てくにかる・ハイゆにっと!!!

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日蝕

 部屋の背面のモザイクガラスから薄暮の柔らかい光が全体を映し出し、そこに横たわった立方体の空間が隅ずみまで洗い流された沈痛を激しく感じとめながら、こすれて靴底の薄くなった靴つっかけて玄関をでた。寒さに全身の筋肉が内部に丸め込むように凝縮した。おれは私鉄に向かって歩き始めた。おれは「あの計画」について考え始めていた。もしおれが機関銃をもっていたなら、おれはあまねく全員ぶっ殺してやりたい気分だった。パーカーのポケットに腕をうずめながらポケットにライターと携帯があるのを確認した。お

    • 500文字短編写真小説:Tsuki

      音楽  ジェームズ・エバンズは一通りの研修を終えて、大学付属病院を出た  真冬の夜だ。エバンズのいる附属病院は、大きな通りに沿って建て込まれている。ことに、その通りは悪意に覆われた。そなかでも附属病院の窓から光はこの空間に乱反射した。そしてエバンズはここで、この窓の奥には逞しい医者がいるにちがないと考えた。まさに、窓から放出される光は、これらの医者の隠匿された象徴なのだろう、苦悩ともいうだろう。それは地虫の声となった。それらを大通りの木々が<音>として吸収した。  エバンズ

      • 太宰治のAI小説

        走れメロス "走れメロス!" 幾千年の時を経てなお、この口撻の叫びは私の心の中に生々しく残る。あの日の光景が、今も鮮やかに蘇ってくるのだ。 ギリシャの夏は灼熱に輝き、大地は饐えた獣のように口を開けていた。メロス平原を行く放牧人の群れに、私はただひとり紛れ込んでいた。他にはスパルタ人の老練な戦士モロスとその一人娘ロジーナだけ。この父娘に用事があり、私は無銭勲行を買って出た次第である。 ロジーナは才色兼備と評判の娘だった。母は幼くして亡くなり、今はモロスの元で最後の嗾環を

        • 500文字短編写真小説:Taiyo(NOTEテスト)

          美しいもの  「ことのはじめはこうさ、いや、おれはなんも悪いことはしちゃいないんだ、まあまず聞いてくれよ」と、喫茶店≪ウィーン≫でおれはコオリノルイクンを諭すのだった。  幾重にもなるビルにさえぎられる湿っぽい風を辛うじて受け止めながら夜の道を進む。その姿が彼のそばを過ぎ行く人たち、厚化粧の婆、やんちゃ心に砂埃をかぶった少年、七三分け中年サラリーマンたちの目を見張らせた。楽譜の入ったデザインのひどい白のバックを両腕できつくかかえて屈んでいる、そして千鳥足だ。熱心な作曲に疲労