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シングルかあさん〜子宮頚がん検診・一年後の結果⑥


"結果ですが…"

若い男性医師は、かあさんの電子カルテを熱心に見ながら、

…(しばらく沈黙)…


"異常なしです"
"自然治癒したようです"

若い男性医師からようやく笑みがこぼれ、かあさんもつられて安堵…
"自然治癒"とは、CIN1病変が体内から自然に流れ出ること。経過観察では、およそ半数がこれにあたる。

「もう前ガン病変は、わたしの体からいなくなったんですよね?」

CIN1軽度異形成が見つかって、はや一年。
病変の原因となるHPVヒトパピローマ検査でも陰性だったので、すぐに手術をしたり、命に関わる危険性はなかった。

ただ、仕事中も、食事中も、寝る前でも、ふとしたときに病変のことを思い出す。

銀行へいくと、「資産形成」の文字が、「軽度異形成」に見えることもあった。
意識していなくても頭のすみにはいつも病変への心配があった。

"今回は治癒しましたが、リスクはあるので、あと一年経過観察をしましょう"

男性医師はそう言って、一年後の再診察をすすめた。かあさんは来年のカレンダーをみながら予約を入れ、すっきりとした気持ちで病院を後にした。

CIN2へ進行していなくて良かった…


あと一年は経過観察ではあるけど、いつも頭のすみにへばりついていた"病変"の文字はだいぶ薄らいだ。

ここでようやく、高齢の両親へ報告。
結果がでるまでは余計な心配はかけたくない。かあさん自身も不安を口にしたら、本当に悪い方へ転がっていきそうで、なるべく考えないようにしていた。

こんなとき、パートナーがいたら不安を共有し、今後のことも一緒に考えていけたのだろう…お金や生活への不安も感じなかっただろう…

いや、かあさんはかあさん自身で人生を選択し歩んでいく、と決めたんだ。
かあさん自身のために、坊ちゃんとの生活のためにこれからも働く。
まだ、死ねない。

シングルかあさんはからだが資本だ。


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