アルコール依存症啓発講演会に行ってきました
元TOKIOの山口達也さんが特別講演者として登壇したアルコール依存症啓発講演会に行ってきた。医師の簡単なアルコール依存症についての講義の後、山口さんの講演があった。
聞き取りやすくて、気さくな言葉遣いで、引き込まれるような話し方。
さすが元芸能人。素晴らしかった。1分足らずで観客の心を見事に搔っ攫う鮮やかさ。彼がアルコールで問題を起こすまでの芸能界で培ってきた努力、それはきっと凄まじいものだったのだろう。
彼の言葉は多くの人の心に届く。そして響く。
自分の過ちを認めることは簡単なことではない。
人間だれしも、例えそれが些細なミスでも、自分を正当化して、他人や物のせいにして、記憶を改ざんして、なかったことにしたいところってある。
だけど山口さんは自分を厳しく批判しながら「こんな間違いを犯した」と包み隠さず体験談を語り、同じ悩みを抱える人をこれ以上増やさないように、同じ境遇の人を励ますように、ご自身の経験を伝え続けている。
生半可な気持ちではできない。
言い訳をせず、詳らかに、自分の過去の過ちとそのせいで傷つけた人、失ったもの、そして学んだことを淡々と語る。彼はこの活動を始めて約1年が経過したと話していた。苦しい作業だと思う。自分をかっこよく見せるのが仕事みたいな芸能人として生きてきて、今は自分の惨めな体験を語るのだから、それは私には想像できない葛藤があったと思う。
それを乗り越えて、今の自分が社会に対して何ができるのか、その役割を自覚して、実行に移しているその姿勢が素晴らしいと思った。
ちなみに芸能界を引退しても、罪を償っても、批判は未だに受け続けているらしい。
アルコール依存症は治らない。一生ずっと治らない。
彼は「3年半お酒を飲んでいない」、と表現した。
「お酒、やめたんだ」ではない。
「お酒をやめ続けている状態」なのだと。彼はそれを「意志の力」と表現した。意志を強く持って、一日一日、断酒し続けている。
もし彼が次にお酒を1滴でも飲んだら、「きっと死ぬまで飲み続けます。誰かを殺します」とセンセーショナルな表現をした。それほどの覚悟なのだと本気で言っているのを感じた。アルコール依存症患者の平均寿命は50代で、彼は今52歳。肝臓がやられて、がんになって、という「優しい死に方」ではなく、再飲酒した自助グループの仲間たちは脳卒中や心不全で亡くなっているのだと。アルコールによる弊害は全身に強く出て死亡するリスクは私たちの想像以上だそう。再飲酒した罪悪感で自ら命を絶った仲間もいる、と。彼は再飲酒してしまったらまた飲酒運転して、次は誰かを巻き込み命を奪うかもしれないのだと、本気で恐れているようだった。
私はメニエール病になってから、めまいが起きるのでお酒は一切飲まないようになったけれど、それでも明日は我が身、だと思った。
コンビニ、自販機、スーパー、ドラッグストア、どこでも簡単に安く大量のアルコールが手に入るこの社会。何かのきっかけで自暴自棄になって、お酒を飲むかもしれない。入口はどこにでもある。怖いと思う。テレビやネットにはお酒の情報が溢れているし、バラエティでもお酒を飲みながら収録しているものすらある。あまりにも身近にある毒。
アルコール依存症は、悲惨の一言に尽きる。
本人も周りの人もみんな不幸になる。
自らの経験を語ってくださった山口達也さんに心から感謝します。
ありがとうございました。
社会の人たちのアルコール依存症に対する理解が少しでも深まりますように。
そして、アルコール依存症と戦う患者さんたち、それを支えるご家族の方たちが少しでも心安らかに過ごせますように。
応援しています。
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