いたずら愛好家
わたしはいたずらが大好きだ。
大人になり、アラサーになった今でもいたずらをやるときがある。
つい最近もいたずらをやった。
いい大人が何をやってるんだと思うかもしれないけど、とりあえず聞いてほしい。
わたしの邸宅は、飲食店のすぐ裏手にある。ぴったりと隣接していて、天気の良い日に窓を開けると美味しそうな料理の香りが流れ込んでくる。
行ったことはないけど、看板に日本料理屋と書かれていたと思う。
その料理屋には、定期的に設備点検?の人っぽい、おっちゃんが来る。そのおっちゃんが料理屋の裏に来て、ガス管とかその他もろもろを見て回ると決まって最後に、「おねがいしま~す」と厨房の窓に向かって一声かける。
すると、中から厨房の料理人らしきおっちゃんが出てきて、ひとしきりやりとりをして、設備点検のおっちゃんは帰る。
この設備点検のおっちゃんの「おねがいしま~す」というのが、なんとなく好きでいつも聞き耳を立てている。
実際にみなさんにも聞いてもらえれば、伝わるとは思うのだけれども、あいにく音源を持っていないので、リアルな音声をお聞かせすることができない。
それはさておき、このおっちゃんの一声が好き。腹から明朗に響き、それでいて角がなくまろやかな音。そんな感じだ。
それで、その「おねがいしま~す」を真似してみたくなった。一人で「おねがいしま~す」と発声練習を続けた。妻からは「無駄にクオリティが高い」とのお墨付きをもらうくらいにまで上達をした。
そんなこんなで練習を重ねていると、その日も設備点検のおっちゃんは来た。
いつも通り、点検を終えるとおっちゃんが、「おねがいしま~す」と厨房に声をかけて、厨房からおっちゃんが出てきた。
点検のおっちゃんは帰り、厨房のおっちゃんも中に戻っていった。
「おねがいしま~す」
気づいた時には、わたしは自宅の窓から料理屋に向かって声を出していた。
とっさにカーテンの陰に隠れる私。
数秒後、厨房からおっちゃんが出てきた。
周りを見渡してキョロキョロしている。
「気のせいか?」みたいな感じで、おっちゃんが厨房に戻っていく。
「やってしまった」
瞬間的にそう思った。30歳を過ぎたおっさんがしょうもないいたずらをやってしまった。自分で情けなく思う。でも、どうしても我慢することができずにやってしまった。
思えば幼少期からいたずらが大好きだった。
幼稚園の年長の頃、園の砂場で穴をせっせと掘っていた。
かなり深くまで掘った。多分、大人の膝下くらいまでは掘った。
掘った穴に枝やら紙やらを重ねて、砂で隠して落とし穴を作った。
そしたら、先生が砂場で穴にハマってひっくり返っていたのを遠目に見て、ひとりにやにやしていた。
中学1年生の時、クラスでいじめがあった。ある女子がターゲットにされて、集団で無視されたり、ばい菌扱いされていた。いじめの主犯格の女子がいたんだけれども、その女子の机の中に「次はお前だ」と、筆跡がわからないように定規だけで書いた紙をこっそり入れた。日を替えて、下駄箱に紙を入れたり、鞄に入れたり、椅子の裏に貼ったりした。
私は楽しめたし、いじめも止んだので、Win-Winだったと思う。
大学生の頃は、蜘蛛のイラストを本から切り抜いて、それを立体的に折って、母親のスリッパに忍ばせておいて絶叫させてこともある。
社会人1年目にもやってしまった。職場に小説好きの大先輩がいた。その先輩は、昼休憩の時に読書をする。休憩が終わると、しおりをはさんで机に置いている。わたしは、その小説を定期的に10ページほどそっと戻した。入職後、1週間目でのことだった。
こんな感じで、たくさんのいたずらをやってきた。
なんでいたずらをするんだろう。
理由は自分でもよくわからないけれど、サプライズ的な楽しさがある。
これは、私の一種の才能みたいなもので、瞬間的にいたずらがひらめいてしまう。
すると、そのいたずらをやらずにはいられない。
一応、私は常識人なので、法に抵触するようなことはやらない。
やっても、罪にも問われないような、そして閻魔様に怒られない程度の小さないたずらだけを実行するように心がけている。
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追伸
厨房のおっちゃん、幼稚園の先生、中学の時のいじめっ子、母、職場の先輩ごめんなさい。
この場を借りてお詫び申し上げます🙇♀
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