千葉竜生

ぼくの好きな映画のことを書くことになるでしょう!

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最近の記事

『リテイク論』の前に③

3 「距離を置きたい」 としほから話があった。働き詰めで疲れ果て、家のことと職場のこととを分けて考えられなくなって辛いのだと、彼女はそう言った。 「職場の時間の流れ方と家の時間の流れ方が違うから、すごくイライラしちゃうの」  それはぼくも感じていた。切り替えられてないなと感じることが多くなっていた。彼女は広告写真のカメラアシスタントをしていて、昼夜問わず働いている。残業が当たり前なので家で過ごす時間は相対的に少なくなり、家に帰ったら寝るだけの日々が続いていた。ぼくはそんなしほ

    • 『リテイク論』の前に②

      2 2021年の4月下旬から12中旬まで、約半年間かけて『リテイク』の撮影は行われた。その撮影現場は、今思い返しても独特なものだった。  映画監督の諏訪敦彦は、女優のベアトリス・ダルから「鼻先までその曖昧さを吹きつけてくるような監督だった」✳︎1と言われているが、中野さんもそんな感じだったと思う。ぼくの記憶だと、ユウ役のうららちゃんは同じようなことを言っていた。うららちゃんは演技経験が無い。だから、「リテイクするにしてもどこがどうだめだったかをきちんと指摘してもらわない

      • 『リテイク論』の前に

        1  『リテイク』の予告編を作ることになった。 「あの、中野さん。『リテイク』の予告編作りたいんですけど」 「え!?ほんと!?嬉しい、自分ではわかんなくて、一回作ったんだけど、なんだかわかんなくなっちゃったんだよね」と中野さん。 「あの、じゃあ、ほんと思いつきなんですけど、ぼくがやりたいだけだけど、やらせてもらいます」とぼく。  雨の車内、中野さんの事務所が移転することに決まって、そのお手伝いをしてる最中だった。もともとは、蔵まえギャラリーという酒蔵を再利用したつくりのギャラ

        • 映画の自己言及性について 『リテイク論』までの道のり?

           ぼくは、映画『リテイク』について、「自己言及性」の観点から何か言えないだろうかと考えている。『リテイク』は観てもらえればわかるが、ループものの作品である。だから、主人公は何度もその出来事の中に放り出される。あるいは、自分で選んでもう一度戻っている。  『リテイク』の中では、高校生たちがひと夏の間に映画をつくる、その過程を追っている。もちろんフィクションであるが、言いたいことは、つまり、リテイクは「映画内映画」の構造を持っているということだ。この「映画内映画」という構造自体、

        『リテイク論』の前に③

          千葉室の手記

           まいった。もう映画の上映日が来ちまったじゃあないか。まだ終わってない。まだこの映画はぼくの中では終わってない。そう思い続けて、この映画がクランクアップした2021年12月12日からここまで来ちまいやがった。上映日は9/9(土)の14:30〜だ。ぜひ観てほしいと思いつつ、ぼくの演技には目を瞑り、しかしきちんと批判もしてほしいし、みんなとつくったこの映画をいろんな人に観てほしい、どんなことでもいいから感じてほしい、そう思って止まぬ。ああ、来ちまった。ここまで来た。ここまで来て思

          千葉室の手記