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いくつかのセレナーデ 7 「北へ」

「北へ」

彼女は北へ向かっていた。金曜日の夜、四つ橋筋を。
彼女の家とは反対方向。ボクはついて行った。
彼女は「ついて来ないで」と言いながら、
ボクがたまらなく悲しくなるようなことを言った。
肥後橋の地下鉄の駅の入口まで来た。
「もうこれ以上ついて来ないで」と言って彼女は、
ボクを残して駅へと下りて行った。
梅雨前線が上空を、まさに北へ向かおうとしている頃だった。
ボクはそのまま北へ歩いて大阪駅へ行った。
当時まだ走っていた、北陸本線の夜行の急行列車に乗った。
翌朝、終点からフェリーに乗り継いだ。
さらに北へ、北海道まで行った。

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