実話ドキュメンタリー「となりの教祖さん」第十六話

進は立場上、普段から誰よりも早く出勤していた
それは意外ではあるが、褒められるものであろう
ある日、その出勤を密かに待ち伏せする者がいた
その者とは、なんと温厚な山崎であった
「この野郎!」
山崎は、いつも通り出勤してきた進に、後ろからヘッドロックをかけた
進の太短い足に履かれた黒靴が、廊下を引き摺っていた
「ハアハア、どないしたんや、山崎君?」
「どないもこないもあるかい!
なんで俺を寸志グループに入れへんねん?!」
山崎は絶叫していた
「わかったよ、山崎君もグループに入ったらええよ
でも、山崎君にヘッドロックされて、ショックやわ」
進がうつむいて言った
「いや、もうヘッドロックなんかしませんよ!
グループに入れるなら、それでいいんですわ
加藤部長、今後ともよろしくお願いします」
事務所の外で、何の変哲もなく、雀がチュンチュン、カラスがカアカア鳴いていた
進は窓外を見ながら、いつものセリフを口にした
「ええことないわ〜
ええことないわ〜」

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