしたものです。

情報経営イノベーション専門職大学(IU)客員教授で日本政策金融公庫の融資に詳しい佐藤俊太さんをゲスト、Gazelle Capital 株式会社の近藤絵水さんを司会に、資本性ローンについて語っています。

スタートアップの融資面談の失敗パターン

若林:起業家の皆さんに対して、融資面談の際に「これはやってはいけない」という事例があるかと思いますが、いかがでしょうか。

佐藤さん:よくあるパターンとして、そもそも目的を間違えてしまうというものが挙げられます。
具体的にはデットとエクイティを混合してしまうパターンです。基本的に面接する前の段階だと、スタートアップに関しては事業計画書しかない状態と言っても過言ではないと思います。その状況で面談したときに、エクイティのための計画を持って来られてしまうと「今後大きく成長します」という印象を受けます。しかしデットは融資したスタートアップが大きく成長しなくても(返済してもらうには)「少なくともこれくらいの成長で十分」という基準で評価するので、起業家側と融資をする側とでずれが生じてしまう可能性があります。そうなると、認識合わせが大変かもしれません。

また、金融機関の収益モデルは利息で儲ける想定のため、利息として稼げるかどうかもポイントです。デットは一社でも潰れてしまうと回収が難しくなってしまいます。一方、エクイティの場合はどこか一社が大きく成長すれば貸したお金を回収できるというモデルのため、デットとエクイティでは計画の在り方は当然異なります。その点は押さえておくべきです。

スタートアップの事業計画の失敗パターン

若林:スタートアップの事業計画周りでよくある失敗事例はなんでしょうか。

佐藤さん矛盾した事業計画を持って来られるケースがよくあります。金融はロジックの世界です。複数の人がその数字を見て納得しないといけないので、誰が見ても筋が通る事業計画にしておく必要があります。そう考えたとき、例えば売上高は「単価×量」で導き出せます。では、なぜその単価なのか、なぜこの量を確保できるのかについて聞かれたときに、答えられないと融資は受けられないと思います。

若林:創業当初であれば実績はほとんど無く、決算書もあてにはならない。そうなれば、起業家のそれまでの職歴で培ってきたものがあるだとか、自己資金をしっかり準備してきて行き当たりばったりではないところを示したりだとかが重要になりますよね。

佐藤さん:そうですね。

VCと金融機関(銀行等)の違い

若林:融資面談からは脱線しますが、先ほどデットとエクイティは全然違うとおっしゃっていましたが、VCと金融ではどのような違いがありますか。

佐藤さん:誤解を招くかもしれませんが、イメージとして持っておくと良いなと思うことは、出資を受ける場合スタートアップの皆さんはポストのほうで評価をしてお金を調達しようと考えると思います。しかし金融は実績を見たいので、どちらかというとプレで評価しているイメージが強いです。その段階で、例えば資金調達金額が少なくなって、「この金額なら融資は要らない」と言うスタートアップの方もいらっしゃるのですが、いくらかでも資金調達できるなら、次に向かって成長することを想定し、調達したほうが良いでしょう。プレの段階でまた調達すれば、次のポストがまたプレになるわけで、そのときにまた調達していくくらいに思っておくと、やりやすいのかもしれません。

若林:言い方を変えると、スタートアップにとっては少額でも借入・返済の実績があることで、起業家の与信が高まり、今後の調達がしやすくなるということですね。

佐藤さん:そうですね。与信につながるのは返済をすることや、事業計画を守ることです。これらのために自分たちが何をしてきたか説明できるようにしておいたほうが良いでしょう。

若林:1回目の融資を受けて、2回目・3回目と受けるときに、前の事業計画に対して今の実績はどうなのだろうか、上振れてるのか下振れてるのかという話はどうしても出てくることだと思います。それも金融機関に対する、ある種の約束であって、守れる人のほうが借りやすいということですね。

佐藤さん:そうですね。少なくとも計画一期目はぶれないでほしいです。計画一期目が赤字でも問題ありません。でも計画通りに進まないと、一期目すら正しく予測できていないと思われてしまう可能性があるので、一期目は正直な数字で計画を立てることが重要だと思います。

近藤さん:デットとエクイティの仕組みが違うからこそ求められるものも違い、デットは今までの成果を正しく判断してもらうことが大切で、エクイティとは全く違うものだと考えたほうが良いですね。

佐藤さん:そうですね。某有名VCの代表の方が「デットは通知表」だと言っていて、うまい表現だと思いました。

若林:一学期が終わり、成績はこうです。その結果で借りれるかどうかが決まるというのは、言い得て妙ですね。

佐藤さん:うまい言い回しですよね。

その他の失敗事例

若林:他に、公庫の融資で「これをやってしまうと力になれない」と感じることはありますか。

佐藤さんキャッシュが底になってから来る人は対応が難しいなと感じます。このような起業家はそもそも、経営者として自社のことを把握できていないかもしれません。赤字になっても企業は潰れませんが、お金が無くなったら潰れてしまいますから、キャッシュがギリギリの状態で相談されても、お金を貸す側としてもリスクを感じてしまうでしょう。そのため、ある程度キャッシュがある状態で相談したほうが良いのは間違いありません。

加えて、金融機関も自己査定というものをします。そのときも基本的に現預金があるほうがプラスに働きます。なのでエクイティと同時期に、キャッシュがあるタイミングで相談するのが良いかもしれないですね。

若林:キャッシュが底をつきてからだと借りにくいというのはありますが、それより予習的に申し上げると、エクイティが入っているときはBSも良い状態だし、借りやすい状態であるため、先にしっかり借りておいてランウェイを伸ばしておくのが賢いデットの使い方かもしれませんね。

佐藤さん:公庫の場合は難しいんですけどね。現預金があまりにも多いと貸す必要はないんじゃないかと思われてしまう可能性もあります。

担当者とのコミュニケーションの注意点

近藤さん:今まで融資面談の注意点や失敗事例についてお話しいただきましたが、担当者とのコミュニケーションにおいてうまくいかない起業家に共通している点などはありますか。

佐藤さんひとりよがりな説明をされる起業家とは、コミュニケーションをうまくとるのが難しいと感じるケースがあります。自分が知ってることを相手は知らないということは当然あるわけです。私たちも、デットの理屈を起業家たちが当然のように知っているとは思いません。だからこそ逆の立場も考えてもらえると理想的です。スタートアップ界隈では知っていて当然のことも、担当者相手には少し噛み砕いて説明したほうがスムーズなコミュニケーションにつながると思います。

よく「ピッチでは高校生でも分かるように説明しよう」なんて話も聞きますが、担当者に対してもそれくらい丁寧に説明したほうが良いでしょう。

若林:人は知らないことがあると、誰かを応援できませんよね。プロトコルを合わせるという考え方は必要になると思います。

応援したくなる起業家

若林:ここまで失敗事例をうかがってきましたが、佐藤さんご自身が元起業家だったという立場から、応援したくなる起業家はどのような人でしょうか。

佐藤さん:このような言い方をすると変かもしれませんが、Why(ペイン)を深掘りして「この課題を解決したいんだ」と言ってくれる起業家は応援したいなと思います。
スタートアップエコシステムというものがありますが、日本のエコシステムはお金を出す側が頂点になって、起業家が出資をお願いする縦のエコサイクルになっていると感じます。成長したスタートアップで、成功したらお金を出す側に回るというエコサイクルになっていて、「成功するためにはこうしたほうがいい」というノウハウが次のスタートアップに受け継がれている印象です。しかしアメリカに行くとエコサイクルが横回転しています。お金を調達するという縦のサイクルも内包しつつ、例えばこの社内課題を解決したい。そのためには自社の商品やサービスを住民も使いたいと思うし、他社もリスクをとってでも使いたがるし、自治体も共同で試験をやっていくだろう、という横のサイクルができているんです。この横回転が日本でもより活発に出来るようになるといいなと思っています。けれど、日本で横回転のエコサイクルを作るのはかなり大変で、実現は難しいのが現状です。そうすると日本のスタートアップは縦のサイクルを意識してしまい調達ばかり考えてしまう。つまり、Why(ペイン)を掘るのではなくどうやってスケールするかを考えがちです。だからこそあえて、自分はスタートアップでこの社会課題を解決したいんだと語ってくれる人を応援したいです。

若林:それは投資家や金融機関だけじゃなくて、業務提携するような横回転というところにも、Why(ペイン)を深掘りしているかどうかは効いてきますよね。

佐藤さん:そうですね。巻き込み力も大切ですね。

若林:そういう起業家だと佐藤さんは応援したくなると。

佐藤さん:数字計画がボロボロだったとしても整えてあげたくなります。

近藤さん:最後に、動画を見ている起業家の皆さんや、起業に興味がある方々に一言お願いします。

佐藤さん:デットファイナンスで苦労されている方もいらっしゃると思いますし、そもそも資金調達で苦労されている方もたくさんいると思います。けれど、今は意外と味方になってくれる人が多いので、いろんな人に気軽に相談してみてください。私にも相談してくださればと思います。公庫の立場では相談に乗れませんが、個人として対応させていただきます。


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注釈

本記事は執筆・公開時点で発表されている情報を解説したものです。以後制度が変更になる可能性があります。


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