実話ドキュメンタリー「となりの教祖さん」第十七話

山崎に引き摺られてからしばらくして、進にある人から電話があった
なんと二十数年前に別れた先妻との間にできた、長女からであった
進は離婚後、先妻やその子供と会ったことは全くなかった
長女は今や、二十代前半になっていることだろう
しかし、今さら何の用なのか?
という思いが先に立つ
進は長女からの電話を嬉しいというよりも、訝しく感じた
「お父さん、私と会ってくれへんかな?」
と彼女は言った
進はろくに世話もしていない子供からそう呼ばれ、恥ずかしく思った
そして彼は返事に窮しながら、なんとか答えた
「うーん、今更俺は父親とも言えんし、俺には今の家族もある
悪いけど、会うのはやめとこ」
長女はそう言われても、会うことを懇願したが、、進は断った

進が長女と会うのを断ったのは、今更会うことのバツの悪さや羞恥心以上に、金銭面の相談をされるのではないか、という懸念からであった
だが実際、長女がどういう理由で進に会いたかったのか、わからない
もしかすると、自分のアイデンティティーを確認したかったのかもしれない
もしそうならば、とても切ない話である
どんな理由であったにせよ、進は娘と会うべきではなかったのか?
そう思えてならない

※次回、最終話です

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