見出し画像

絵巻物と漫画

日本の芸術史講義を受けた時に、これって今でいう漫画なんだな、と思ったものがありました。日本人は、太古から漫画をつくって読んで(観て)楽しんでいた。
それが、平安時代の巻物です。有名なものだと《源氏物語絵巻》がありますが、物語を視覚化する美しい絵と文字が同じ紙上に収まっている。
西洋美術史やアジア美術史では今のところ同様のスタイルの作品を知らないので、きっと日本人独特のイメージ感覚のDNAなのでしょう。

上方の画像のように、雲か霧を象った文様(すやり霞)で場面を仕切る日本画、よくありますよね。あれは時空(場面)を切ったりいらない景色を省略しているのです。今でいうコマ割りですよね。
そして、物語をどのように視覚化しているか、という点でも面白い。
技法としては「吹抜屋台」というそうですが、こんなやり方です。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kasuga_gongen_genki-e,_Takashina_Takakane,_3-1.jpg(2023年12月17日閲覧)

屋根を吹抜けにして、一度に様々なシーンを覗けるようにしているのですね。ひとの頭の中で起こっている映像を描いたら、こんな風な非現実的な絵になった。これこそ、実物ではなくストーリーから発生ベースの漫画の世界観です。といいますか、こんな感覚を延々と紡いでいったら現代の漫画になったのでしょう。

それから、これはインドの宗教芸術作品にもあった技法ですが「異時同図法」。ひとつの素材画面に、同じ登場人物が何度も描かれることでその物語の時間経過を一目で理解させるもの。ちょうど漫画の1ページみたい。

ちなみに、美術館では巻物はダーっと長く広げて展示されておりますが、実際に読んでいたひとびとは、自分の目前に両手で広げて眺めていたので、だいたい60cmくらいずつ巻き取り広げて楽しんでいたそうです。
そういう目で今度美術品を観てみると、なるほど、昔のひとの視界と重ねられるようでロマンチックですね。太古では、1コマ60cm。。。

年末年始の時間に、ここぞとばかりリラックスして漫画を楽しむ方もいらっしゃるでしょう。きっと昔のひとも現代の漫画を観たら、芸術作品だ!と感じるでしょうね。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?