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番外編

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withE通信の作者たちが「つれづれなるままに」書いたコラムを集めました。 随時公開予定です。
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#短歌

withE通信:対岸の君

withE通信:対岸の君

対岸をつまずきながらゆく君の遠い片手に触りたかった 永田紅
新しい学年や学校になって、前のクラスや前の学校での友達のことを思い出したりする人、いるのではないでしょうか?

今回の短歌は、すこしさみしい気持ちを詠んだ短歌です。

この短歌の状況を簡単に説明していきます。
2人の間には川が流れています。
対岸でたまたま見つけた「君」は、つまずいたりなどして、なんだか危なっかしいです。
触ることのできる

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withE通信:ハムレタスサンドを落としたら

withE通信:ハムレタスサンドを落としたら

ハムレタスサンドは床に落ちパンとレタスとハムとパンに分かれた 岡野大嗣

今回は、ものすごくシンプルだけど面白い短歌を選んでみました。
この短歌の魅力はこの単純明快さにあると思います。
では見ていきましょう!!

内容はとても簡単です。
「ハムレタスサンドが床に落ちて、パン、レタス、ハムに分かれてしまった」というものです。
普通、ハムレタスサンドを落としたら悲しいですよね。楽しみにしていた昼ご飯だ

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withE通信:番外編 きみが歌うクロッカス

withE通信:番外編 きみが歌うクロッカス

きみが歌うクロッカスの歌も新しき家具の一つに数えむとする 
                          寺山修司

今回は、新年度ということで「新」が入っている短歌を紹介していきます!!
この短歌の作者、寺山修司は以前紹介しているので、どうぞそちらの記事もよろしくお願いします。

この特徴は「クロッカス」を「新しき家具」としているところです!!
早速見ていきましょう!
少し弾んだ気分で「き

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〈withE通信 番外編〉春の千切り

〈withE通信 番外編〉春の千切り

千切りにされた春です 
いま君の頭に乗った桜の花片   木下龍也
今回は、メインコラムが桜についてだったので桜についての短歌にしてみました。
この短歌の作者、木下龍也さんはとても面白い短歌を作られている方ですので他にも調べてみてくださいね。

この短歌の特徴は上の句です!!早速見ていきましょう!
(ちなみに「花片」は花びらのことです。)

まず、この短歌の状況ですが、よくある風景ですね。
「頭にな

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〈withE通信 番外編〉ハーブが煮える春の夜

〈withE通信 番外編〉ハーブが煮える春の夜

ハーブティーにハーブ煮えつつ春の夜の
嘘つきはどらえもんのはじまり     穂村弘
三月に入り、いよいよ春らしくなってきたので、この短歌にしてみました。

この短歌の特徴はリズム感と「どらえもん」だと思います。

まず、リズム感についてです。
上の句の、「ハーブティーにハーブ煮えつつ」という表現は過剰にも思えますよね。
しかし、この表現にすることでその後の「春の夜」まで句の頭に「ハ」の音が連なるこ

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<withE通信 番外編>あなご寿司と恋

<withE通信 番外編>あなご寿司と恋

君と食む三百円のあなご寿司
そのおいしさを恋とことしれ  俵万智
先日、バレンタインだったので今回は恋の短歌にしてみました。
この短歌の作者、俵万智さんと言えば、「『この味がいいね』と君が言ったから七月六日はサラダ記念日」という短歌が非常に有名ですが、この短歌も素晴らしいので見ていきましょう!!

この短歌の特徴は、恋についての表現だと思います。
高い食べ物はやっぱり安い食べ物より美味しいというイ

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<withE通信 番外編>卒業証書の筒と匂い

<withE通信 番外編>卒業証書の筒と匂い

蛇っぽい模様の筒に入れられた
卒業証書は桜の匂い      穂村弘
今回の短歌は、卒業の短歌です。
この短歌の特徴は、言葉の使い方です。
では、短歌とともに特徴を見ていきましょう!!

まず、上の句です。
筒の表現がとても秀逸だと思います。厳密に「卒業証書を入れる筒」とは言わずに
「蛇っぽい模様の筒」と書くことで、五七五におさめつつも多くの人が「ああ、あの筒ね!」となる表現となっています。

次に

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<withE通信番外編>クリスマスとクリスマスイブ

<withE通信番外編>クリスマスとクリスマスイブ

クリスマスよりイブがえらいのなぜだろう
こたつの上でぎんがみをむく     穂村弘
今回は、クリスマスが近いのでクリスマス関連の短歌の紹介です。
この短歌の特徴は、行事に上下関係を持たせている点です。
では、短歌を見ていきましょう!

「なぜだろう」という書き方から何となくわかりますが、この短歌の主人公は子供です。
(ひらがなが圧倒的に多い点からもわかりますね)
ですから、いろいろなものに興味や疑

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〈withE通信 番外編〉マッチの煙と祖国

〈withE通信 番外編〉マッチの煙と祖国

マッチ擦るつかのま海に霧ふかし
身捨つるほどの祖国はありや    寺山修司今回は、今までの紹介してきた歌人と比べたら少し昔の歌人寺山修司です。
まず、寺山修司についての簡単な説明をします。
1935年、青森県出身。彼は、短歌だけではなく詩や戯曲(芝居の台本)も沢山作るというマルチな活躍をされた方でした。

次に、短歌についてです。
この短歌の特徴は作られた時期だと思います。

では特徴の説明です。

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〈withE通信 番外編〉アリと歴史

〈withE通信 番外編〉アリと歴史

父さんが蟻を食べたりしないのは 
婆さんが蟻を食べなかったから  小野田光
この短歌は食に関する短歌です。
特徴は蟻を食べないというところです
詳しく見ていきましょう!!

「蟻を食べない。」
これって、常識のように思えますよね。でも、これはいつ決定したのでしょうか?
きっと、昔の時代の人が蟻は美味しくないことを発見して、それを後世に伝えていったのでしょう。
この短歌は、これを現代に当てはめている

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〈withE通信 番外編〉金太郎飴と人生

〈withE通信 番外編〉金太郎飴と人生

金太郎飴の断面ひしゃげてる
断ち切って断ち切って過去たち  小野田光
この短歌の特徴的な点として、一見無関係そうな金太郎飴と過去が共存している点です。
では、なぜ作者はそれらを共存させたのでしょうか?
詳しく見ていきましょう!!

まず、金太郎飴の特徴についてです。
色々な特徴がありますが、印象的なのは「どこを切っても金太郎の顔が見える」という特徴、そして「切り方によって金太郎の表情が違って見える

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〈withE通信 番外編〉ブロッコリーの見え方

〈withE通信 番外編〉ブロッコリーの見え方

「ブロッコリーは小さな森よ」とママは言う 
まるごとたべるなんていやだよ   小野田光
この短歌は、お母さんが自分の子供に嫌いなブロッコリーを食べさせようとしている場面です。
この短歌での特徴は、「ブロッコリーは小さな森よ」という表現と、下の句が全部ひらがなであるという特徴です。
では詳しく見ていきましょう!!

最初に「ブロッコリーは小さな森よ」についてです。
ブロッコリーは、根元から先に伸びて

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