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最初と最後

春一番が吹いた。

我々の世代が春一番と聞いて思い出すのは、おおむねキャンディーズであろう。
わたしの場合、同時に高校入学後の自己紹介の場で、僕はスーちゃんのファンですと自己紹介したMくんのことなどが、3年に一度くらい脳裏に浮かぶ。
あの頃はだいたいクラスをスーちゃん派とランちゃん派が二分していて、ミキちゃん推しの自分は肩身が狭かったものだ。

しかし考えてみれば、あの自己紹介の日、キャンディーズはもう数日前だかに解散してしまっていて、あれは我々にとって彼女らの最後の思い出であったわけだ。


その後、可もなく不可もなくの高校生活を送ったわたしは、最後に東京芸大を受験し、見事に散る事になる。

当時のわたしは受験のストレスで、体重は50kgを切ってガリガリに痩せており、さらに験担ぎで髭を伸ばしっぱなしにしていて、どうみてもやや危ない人であった。
それが試験会場からの帰り道、上野公園に差し掛かると、急に生ぬるい強風が吹いてきて、ほぼ病人体型であった故、よろよろとバランスを崩した。

それでも試験終了後の開放感もあって、なんとも心地よかったのを覚えている。

あれもまた春一番であった。

わたしの高校生活は春一番に始まり、春一番に終わったのである。

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