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【経済評論家 岸 博幸 氏と語る vol.1】中小企業の淘汰の時代と生き残るためのポイント

「これから中小企業の淘汰の時代が始まります」
Wizの代表取締役社長・山崎に、そう語るのは、Wizの顧問に就任した元経済産業省官僚・慶応大学大学院教授【岸 博幸氏】。今回は、株式会社補助金ポータルの代表取締役社長・福井氏も交えて、日本の中小企業の今後について語り合いました。全5回シリーズでお届けします。

場所は、Wizが2月に麻布十番にニューオープンした「Wiz Kitchen」。鹿児島黒毛和牛100%のバーガーやシェフこだわりのタパス、クラフトビールなどを楽しむことができます。

参加者
・株式会社 Wiz 代表取締役社長 山崎 俊
早稲田大学理工学部卒業後、大手通信商社に部長職で入社。最年少で執行役員に就任する。2012年、同社を退社し、「ヒトにフォーカスした仲間を集める企業を作りたい」そんな思いから30歳で独立し株式会社Wizを設立。

・元経済産業省官僚/慶應大学大学院教授 岸 博幸 氏
一橋大学卒業後、通商産業省(現・経済産業省)入省。コロンビア大学経営大学院にてMBAを取得。小泉政権で竹中平蔵大臣の補佐官・政務秘書官を、また菅政権では内閣官房参与を務め、構造改革を立案、実行。現在は、テレビ番組のコメンテーターや講演会などで幅広く活躍している。

・株式会社 補助金ポータル 代表取締役社長 福井 彰次 氏
月間利用者100万人。国内最大級の補助金・助成金のプラットフォーム「補助金ポータル」を運営。分かりづらい補助金・助成金の概要や、申請方法など国と企業を繋ぐというミッションのもと事業を展開しており、会員数も30,000名を超えている。

中小企業は淘汰の時代に突入

山崎:岸さん、漠然とした質問なのですが、日本の中小企業ってこれからどうなるのでしょうか。

:これは答えとしては簡単で、「中小企業の淘汰の時代」が始まります。もともと日本は中小企業の数が非常に多く、特に生産性が低い中小企業などは地方にたくさんあります。外国人労働者や、最低賃金レベルで人を雇用することで維持してきた中小企業は、今や、人口減少によって、日本全国どの産業も人手不足でなかなか人材確保できない状況になっています。

その中で、無理をしてでも賃上げをして、人をちゃんとキープできる企業は生き残りますが、まだ安い賃金で働かせている企業は、これから間違いなく淘汰されます。逆に言えば淘汰が進むことによって、生産性が高いごく一部の中小企業に、数少ない人が集まって、より生産性を上げる、というプロセスに入っていく必要があります。インフレが進み、これからそのプロセスが加速するはずなので、中小企業は生き残りの真剣勝負の時代にようやく入ります。

同じ中小企業でも都市部と地方では印象が違う

山崎:当社も、地方企業と深く関わらせていただいてますが、地方の中小企業ってまだ独特の空気がありますよね?

:そうですね、一口には言えませんが「目立っちゃいけない」という雰囲気がありますよね。村八分にはなりたくない、など独特な価値観や風習が残っている場合があります。
しかし、地方の中小企業は、無理をしてでもきちんと賃金を上げられるか、いかにDXを進めて生産性を上げられるかが勝負になると思います。

成長する中小企業には国の支援がある?

福井:国の制度では、生産性向上と賃上げはセットですよね。

:正直、中小企業政策って、ダメ企業を潰さない、というのをデフレの時代にずっとやってきましたよね。これはすぐには抜本的改善はできないけれど、徐々に変わっていかざるを得なくなるはずです。

福井:中小企業庁は、公言はしていないものの、これ以上どうしようもない会社に対しては支援しない、今後成長できる会社や現在成長している会社に対してお金を投資していくという形で、明確に動いていますよね。

山崎:その当たり前のことを、なぜ今までやってこなかったんですかね?

:一つは選挙で票をとるためですね。特に地方の中小企業に対して手厚く支援を行い、潰れないようにしてきたという背景があります。もう一つは、デフレ30年の間は、デフレという異常な状況の中で雇用不安が起きないように中小企業を潰さないようにする、という流れもありました。結果として非効率的な中小企業ばっかりになっちゃいましたね。

山崎:日本全体の雇用の70%は中小企業って言いますもんね。

:そうです。企業の数でいうと99%が中小企業です。この状況をずっと続けてきた結果、日本の地方は貧乏になってしまったんですよ。この30年間で日本全体が非常に貧しくなり、今、想像以上に厳しい状況です。中でも地方は特にひどく、地方の中小企業で働いている人たちの年収が300万円を超えないケースも多くあります。この状況で地方経済が良くなるはずがないです。

山崎:では、地方経済を良くしていくには、どうしたらいいのでしょうか?

:まずは、人材の流動化をはかることが重要です。

なぜ人材の流動化が必要なのか

福井:人手不足が起こるということが確実に見えている中で、政府が人材流動を推進しているのはどういう意図があるのでしょうか?

:端的に言えば、人材を流動化させることで、生産性が高く、賃上げも頑張る企業に人を集めようとしているんですね。それは、生産性の低い企業は潰れろと言っているようなもので、政府としては大っぴらには言えないから、リスキリングや流動化などという真綿で包んだような表現をしています。
つまり、DXを継続して行い、賃上げも頑張って、当然生産性も上げる企業がどれだけ増えるか、が重要になってきます。

山崎:人材の流動化による、中小企業の淘汰の時代がきているということですね。

:いま、地方は最低賃金レベルしか上がってないから、例えばIKEAやコストコが地方に来ると大体時給1,500円ぐらい出してくるので、その地域の雇用をとられてしまうんですよ。この金額は地元の中小企業には払えませんので、IKEAやコストコのようなところに人が殺到してしまい、地方でサービス業を行う企業からは人がいなくなります。

山崎:日本でも、企業が積極的に賃金をあげれば人材の流動性も上がり、国全体の賃金が上がるような気がするんですが、なぜ日本はそうならないのでしょうか。

:特に地方には、抜本的に改革していく企業が少ない、それに尽きます。

福井:国の方針としても中小企業の賃上げに力を入れてる感じではなかったですよね。

:それはありますよね。日本的な雇用方法は終身雇用だと言う人がいますが、それは間違っています。中小企業ではあまり正規雇用や終身雇用が守られてないんですよ。地方の中小企業ほど景気が悪くなると、バンバン解雇します。

いわゆる日本的な終身雇用、新卒一括採用、年功序列で、というのは実は大企業の正規雇用だけです。中小企業の世界は元々そういう首切りを当たり前にやってるにも関わらず、潰れず、生産性も上がらない、ぬるま湯状態が続いてきたなと思いますね。

山崎:今までは最低賃金で雇ったり、外国人人材を活用してコストを安く抑えたりすることで、何とか会社を維持してきたけれども、これからは賃金が高い方に人が流れるため、こうした中小企業は人材採用ができなくなっていく。そういう意味では、中小企業は人がいなくなり、次々に倒産していくということなんですかね。

:そうですね。これから倒産件数は増えるはずです。倒産と聞くとネガティブに聞こえますが、ある意味、経済や働き手にとっては、いいことでもあるんですよね。

山崎:攻めない中小企業は負ける時代になるわけですね。


次回は、“地方企業が生き残るにはどうすれば良いのか”について語り合います。4/26(金)に記事の公開を予定しておりますのでお楽しみに!


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