「大きくなんなよ」〜子熊と爺ちゃんの物話②
駆除に来ていた彼らは、翌朝、一匹の子熊を連れて帰って行った。
爺ちゃんにお礼を言って。
彼らを見送り、家に入った爺ちゃんは
驚いた。
昔ながらの低い丸いテーブルの上に置いた
朝ご飯を、黒い犬が食べていた。
よほどお腹が空いていたのか
爺ちゃんにも気づかずに食べ続けていた。
そして
爺ちゃんは、それが犬ではないと気づいた。
「子熊だ」
昨日、爺ちゃんの軽トラックの下で
眠ってしまった子熊は
いい匂いのする、この場所に来たのだ。
爺ちゃんは、黙って
子熊を見ていた。
8年前、婆ちゃんが天国へ行ってから
ずーっと1人
二人は、子どもが欲しかったが、なかなかできなかった。
それでも、山の奥で二人、畑を作り、魚を釣り、仲良く暮らしていた。
夢中で食べる子熊を眺めていたら
お腹がいっぱいになったのか
テーブルから、もそもそ降りてきた。
そして、爺ちゃんに、ゆっくり
近づくと、愛らしい丸い目で見上げた。
そして安心したのか
爺ちゃんの足元で
すやすや眠ってしまった。
しばらくすると寝息をたてはじめた。
静かに
静かに
風が、木の葉をゆらしている。
つづく
アレルギーっ子が主人公の絵本を出版し、それを全国の園児や低学年のお友達に読み聞かせをしたいという夢があります。頂いたサポートは、それに使わせて頂きたいと思います。よろしくお願いします。