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 部屋の背面のモザイクガラスから薄暮の柔らかい光が全体を映し出し、そこに横たわった立方体の空間が隅ずみまで洗い流された沈痛を激しく感じとめながら、こすれて靴底の薄くなった靴つっかけて玄関をでた。寒さに全身の筋肉が内部に丸め込むように凝縮した。おれは私鉄に向かって歩き始めた。おれは「あの計画」について考え始めていた。もしおれが機関銃をもっていたなら、おれはあまねく全員ぶっ殺してやりたい気分だった。パーカーのポケットに腕をうずめながらポケットにライターと携帯があるのを確認した。おれは過ぎ去った日々の輪郭に一日いちにちに丹念に光を与えた。おれが住んでいるアパートがある大通りを左にまがった。おれは電線の上から飛び立つ瞬間のような緊張の解放の堺に位置していた。おれはこのような宿痾とでも形容して形を与えたいような状態にあった。寒さに震える前に丸ビルの喫茶店に入った。
 おれは喫茶店でコーヒーを注文し、文芸雑誌を開いた。「山林に遺体」、「トランプ前大統領の大統領選圧勝か?」つまらない、「中国の台湾威嚇」そのあまたの記事のなかでもおれを注視させたのは、「裏金事件『離党』の声集まる」と題されたページにあった絵画的な写真だった。その構図は、国会で答弁するしわくちゃの爺ども。その真ん中に大々的に飾られるのは拳を掲げたおり、そこからのぞかれる指は、おれが想像する詩人の細長い指だった。おれはそれに自身の宿痾を見出した。このまったく隔絶された感覚はおれを快活にさせることを強いた。
 おれは文芸雑誌を放り投げるように卓上に置いた。そして、おもむろに携帯をとりだし、インターネット掲示板に「あの計画」の概要を投稿した。「十七時三十二分に国会議事堂に放火する、さらに爆弾仕掛けた、おれは早く、こういった人たちが死ぬべきだとおもうし、みんなそれを望んでいるんだ」
 強い至福に恍惚となりながらおれはこえにならない声を絶叫しようとした。さて、おれはこれからあの恨めしいものの象徴をおれの住む部屋のようにして、おれはついに鋭い圧縮機ですべからく圧倒してしまうのだ。ぶよぶよした脳髄が咽喉からしつこく見出すのを感じた。


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