原体験いろいろ③
弊社の看板息子『タク』のこと。
2013年に特別支援学校からの新卒採用で雇用した知的障害を含む広汎性発達障害のタク。
2010年の自身7度目の交通事故後に『柏崎の土地で自分自身で切り拓いたネットワークの中で障害者雇用をする』という目標をたて、3年後に初めて雇えたのが彼だった。
在学中から幾度となく実習に来て、当時から「僕は卒業したらここで働きます」と言っていた。
彼は実習生の頃から2019年の今に至るまで、電車の時刻表を大切に持っている。
常に持ち歩くからボロボロの時刻表。
仕事でミスをして注意されると気持ちを落ち着けるように「○時○分発○○線・・・」と暗記しているダイアを呪文のように唱えるのだ。
そんな彼も早7年目の中堅社員。
継続Aの利用ではなく、弊社のプロパー社員なので新人の面倒を見たりもする。
性格は真面目で、電車とオートレースとディズニーが大好きだ。
この話は、そんなタクにまつわる原体験。
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2015年 春
A型立ち上げの準備に追われている真っ最中。
働き始めてから療育手帳の更新以外で休んだことがなかったタクから休みの届け出があった。
きっと親御さんに「こうやって言いなさいよ」と言われたであろう感じで「叔父さんが亡くなってお通夜に出るのでお休みを下さい」と。
いつものように飄々と真顔で彼は言う。
『あ~、きっと遠い親戚とかなのかな』と勝手に思い込んでいた。
休みの翌日も普通に出社し、その後も普通に働いていた。
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それから数日・・・。
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偶然、タクの親戚の方にお会いした。
「いつもお世話になってます~。先日もお休み有難うございました。亡くなったのは私の兄弟でして・・・」と。
彼女は続ける。
「私はあの子には時々会っているのですが社長さんのところでお世話になってから会う度に立派になって驚かされます。先日のお通夜の際も・・・」とその時の様子を語ってくれた。
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お焼香も終わり、通夜振る舞いの会場に移動する親族・参列者の波から外れ、タクが一人で遺影の前に向かって行き、何かブツブツと話していたという。
「何してるの?移動するのよ?」と言うと
タクは「叔父さんは今度から自由に出掛けられるようになったから旅行に行こうと思って時刻表で電車の時間を教えているんだよ。」「お給料も貰っているからご飯もご馳走できるよ」と。
彼女は泣きながらタクを抱きしめたという。
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タクは知的障害もあるので車の免許が取れない。
きっと彼にとっての電車は『速い』とか『カッコイイ』とかだけではなく、『大好きな人と、大好きな場所に行ける、大好きな乗り物』なんだ。
だから毎日時刻表を見て、発車時刻も暗記して、色んな人と旅行に行く夢を見てるんだと思う。
日頃からピュアな一面を覗かせることはあり、ホッコリさせられることもあるが、この日は正直泣かされた。
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彼らが職場や社会にもたらすインパクトというものは、カネやモノには替えられない。
日頃から密に接し、『仕事』を通して本気で関わっているからこそ感じることが出来る変化や、そこから見えてくる成長や喜びは、今も私を強くしてくれる。
彼らが、思う存分夢を見れる・夢を追える、そんな社会を創りたい。
創ってあげる のではない。
ともに創っていきたいのだ。
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俺をチャレンジャーにしてくれて有難う。
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