『リテイク論』の前に③
3
「距離を置きたい」
としほから話があった。働き詰めで疲れ果て、家のことと職場のこととを分けて考えられなくなって辛いのだと、彼女はそう言った。
「職場の時間の流れ方と家の時間の流れ方が違うから、すごくイライラしちゃうの」
それはぼくも感じていた。切り替えられてないなと感じることが多くなっていた。彼女は広告写真のカメラアシスタントをしていて、昼夜問わず働いている。残業が当たり前なので家で過ごす時間は相対的に少なくなり、家に帰ったら寝るだけの日々が続いていた。ぼくはそんなしほ