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「宗旦傳授聞書」(0)翻刻にあたって

 千利休と言えば侘び茶の大成者として日本人の多くが知っている。しかし、その子孫となると、茶の湯を嗜んでいる方などでなければご存知ないのではなかろうか。
 利休の茶道は現在、千家流茶道として三つの家が受け継ぎ、伝承している。いわゆる「三千家」というもので、表千家、裏千家、武者小路千家である。この三千家が生まれることになったのは、利休の孫に当たる千宗旦に四人の息子がおり、そのうち次男宗守が武者小路千家を、三男宗左が表千家を、四男宗室が裏千家をそれぞれ興したのである。四百年以上にわたって千利休の茶の湯を現代まで伝えてきた上で、孫の宗旦の存在は欠かせないものだった。
 今、私の手元に『宗旦傳授聞書』という古い文書がある。大正10年(1921年)に手書きの文書をガリ版刷りしたものだが、公に出版されたものでなく大日本茶道学会という茶道団体の講習会のテキストとして作られたものらしい。世の中にそれほど多く出回っているものではなく、貴重な資料と思う。著作権は存在しないと思われるので、茶の湯を習っている方や茶道研究者のために少しずつ翻刻していこうと思う。
 何しろ百年以上前の文書なので、現代では使われていない文字もあるが、可能な限り原典に忠実に起こしていくつもりである。どなたかのお役に立てば幸いである。

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