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融資における前回事業計画書との乖離問題

スタートアップの融資を支援しているINQの若林( @wakaba_office )です。

以前のnoteで、ベンチャーキャピタル(以下、VC)と銀行は収益構造が異なり、取引先を見る目線にも違いがあるため同じ事業計画書を出してはいけない、という話をしました。

VCには強気な事業計画を提出し大きく成長できることを、銀行には堅実な事業計画を提出し確実に返済できることをアピールするのが基本です。

しかし、(実態が伴っていれば)銀行に強気の事業計画を提出したにも関わらず、審査に通ることがあります。そこまでは問題ありません。

問題は、次の融資審査のとき。次の融資を受ける際に前回の強気の事業計画と実績の間に差が生まれやすくなり、その結果、融資を断られる可能性が高くなってしまうのです。

これを「前回事業計画書との乖離問題」と呼んでいます。

このnoteは若林によるPodcast「INQ若林のDebt&Alive」をテキストコンテンツとして再編集したものです。Podcastでは、起業家の方や起業準備中の方に向けて、デットファイナンスに関するTipsやノウハウを毎回5分程度にまとめてお送りしていますので、ぜひフォローしてください。

前回の事業計画と実績に大きな差があると次の融資を受けづらい

冒頭でもお伝えしたように、銀行に対して、VCに出すような強気の事業計画を提出したにも関わらず、審査に通るケースがあります。融資を受けられること自体は、喜ばしいことだといえるでしょう。

しかし、次に融資を申し込む際に、このときの事業計画が問題になることがあります。

強気の事業計画で審査が通り、銀行から融資を受けられたとしましょう。そして、間を空けて次の融資を申し込むとします。

このとき、前回の融資で使用した事業計画書が審査材料の1つとして使われます。
申し込む銀行が前と同じであれば当然、前回の事業計画書は残っています。違う銀行の場合には、前回の融資審査で使用した事業計画書を提出することになるでしょう。

審査では事業計画書と試算表などを照らし合わせて、計画と実績にどれくらいの開きがあるかをチェックされます。

そして大きな差があった場合は「前回事業計画書との乖離が大きい」という理由で、融資を断られるケースが出てきます。

実績と乖離した理由をロジカルに説明できれば融資を受けられる可能性もある

創業期のスタートアップの場合、PMF(*)していなければ業績の浮き沈みがあって当然です。事業をピボット(方向転換)していることもあるでしょう。

*) プロダクトマーケットフィットの略で、製品が市場に適合している状態

業績に波があったり、方針が変わったりした場合「前回の事業計画と実績の間に乖離がある」と言われても仕方がありません。

創業期のスタートアップとデット・ファイナンス(融資による資金調達)は相性が悪い、といわれる所以はこのようなところにあります。

では、どうしたらいいのか。

前回事業計画との乖離が起きないようにするには、そもそも実現可能性の低い事業計画を出さないことです。

もし既に提出してしまったのであれば、乖離した理由をロジカルに伝えるしかありません。

事業計画を変更するに至った経緯や、計画に対して実績が下振れしてしまった理由などを説明し、行き当たりばったりで経営していたわけではないことを伝えることが重要です。

実際にこのような状況で融資を受けられた例もあります。

その企業は前回事業計画と実績が乖離した理由を、仮説検証やユーザーインタビューの結果などを用いながら丁寧に説明し、エクイティ(株式発行による資金調達)で足元の資金を確保できていることも伝えました。その結果、銀行の担当者の理解を得られ、融資審査に通ったのです。

まとめ

今回は「前回事業計画書との乖離問題」についてお伝えしました。

一般的に銀行に強気の事業計画を提出しても融資を受けられる可能性は低いですが、状況によっては審査に通ることもあります。

しかし次の融資審査を受けようと思ったときに、このときの事業計画がネックになります。

事業計画と実績の間に大きな開きがあると「前回事業計画書との乖離」を理由に、融資審査を断られてしまうケースがあるのです。

このような事態を避けるには、そもそも銀行に対して実現可能性の低い事業計画を出さないこと。

もし出してしまった後であれば、乖離した理由や背景をロジカルに説明して、融資担当者の理解を得られるように努力しましょう。

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