『思い出のマーニー』は『得られる物語』だった

コロナの状況がさらに悪化している日本ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
私は仕事開始がまた1カ月以上延期になり、4カ月だと思っていたニート生活が5カ月になってしまうことが決定したところです。

・コロナに関する情報は自分で取捨選択すること(情報が溢れていて、全部見ていたら疲れちゃうから)、
・こまめに友人と連絡をとること(誰かオンライン飲み会しましょう)
などが、おうち生活のストレス軽減につながるそうです。
みんなでちょっとでも楽な気持ちで生きていきましょうね。



先週、金曜ロードショーで「思い出のマーニー」を観ました。いたく感動しました。
どうして放送から約1週間、感想を書けなかったのかというと、
生活リズムがめちゃくちゃバグってしまっていたからです。ちなみに今日は朝八時に起きて健康的に過ごせました。

実は大学の英文学の授業で、「思い出のマーニー」の原作を読んだことがあります。映画もところどころですが観ました。
とはいえ初めて観るシーンも多く、特に結末は視覚的にぐっときてしまったので、新しい発見でした。



ここから先はネタバレを含みますので、まだ観てない方は読まないほうが良いです。




人は、自分に向けられたやさしさの全てに気づくことはできない


本映画の主人公の杏奈という女の子は、
①育った環境(早くに両親を亡くし、育ててくれていた祖母まで亡くなってしまったため引き取られている。育ての親とのあいだに壁がある)
②人とうまくコミュニケーションがとれない(輪に入れない、誘われても拒絶してしまう)
③ストレスが体に出てしまう(ぜんそく?)

という、なんともかわいそうな女の子です。

しかし実際のところ、物語中に、杏奈を直接的に苦しめている人というのはいなくて、むしろ手を差し伸べようとするひとが何人もいます。
それでも杏奈の傷が癒えることはありません。


すごくわかるなあと思ってしまいました。
孤立しているところはキツすぎるくらい自分と重なってしまったのですが
自分が悩んでいるとき、誰に何を言われても心が晴れなかったり、その状態が続くことが苦しかったり・・・

もちろんフィクションだし、この物語の主人公は杏奈だけど、私の話でもあると思ったし、生きてる全ての人に何かしら当てはまってしまうであろう物語でした。



「好き」以上の感情で突き動かされることない


そんなかわいそうな杏奈は、「マーニー」というたった一人の女の子との出会いだけで、グングン前に進んでいくことになります。

大学の授業でこの映画を観たときには、教授の専門が「女性学」だったこともあって、「思い出のマーニーは同性愛を取り扱っているか否か」という論点でした。

それが恋愛感情だったかどうかは別として(わたし個人的には、恋愛かそうじゃないかはどうでもいいと思ってますが)
杏奈は間違いなくマーニーが大好きだったと思います。


女友達がダメな男に引っかかって、いくら別れたほうがいいと言ってもきかないのとか、
女の子がホストに貢いじゃうのとか、
オタクが遠征してまで推しに会いに行くのとか、

全部只事ではないし、「好き」っていう感情がなきゃ出来ないと思うんですけど、

杏奈もこれに近いものがあると私はおもっていて、
あれだけかわいそうだった子がこんなにも外に出て、こんなにも前を向いて走れるのは、好きという感情がなければ絶対に出来ないことでしょう。


また、映画の後半で、マーニーが助けを求めたとき、杏奈ではなくて幼馴染♂の名前を何度も呼ぶシーンがあって、
時系列的な問題とか、夢と現実がごちゃごちゃになってるとか、そういうのでそうなってるのかもしれないけど、
私個人的には、結局こういうときって男の名前呼ぶよなぁと思ってしまいました(嫌味とかではなくて)(解釈違ったらごめんなさい)



失うこと=得られない ではない


最大のネタバレですが、物語の最後にマーニーの正体が明らかになります。杏奈と思いが通じ合うことはない、それどころか、杏奈にとってはもう絶対に会えない存在です。

あれだけ思っていたマーニーがもう会えない存在だとわかっても、杏奈は晴れやかな顔をしています。その目にはきっと、都会へ帰って育ての親と過ごす未来が映っています。

マーニーを失ってしまったわけですが、杏奈は今後生きていくうえでの沢山のことを得ているのでしょう。


こういう「失った経験」ってめちゃくちゃつらいものだけど、そこで「何かを得ている」人が私はすごく好きです。かっこいいし憧れます。
同様の理由で『秒速5センチメートル』や『千年女優』もすごく好きです。



たくさん外に出ようという話


私事ですが三月で大学を卒業しました。ひきこもりの期間含めて6年もかかりました。

ひきこもり明け、約2年ぶりにまともに受けた授業の先生がすごくいい人でした。
当時仕事をしながら大学に通っていた私をめちゃくちゃ面白がってくれて、仕事で授業を休むことも理解してくれて
友達全員卒業してしまってるので、先生が唯一の友達みたいな感じでした。
そして何より、授業がめちゃくちゃおもしろかったです。


卒業が決まった時、先生にメールをしました。
あなたのおかげで久しぶりに大学に通うのが楽しかったです、新しい環境にいっても学ぶことを楽しみたいと思います、といった内容です。

その日のうちに先生から返事が来ました。以下がその一部です


人生は真面目に努力し続けているととてもとても長く、迷って動かないでいるとすごいスピードで過ぎ去っていくように思います。
だから動き回って、いろいろな人と会って、いろいろな活動に参加していると、いずれ何かが起きます。
どうか長い人生を信じて、学び問うことを続けてください。


一年に何百人相手に授業をしているような人から長文で返信をいただけたのがまずうれしかったのですが、内容にさらにぐっと来てしまいました。


杏奈は田舎での療養を決意しなければマーニーに出会うことはなかったし、生きる活力を得ることは絶対に出来なかったはずです。
でももちろん、田舎に行けば元気が出るに違いない、と知ってて行ったわけではないです。勇気を出した結果そうなったということです。


だから決して、それ以前の何人ものやさしさに気づけなかった杏奈は悪くないし、
大事なのはそこじゃなくて、ちょっとの可能性でも信じて、ちゃんと外に出ることなんだと思います。


マーニーを観たのと、先生からメールをもらったことで学びました。自分も外に出ていろんなひとに出会って、いろんな経験をして大人になりたいです。
今はコロナが蔓延しまくっているし、物理的に外に出るというわけではないです。ちゃんとモチベーションを保ちつつ、いろんなことに挑戦して、何か達成できたときには自分を褒めつつ、生きていきたいです。

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