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保証料を上乗せすることで連帯保証を不要にできる国の新制度とは?【融資相談室】

スタートアップの融資を支援しているINQの若林( @wakaba_office )です。

また、「スタートアップ投資TV」というYouTubeチャンネルで、#融資相談室 というスタートアップ融資に関する情報を発信しています。

本記事は「【速報解説】保証料を上乗せすることで連帯保証を不要にできる国の新制度とは?【融資相談室】」という動画の内容を書き起こしたものです。

Gazelle Capital 株式会社の近藤絵水さんを司会に、信用保証協会の保証料を上積みすることで、一定の条件を満たせば連帯保証を不要にできる新制度について語りました。

保証料を上乗せすることで連帯保証を不要にできる国の新制度

近藤さん:2024年3月から始まる新しい融資制度が、起業家にとってメリットがあるということですが、どのような融資なのでしょうか。

若林:本チャンネルで日本政策金融公庫の融資や、民間金融機関の融資、商工中金、資本性ローンなど、いろいろとお話ししてきましたが、今回お話しするのは信用保証協会の保証付融資に関連するものです。
民間金融機関から借入をするときに信用保証協会の保証を付けて融資をすることで、保証がある分、貸し倒れてしまっても銀行側は回収ができるし、そうすると貸しやすくなる。貸しやすいということは企業側が借りやすいということです。このように金融を円滑化する仕組みである保証協会付融資に関する新制度が生まれました。

旧融資制度との対象者の違い

近藤さん:その新制度は、どの段階に立った方々が対象となるのでしょうか。

若林:実はスタートアップ向けの連帯保証を外す仕組みは、2023年3月にスタートアップ創出促進保証がすでに開始していました。それはフェーズでいうと創業5期・5年未満で、新しく起業した人たちが対象です。一定の条件を満たせば連帯保証なしで保証付融資が受けられるという制度でした。

しかし新制度では、創業5期未満という制約が外れて、保証協会付の融資であれば一定の条件さえ満たせば、基本的には保証料を上乗せすることで、経営者保証を提供しなくても保証付融資が利用できるという仕組みになりました。そういう意味では、フェーズの縛りがなくなったという言い方が正しいかもしれません。

近藤さん:保証料は上乗せされるものの、フェーズの縛りがなくなるのはスタートアップにとってメリットですよね。

若林:かなりのメリットですね。信用保証協会の無担保・無保証の枠は8,000万円が上限です。その8,000万円の枠を使っているフェーズの企業、つまり年商の規模でいうと2〜3億円以上となりますが、そこを超えるまでのスタートアップであれば基本的には恩恵を受けられる制度です。

近藤さん:保証率を上げると担保もなくなるのでしょうか。

若林:そうです。いわゆる第三者の保証人や不動産担保もいらないし、さらに代表者個人が負うべき連帯保証も不要になります。

対象となる要件

近藤さん:改めて、新制度の対象となる要件は何でしょうか。

若林:ざっくり言いますと、一定のガバナンスが確保されていて、財務条件が満たされていて、信用保証料を上乗せする。この3つを満たせば代表者の連帯保証を外せます。

近藤さん:3つの条件のうち、まずガバナンスについて詳しくお聞かせください。

若林:ガバナンスとして、まず過去2年間の決算書・資金繰り表を金融機関の求めに応じて提出することが求められます。

もう1つが法人と代表者の一体性の解消です。簡単に言うと、企業を私物化しないということです。例えば自分がオーナーの中小企業で、あまりガバナンスをしていなかったとします。この場合、企業の財布=オーナー自身の財布のような経営をしていることになります。このようなケースでは条件を満たせません。法人から法人の役員・代表に対する貸付金、つまり法人の財布からお金を個人に貸している状態も企業を私物化しているのに等しいので、条件に当てはまらない要因になります。それから業績に照らして役員報酬が異常に高いと、自分の財布に会社の収入を入れるためだけに事業をやっているという状態になります。これは違法ではないのですが、そのような企業は法人と代表者の一体性が解消されているとは言えないので、ならば連帯保証をつけてくださいと言われてしまいます。一体性が解消されていれば連帯保証なしでいいという考え方です。

実は、日本政策金融公庫に経営者保証免除特例制度というものがありまして、これと似た考え方で審査されていると思われます。例えば役員への貸付金が100万円未満、あるいはBSの総資産の1%未満に抑えられているのであれば私物化とは言えないのでカウントされません。

近藤さん:2つ目の財務条件についてもお聞かせください。

若林:財務に関する条件は債務超過でないか、または2期連続で赤字ではないか、いずれかを満たせばOKです。

スタートアップの場合、先行投資をしていてVCから調達しているので、あえて2期連続赤字にしているということもあると思われます。しかし、VCマネーも入っていて資本が厚ければ、債務超過でなければ財務に関する要件は満たせます。2期連続赤字でかつ債務超過であれば要件は満たせません。直近の決算で債務超過でないか、直近2期のうちどちらかが黒字であれば条件を満たすことができます。

近藤さん:最後の保証料についても、詳しくご説明いただければと思います。

若林:保証料を上乗せするのであれば、連帯保証を外して良いという要件です。逆の言い方をすると連帯保証を外すなら、保証料を上乗せしてくださいという話です。

近藤さん:具体的にどれくらいの金額感なのでしょうか。

若林:保証料に関するいろいろな条件によって決まりますが、借入している金額に対して1.15%くらいを基準として、債務超過でもなく2期連続赤字でもないという両方の条件を満たせた場合は基準に対して0.25%上乗せ。債務超過ではないまたは2期連続赤字ではない、どちらかを満たす場合は基準に対して0.45%上乗せということになります。創業2期を終えていない会社は、基本的には2期連続で赤字ではないか判別できないので、通常の保証料に対して0.45%上乗せになります。

近藤さん:一種のランク付けのようなものがあり、それによって保証料がプラスされるというイメージですね。

若林:そうですね。例えば0.45%だと1,000万円借りた場合、45,000円ですよね。その金額でリスクを減らせるならメリットは大きいと思います。仮に1.15%+0.45%として、1.6%が信用保証料だとすると、1,000万円借りた場合16万円になるので、それを払ってでも連帯保証を外せるのであれば、リスクを減らしてチャレンジしたいと考える起業家のほうが多い気がします。

さらに、いま上乗せして払う分に関しても国から補助金が出ることが決まっています。制度をより普及させるという目的で、制度開始から3年間は保証料を上乗せして払う分に対して負担を軽減する措置が取られることになっています。申し込み時期によって保証料を国が負担・補助する仕組みになっているので、早い者勝ちという面もありますね。発表されている情報によると、2025年3月末までは保証料も0.15%分を補助、2026年3月末までは0.1%、2027年3月末までだと0.05%という形で負担軽減措置が走ることになっています。

近藤さん:一定のバジェットがあって、段階をつけながらですが補助金が効くと。それこそ+0.25%アドオンされると思うと、初期に申請をして補助金もちゃんと通るとすごく楽になりますよね。

若林:そうですね。仮に1,000万円を借りるとしたら、保証料に1〜2万円の差が出る感じだと思います。いずれにせよとてもありがたい制度ではないでしょうか。

今後のスケジュール

近藤さん:申請期間に決まりはあるのでしょうか。

若林:2月の中旬から事前相談が開始されるそうです。なので金融機関に「保証料を上乗せすると連帯保証がいらない制度があると聞いたのですが、使えるかどうか保証協会に確認をお願いします」と相談するようなことは、2月16日以降に可能となります。

次に、3月15日以降だと思いますが、制度の受付自体が開始される見込みです。

新融資の注意点

近藤さん:この新融資のTipsや気を付けるべき点などはありますか。

若林:まず1つ、この制度を使って借換ができるのではないかと考えています。具体的な記載はないのですが、制度上おそらくできるはずです。
例えば、すでに保証協会付融資で借りている残高があるとします。それを新しい制度で上書きしてあげると、連帯保証が外れた形で上書きすることになるので、起業家の肩の荷が少し下りると思います。

それから新しい制度が走るときは、銀行の方も、場合によっては保証協会の方も慣れていない可能性が考えられます。すると「少し様子を見ます」というスタンスを取るかもしれません。なので、基本的には新融資を利用したいことを起業家が自分から言わないと、適応してもらえないと思ったほうが良いでしょう。自ら意思表示をすることが大切です。

他にも起こることとして、発表されている要件以外にも蓋を開けてみると「こういうケースも適用外」ということが頻発しがちです。例えばスタートアップ創出促進保証は、最初は明記されていなかったのですが、個人事業主であったり他に代表を務めている会社があったりするとその時点で起業の扱いにならず、制度を使えないケースが散見されました。このようなことが後から発生する可能性があるので、少し冷静に事の推移を見極めることも重要です。

近藤さん:起業家同士で連携したり、若林さんのような支援者と連携したりして情報をキャッチアップすることが大切ですね。

若林:そうですね。あと、銀行の方もキャッチアップの段階でそれほど情報の非対称性がない状態になると思いますので、ぜひ銀行の担当の方にもご協力いただいて取り組むと良いかと思います。

新融資制度の概要まとめ

近藤さん:最後に改めて、今回の新しい融資制度についてまとめていただけますでしょうか。

若林:新しい信用保証協会の保証付融資に関する制度が2024年1月23日に経済産業省より発表されました。これは、一定の条件を満たせば連帯保証がいらない制度です。連帯保証がいらない保証協会付融資の制度としては、2023年3月に発表されたスタートアップ創出促進保証がありますが、これとの大きな違いは創業5期未満などの設立からの年数に関する要件がないということです。創業5期未満を過ぎても対象になり得ます。

どういう条件を満たせば信用保証協会付の融資に連帯保証がいらなくなるのかというと、ざっくり言うと、

  • 一定のガバナンスを満たす

  • 財務条件を満たす

  • 信用保証料を上乗せする

この3つを満たすことが必要です。

ガバナンスのところでは、BS・PLだけではなく資金繰り表も作成して提出することが求められます。それから法人と代表者の一体性がきちんと解消されていること。具体的には法人から法人の役員に対する貸付金がない、業績に照らして役員報酬が不当に高くないなどを満たす必要があります。

財務条件に関しては、債務超過でないまたは2期連続赤字ではない、このどちらかを満たせばOKです。

最後に、信用保証協会に払う保証料を上乗せすることによって連帯保証を外すことができます。

この制度の事前相談が2024年2月中旬から受付開始で、3月中旬から本申込が開始されるというスケジュールです。

起業家に対して本当にありがたい制度がスタートするのですが、新しい制度なので自分からこの制度を使いたいということを銀行のご担当者様にしっかりお話ししましょう。そして既存の借入に対して借換ができるかもしれないので、そのようなことも銀行の担当の方に相談してください。

近藤さん:この動画を見た方から銀行の担当の方にご質問いただけるとうれしいです。

若林:INQにもご相談いただければ対応できると思いますので、ご連絡ください。



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注釈

本記事は執筆・公開時点で発表されている情報を解説したものです。以後制度が変更になる可能性があります。

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