”声を聴く”ということ
”社会課題”にしていいの?
団体認証が降りる数ヶ月前、ちょうど今(記事執筆時)から1年前の2021年6月、営業終了後の千葉国際水泳場でその企画は行われました。
その企画とは
”アモーレ”(愛する人)を持ち上げる”リフティング”
車椅子ユーザーの方々とそのご家族3組が、この世界初?の試みにチャレンジしてくださいました。
撮影前後にインタビューをしたのですが、このインタビューは今も自分の中で活動を行うための大きな力になっていると感じています。
日本プール利用推進協会はこの3ヶ月後(9月27日)にNPO法人として東京都の認証を受けます。
それまで設立のために動いてきたのですが、どうしても「プールを利用できない人がいること」を社会課題として考えていいのか、自信が持てない部分が正直ありました。
貧困や病気、それに関連する深刻な社会課題が日本や世界にはたくさんあります。
そしてその解決のために、NPO・NGOが日々多くの方の共感や支援を得ながら、行政などでは手の届かないところに対して活動を行なっています。
プールが使えなくても、飢えたりしない。生きていけないわけではない。
私たちがやることって、「社会課題」としていいのだろうか…
設立のために走り出してもなお、このように思ってしまうときがありました。
笑顔にしたい人たち
そんな迷いを吹き飛ばしてくれたのが、この写真撮影会でした。
水深のあるプールに全身浸かり、家族と協力して陸上では不可能なポーズの写真を撮影する。
言葉にするとこれだけですが、実はそれ以上のものがこの写真の中に眠っていたということに、インタビューや撮影前後の皆さんとの会話で気づかされます。
「スイミングスクールの体験は良くても、いざ通おうとすると難しいと言われる」
「プールだと、車椅子ユーザーではない友達と一緒に楽しめるできる遊び方がある」
「介助の方がいないと学校プールには入れないから、(コロナで)水泳授業が中止になって、(入れないという悔しい思いをしなくて済むから)嬉しかった」
個別のリアルな声を聞くことで、私たちがやろうとしていることが十分「社会課題の解決」になるのだと思えたのです。
そもそも「社会課題」は、多くの人が困っていることでなければならないというわけではありません。
誰か一人でも困っているのだとしたら、「社会課題」としていい。
この後ソーシャル分野の方々に「社会課題って何ですか?」と聞いた時に、こんな答えが返ってきました。
そして知識ではなく体験としてそれを感じることができた、教えてくれたのが、この「アモーレリフティング」だったと思います。
プールの中だから見える姿
今回の撮影会は”親子””兄弟”などの家族との写真でした。
私は、車椅子ユーザーである「子ども」側は、ご両親や兄弟に「支えられている」側だと勝手に思っていました。
でも、実際はそうではないのだと気づかされました。
プールに到着してプールサイドに行くまでの間、車から車椅子を下ろして階段の登り下りをサポートして…
それだけを見ていると、どうしても「助けが必要な側の人たち」というように見えてしまいます。
もちろん、外部環境を見るとそういったことが必要な場面はありますが、撮影に望んでいる間の彼ら(車椅子ユーザーの子どもたち)を見ていると、水中でしっかりと家族を支え、また日常生活でも彼らの存在は家族の支えになっているのではないかな、と、インタビューや会話を聞いていて感じました。(この撮影会で初めてお会いした方々なので、深く知っているわけではなくあくまで印象なのですが…)
プールの中では、重力とは真逆の力”浮力”が働きます。
陸上での「支える」という行為が、必ずしも相手を支えることにはならないのです。
しっかりとその場に在り続けること、そのことが相手を支えることにもなる。
もしかしたらこの水中写真撮影会は、見た目の「支える」と心の「支える」の2つを考えるきっかけになるのかもしれない。
実際に撮影会を行うことで、そういったものが見えてきた気がしました。
撮影時のインタビューを掲載します。
プールサイドで行ったため水の音が入って聞き取りづらい部分もありますが、字幕もあるので内容はわかると思います。
彼らの声を聞いていただく方が、私の文章の100倍伝わるものがあると思います。ぜひご覧ください。
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