見出し画像

40代膵臓がんサバイバーです [8]

〜前回のあらすじ〜
ICUから一般病棟へ。お見舞いにきてくれた家族から、12時間の大手術だったと聞き、先生方の技術、自分の体力と家族の想いに感謝する。
体は管だらけで、体を動かそうにもずっしりと重く、思うように動けない。
トイレに行くにも数分かかる。明日からはいよいよリハビリ。


一般病棟へ移った翌日からリハビリ

12時間て、長いですよね?1日の単位、24時間の半分です。それだけの闘いですよ。えぇ。それなのに、それなのに、それなのに…!!

「一般病棟へ移って翌日にリハビリって、どんだけスパルタなんだっ?!」

と、思わず叫びたくなる通達を前日に受け、相変わらず目が爛々として、眠れぬ地獄の時間を過ごし、やっと朝方うとうと〜…と思ったら、6時の検温の時間。むしろ徹夜よりすごい体力使ってるんじゃないかと思う始末。
7時からは若い先生達の回診、優雅なモーニングは点滴で代用、ボスの回診、、、と、つつがなく終了。

うぐぐ…いよいよ?と待ち構えてましたが、待てど暮らせど、リハビリ担当の先生は現れず…もしやこれは?と思い、一日中黙っていました(笑)。
しかし、夕方にはバレて、事情聴取。どうやら先生が手配忘れていたそうです。と、言うわけで、いよいよ翌日から容赦なくリハビリ。

リハビリの担当は若くて明るい先生で、楽しくおしゃべりしながらのウオーキングでした。ウオーキングと言っても、病院内の長い廊下を目標の場所まで行って帰ってくるというものです。一ヶ月ほどの入院中、2〜3週間はお世話になっていたと思います。

体調がすぐれないときはスキップできますし、日中はリハビリだけでなく検査もあります。先生とのスケジュールが合わない時は自主練になりました。自分は検査から帰ってくるだけでぐったりすることが多くて、どちらかというとお休みがちでした。


2週間風呂無し

初めの一週間がやっと過ぎた頃、急に頭のモヤが晴れてきて、なんとなく看護師さん達の顔がはっきり認識できるようになってきました。熱も下がってきたようでした。何かしら受け答えをしていたようなのですが、移動してきた直後から喋っていたであろう看護師さんのことは全然認識できていなかったのがわかってきて、なかなかショックでした。社会人の習慣でよく答えるフレーズを、ただ、口が動いて会話していたみたいです。

家族の話によるとこの頃の外見は、目の黄疸がかなり分かったとのことでしたが、自分では全然気がついていませんでした。そして、身だしなみは、相当どうでも良くなって、鼻毛も眉毛もボーボーでした(笑)。ただ、回診の前には簡単に顔を洗う程度の身だしなみはしていました。

お風呂に入れないので体を拭いてもらったり、途中から自分で拭いていましたが、頭はベトベト。天然の油で、まるで文豪のようなスタイリッシュな髪型。意外と文豪って、ああいう髪型を好んでしていたんじゃなくて、単に不潔の極みでああ言う髪型なんだな…と、妙に納得していました。

冷蔵庫の罠

そして、このやる気と知力の低さが招いたエピソードが冷蔵庫です。

水以外の飲み物が解禁になって、スポーツドリンクなどを冷蔵庫で冷やしていました。当然体は熱っぽいので、冷たい飲み物は美味しいのです。

ところが、お腹は急激な冷えに全然追いついていないので、すぐお腹を下します。初めは全然気がついていなくて、術後なのでこういうものかと思っていました。が、途中で気付き、キンキンに冷えた飲み物をいきなり飲むのをやめたら、トイレの回数が減りました。今から思うと、体の感覚が鈍り、頭も全く回っていないのが良くわかります。


いよいよ洗髪!しかし事件が。

そして、いよいよ洗髪できるタイミングがやってきました!念願のシャワー!頭髪のみで、全身は浴びれませんが、こんなに楽しみだったことはありません。よく年配の方々が『久々のお風呂が嬉しい』と言うのは、まさにこう言うことなんだ!と心の底から思いました。

夕方、予約の時間になって看護師さんとシャワールームへ。すると近くの部屋から、別の患者さんが出てきて、

「あれ、今からシャワーへ行くの?!午前中に予約入れてたんだけど、お見舞いのお客さんがさっきまで来てて、今から浴びたいんだけど」

「予約は入れてあるので、きちんと予約を確認してください」と、看護師さんが答えると、

「え?なに?頭洗うだけでしょ?だったらいいじゃない。自分なんかベッドの上で自分で洗髪しましたよ」

と、一方的な自分都合の主張をされて、相当頭にきました。

自分は麻酔の管が首に刺さっているので、首周りは相当気をつけなければいけないのです。だから看護師さんが付き添いで洗髪なのです。
本当なら空気なんか読まずに怒鳴ってやってもいいくらい(!)ですが、付き添ってくれている看護師さんは新人さんでした。一生懸命やってくれているのが分かっていたので、ぐっと我慢していました。多分相手の方も、新人さんと分かっていてわがままを言ってるんだと思うし、当の自分も相手の方からしたら子供くらいの年齢なので、そういう態度を取っても構わないと思っているのでしょう。


そして、こういうくだりを何回か繰り返したあげく、とうとう引き下がりました。結果として、予約していたシャワー室が別(自分は特殊な洗面台があるシャワー室)だったので、事なきを得ることができました。
看護師さんの丁寧な洗髪のおかげで、本当にリフレッシュできました。


入院されてる皆さん、それぞれに辛いこと、大変なこと、あると思います。
患者さんて、楽しみが限られています。だから、普段だったら「これくらいいいんじゃない?」と思うところが譲れなくなっちゃうんだと思います。それは自分も然りなのです。

相手の方も、何か他にも事情があって、誤解があったのかも知れません。
ただ自分は、思いやりのない態度をいきなりぶつけるような患者にはなりたくないものだ、と思ったのでした。


つづく



この記事が参加している募集

多様性を考える

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?