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夏の残り香

四季の中でも、夏は特殊な季節だと感じる。
「残り香」がある。
なんのこっちゃ?と思われるかもしれないが、私も正直うまく説明できない。

誰かがその空間を去った後に、
その人の香水やシャンプー、あるいは特有の体臭?(くさいって意味じゃないよ)の匂いが残ることがある。
夏もそんな感じで、散々暑さに苦しめられてうんざりしていたのに、いつの間にか涼しい風が吹き始めると共にいなくなっている。

「あれ、いつ帰ったの?」と戸惑うと共に、夏の残した香りに気づく。
青い空と白い雲のコントラスト、アスファルトから上がってくる熱気、室内に入った時の冷房の冷たさ、どこからともなく漂う蚊取り線香の香。
当たり前すぎて気づかなかったそれらの要素こそ、「夏の香り」だったということに気づく。

個人的に夏は命懸けで生きているので、夏らしい情緒を楽しむ余裕は夏のあいだはない。
秋の気配を感じた時に初めて、その残り香が恋しくなる。
抱きしめられている時は暑苦しくて悲鳴をあげるのに、いざ離れるとその温もりが恋しいなんて、まったく困ったものだ。

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