夢の観光鉄道尾瀬観光線第7回「ガイドスタンション軌道と車両」
いきなり画像から始まるのはこの連載初だろう。
CADを若干カジッテ※いるので立体図面を書いて車両と
ガイドスタンション軌道を図示しようかと考えたが
この記事は「鉄道総研の論文」ではない。
note記事に学術用語や論文形式の説明は不用だ。
自動車工学や鉄道工学の論文を読むために
note記事をザッピングする読者は極めて少数派だ。
鉄道研究のためにnote記事はほとんど無益だ。
小生の酔狂な鉄道構想は富士山で言えば7合目を過ぎて
「8合目は何種類あるのか?」という魔境には
迷いこまない。
小生の記事では7合目のつぎは8合目だ。
7.5合目や本8合目はない。
9合目付近からは酸素が薄くなり・・・
書いている本人の意識が遠のく危険性もあるが
とりあえず車両のイメージを説明する。
登坂線路は傾斜がキツイと車輪が空転する。
箱根登山鉄道ではレールと車両を安定させて
粘着式の通常線路を登っていくが80‰という
最急勾配と半径30mという急曲線区間のため
短い車両と特製の台車を採用している。
以前富士スバルラインを鉄道に置き換える
「富士登山鉄道構想」を批判するダイヤモンドの記事を
取り上げたがその記事で作者は
最急勾配88‰最急曲線27.5mをやり玉にあげているが
箱根登山鉄道は戦前から現在とほぼ同じ方式で
登山電車を運行している。
富士スバルラインの最急勾配や最急曲線は
山梨県の資料より厳しい数値を意図的に採用
しているように見えるが
その数値も山梨県の資料によれば
勾配の緩和など諸策を実施する前提で線路敷設が
実施されると明示されている。
https://www.pref.yamanashi.jp/documents/107234/02_tyukanhoukoku_gijutukadai.pdf
なぜ登坂線路は列車にとって過酷な環境であるのか?
その部分を誤って解釈する読者はいないだろう
こんな記事を読む読者は
①鉄道に関心がある
②車両や線路・道路などの技術に関心がある
③旅や紀行などに興味がある
④海尾守が不憫であり慈愛の精神で記事を眺めている
以上の4類型に類別される「奇特な方々」である。
殊更細かい説明をせずに理解できる読者が大半であることは
重々承知しているが・・・念のため
補足的に説明する。
登山鉄道最大の問題点は下り列車である。
急坂を登る工夫は19世紀後半から様々な実験や
実証を経て・・・
アプト式や歯車式などの技術を編み出した。
峠の釜めしで有名な
「横川~軽井沢間」※も当初はアプト式を採用し
後年粘着式の補助機関車対応へ改められた。
登る方の技術革新が進んでも問題は
下る方法である。
登山事故の発生は下山時のほうが多いといわれる。
登山電車も「安全なスピードで下山することが重要となる」
アプト式にせよ粘着式にしても
下り坂を安全に降りる技術が重要となる。
尾瀬観光線をあえてDMV採用として急勾配区間も含め
道路施設を基本的に流用し路面に線路を敷設しない方針である。
線路を敷設しないのは登りの空転対策ではなく
下り運行時の安全確保を目指すためだ。
車両重量が大きい「電気駆動ハイブリット方式のDMV」
最大の欠点は下り坂での安全確保である。
路面やタイヤの摩耗は避けられないが・・・
それでも安全運行を確立できるのであれば
経費の発生はやむを得ない。
では現在の登坂道路は
「ゴムタイヤ方式の車両を採用すれば安全運行が可能になる」
と断言できないことが小生最大の懸念事項だ。
ガイドスタンション軌道方式とは
「道路の谷側にガードレール状の安全柵を設置し
その安全柵を軌道化して抑速と運転補助を実施する」
というアイデアだ。
2カ月以上資料を探したが、バスや鉄道運行で
同様の軌道を活用した事例は
世界のどこでも実証させていない。
あえて類例を探せば「斜行エレベーター」などである。
その設備を現実に利用し毎日安全に
「利用者を大量輸送している乗り物」
が山梨県に存在する。
「コモアブリッジ」の斜行エレベーターである。
2024年5月某日
山頂駅付近のスーパー脇からエレベーターに乗車し
四方津駅までの往復路線を見学した。
このコモアブリッジという「乗り物」はJR中央線国電区間の山梨県上野原市の四方津駅と丘の上に広がる「コモアしおつ」というニュータウンを結ぶ
「無料の施設」である。
2基の斜行エレベーターと中央のエスカレータで構成される交通機関である。
無料で利用できる交通機関としては日本最長であろう。
高低差は100メートルで
斜行エレベーターは209mの距離である。
所要時間はおよそ6分だが
「40度近い勾配を登る車両」と考えれば
実用的で安全な乗り物である。
この乗り物は写真の通り中央のレールに乗った
「箱」がシャフト内におさまり
ケーブルで上下する構造だ。
この施設を見学して
安全に車両を坂道から降ろす方法として
ガイドレールの中をゴムタイヤの車両が
坂道を下る構造が頭に浮かんだ。
坂道で箱を降ろせば交通機関である。
それがバス型で・・・坂道を下り終わったら
道路を自走し・・・鉄道線路まで走ったら
列車として線路を走る。
足が不自由で「はるかな尾瀬は夢のままで生涯を終える」
と「とあるラジオ番組で読まれたメール」の
内容を「実現できなければ・・・」
「リニア新幹線だ!」
「世界のトヨタだ!」
と天空へこぶしを振り上げても・・・
それほど困難ではない国内旅行のハズが・・・
夢がかなわない少数の人々が存在する現実・・・
その小生のたわいない悩みを解消したいというのが
「尾瀬観光線」を構想した理由である。
しかし
「金をかけず・・・ボランティアに背負ってもらって
尾瀬に到達しても・・・」
足が不自由で尾瀬をあきらめた方がうれしいのだろうか?
それなら一層のこと
「沼田駅から直接鳩待峠を経てシャトルバス区間も走行できる車両があれば」
乗り降りの補助だけさせてもらえれば
「尾瀬に自分の力でたどりつけるのではないか」
そう思ったことがこの鉄道構想の発端である。
過剰な手出しやたくさんのボランティアに援助されて
「体が不自由でたくさんの機会をあきらめてしまった方」
の心がすくわれるとは思わない。
鉄道駅のバリアフリー化は一向に進まない。
「鉄道会社が単体で自分のもうけを使って施設を整備しないさい」
というスタンスだから・・・
投資できる資金にはおのずと限界がある。
弱者救済だ保護だと声高に叫ぶ方は現実に存在するが
一方の弱者と呼ばれる方々が「無限の援助」を
求めているのか?
そんな意識でボランティア精神を語るのは
「自分の力でできることを増やしたい」と願っている
方々を自分勝手な「慈愛の精神」が
「余計な手出し」まで認めるのと同じことではないか?
「介助や介護」は必要であるが
それは「なるべくお世話にならずに生活をつづけたい」
と願う人々の心情を理解してこその話である。
「尾瀬が見たいがかなわない」という方は
わがままだとか環境保護を判っていないと
批判される方もいる。
日本は自由な国であり・・・法律や道徳に触れない範囲なら
自由な発言が許され・・・その場所に「noteは存在する」
ただし手助けをなるべく少なくして・・・
「個人の意思を尊重しながら尾瀬を見物できるなら」
これ以上価値のある観光鉄道は無いと思う。
そうとは言え「無制限にお金を使い」
できもしない空想で多くの方々に不快な思いをさせるのは
小生の記事を毎回楽しみにしてくれている
ごく少数の読者の方へ失礼である。
現在の技術と資金的実現可能なプランを策定し
「情熱家の群馬県知事へメールしても門前払いされない」
それを主眼として今回まで「尾瀬観光線」を夢想し
現地や近隣観光地・参考となる場所を取材し見聞してきたという次第である。
そして最後にぶちあったった壁が安全性である。
ある程度資本を投下し技術力のある会社
「トヨタ・スバル・JR東日本・JR東海」などに
支援を得られたら実現は不可能でないという結論へ
小生は到達したと思っていた。
だがどうしても
「山岳道路を安全に下る」その技術に最適解が
見いだせなかった。
ツアーバス事故など・・・
運転手の技量や車両の不備で
貴い命が危険にされされてまで・・・
実現すべき鉄道ではないのが
「尾瀬観光線」だからだ。
ディズニーリゾートと同じで
そこで働く人々の輸送以外で実需はほとんどないからだ。
そうであれば「安全運行が果たせないなら計画は廃案とすべきである」
そんな時偶然「コモア四方津」の
斜行エレベーターの報道を見て
その技術を鉄道に生かせたならと思った次第だ。
詳細は次回に譲るが
安全運行のアイデアは
急傾斜区間の谷側にガードレールを強化した
スタンションを立てそこへレールを敷設して
レールを横抱きにして坂道を下る車両である。
接触抵抗を考えればゴムタイヤ方式の方が安全性が高く
ガイドレールがあれば運転者の負担が減り
乗客の安全が確保できるという算段である。