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風 大久保一久の優しい世界その4「防波堤」

特に行き先も決めないまま旅に出た。今日は朝から雲行きが怪しい。僕は空を見上げた。鈍色の雲が広がり、今にも雨粒が落ちてきそうだった。

港までぶらぶらと歩いていくつもりだったが、雨の中を歩くのもどうかと思った。寒い北風の中で雨に降られる事など想像したくもない。ふと防波堤の前の道沿いに目をやると、バス停があった。

バスで行こう。

僕はバス停に向かって足を早めた。もうすぐバスが来る気配だった。というのもバス停には人が二人、いや三人いたからだった。

夫婦だろうか、年配のカップルが話していた。その先に女性が一人立っていた。

その女性は、ボストンバッグを下げ、コートの襟を立てていた。そのせいで表情はよく分からなかったが、どこか憂いをまとった雰囲気が僕を惹きつけた。

強い風が彼女の髪や襟を煽り、女性の表情を現せてくれた。その表情は今日の空模様のようだった。何かの感情を抑えているようで、何かをきっかけに一気に崩れてしまう、そんな感じだ。

僕は老夫婦の後ろに立ってバスを待つことにした。何とか保ってくれればいいのに。そう思いながら、僕の目は彼女の横顔に引き寄せられたままだった。

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こんな感じで、風のアルバム「海風」の久保やんの「防波堤」を文章化してみました。

防波堤

旅人が偶然出会ったのは、「トパーズ色の街」や「あの娘の素顔」や「おそかれはやかれ」の女性でしょう。

「おそかれはやかれ」の後、彼との別れを決め、全てを忘れるために傷心旅行へと出かけた感じです。その1場面を旅人の僕が目撃し、その僕の視点から女性を描いた曲だと思います。

この旅人の僕は以前にでてきた「トパーズ色の街」や「あの娘の素顔」の(僕)ではありません。あの(僕)は残念ながら何もできなかったと思います。優しそうでしたが、内気な男でしたからね。きっと自分の気持ちも言えないままでしたでしょう。

しかし、この女性、どれだけ魅力的なんでしょう。傷心の雰囲気でも、こうして旅人の男を惹きつけてしまうのですから。こんな女性が北の町のバス停で寒さに堪えながら一人バスを待っていたら、私も気になってしまいますね。

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