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あなたから春の嵐と忘れかけていたものが届いた日

待ちに待った金曜日
終礼後、急いで着替えて東京駅を目指す。

先週、5年ぶりに元彼に満たなかった先輩から何の前触れもなくきたメッセージ。

少し驚いて、少しイヤ気持ちでメッセージを明けてみた。

あなたの大事な気持ちを壊してしまったこと、
何やってんだろって何度も悔やんでみたって、
焦りも過ちも訂正できなかったことも、もう一度会いたい理由にできないこともわかってる。

自分の気持ちを都合よく誤魔化してみても、あなたのあの頃の気持ちには向き合えてなかったことも今わかってる。

もし、あなたの声がもう一度聞けるなら、あなたが今も大切にしてることが今刻み始めているボクの時間のどこかにあって、それはあなたに受け取れないものであったとしても、このメッセージを読んでくれたことがわからなくても、あなたを大切にしたかったボクが間違いなくあのころ存在してた、それだけでいいんだって分かったんだ。
ありがとうってことだけ最後に言いたかった。

なにを言ってるんだろう、今さら。
また、会いたくなって私の体がほしいだけだと思った。

一日明けて、落ち着きを取り戻して。
ありきたりの返信を返してあげた。

(もう、あなたのことなんか何とも思ってないの)

そう伝わる様に。

なのに3日経ち4日経過しても
何度もアイツのメッセージを読み返していた。

ー・ー

週末の下り新幹線で30分の時間が待ち切れなかった。

いつもの駅の西口改札で手を大きく挙げて合図してくれた時は、淋しくて、嬉しくて、彼の笑顔目ざしていつも走っていた。

「会いたかった」

帰宅帰りで混み合う中でも、あなたはいつも私の腕を優しく引き寄せて胸を重ねてくれた。
こんなにも幸せな時間がまた今日もやってきたんだって、毎週のことなのに新鮮な気持ちだった。
先週も行ったホテルに駆け込む様に手を組んで、また幸せな時間に吸い込まれていく。

すぐに部屋が空き、会いたかった気持ちをいつも以上に認めて欲しかった。
なぜだろ、今日は何度も何度も自分から指を重ね合わせてしまって、熱くなっていた私の肌を彷徨うあなたのすべてを受け止めている。

あなたの愛をずっと感じていたい。
今夜ずっと私の心を満たしてほしい。

あなたの愛に全ての現実を忘れていたい、そう思っていたはずなの。
なのに、何度も読み返していた言葉が、やさしい声になって私の奥に残っていた・・・

私の中で揺れていた気持ちが小さくヒビ割れた気がしたの。
5年ぶりのアイツのせいで、私の気持ちにいとも簡単にヒビがはいって。
目立たないくらいだけど、私にはちゃんと見えるの、あなたにまだ伝えられないけど。

こんなに愛を分け合っていたはずなのに。
こんな素敵な時間が愛おしくて、週末だけ許される愛を2年も守ってきて、互いにこのままの関係でも、確かめ合って理解し合って守っていけると信じていたのに。

いつも淋しい気持ちを埋めていただけだったのかも、そう思いたくない。
もしかしたらずっと人のものかもしれない。

先週、忘れていた時を越えて、私の扉をノックする人がきたの。
もしかしたら人違いかもしれない。
でも私の名前を呼ぶ知っている人が、春の嵐の様にやってきたの。

呼んでも受け取ってもらえないメッセージを届けに来たんだって。
不在なら再配達できなくても、差出人返却になるかもしれないけど、それでもいいんだってそう言って優しく微笑んでいたの。
私の知っている人なのに、私の知らない魅力を持ってきて。

だから、誰の忘れものだったのかなって確かめてみたくなって。
自信ないけど、未来の不安は感じない気がするから。

だから、今夜は愛し合っていても、いまの私と、しまい込んでいた私をどちらも私の両手で包んでみたら、いまはまだ言えないけれど、
最後の週末になるかもしれない、そう言い出しかねないくらいなの。

春の菜の花に舞うモンシロチョウの様に、
吹き始めた風に揺られながら、小さく咲き出した微かな匂いに引き寄せられて、何度も何度も小さく羽を動かして、春の嵐で運ばれてきたものを確かめたくなってきたの。
どうしよう・・・
私の知らない懐かしくて嬉しい気持ちがやってきたの。
もう奪い合う様な日々を過ごしたくないのかも。

重ねていた指を解いて、
忘れてただけなのかな?
そう迷う私が、頭の中で何度も問いかけてきて、「明日になったら歩き出す勇気が必要になったの?」て聞いている。

そう、今夜まだわからないかも知れないけど、
明日にはそんな私に答えられる気がするの。
ひび割れた心に目を止めながら、今一緒にいる
私に、あの頃もう少し一緒にいたかった私が
「うん、きっとそうかも」っていってる気がする。

何が真実か、見極める勇気が今必要なの。


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