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Case Study - 番外編「愛の骸 夢の残り香③」

"赤く錆びた月の夜に
小さな船を浮かべましょう
うすい透明な風は
二人を遠く遠くに流しました

どこまでもまっすぐに進んで
同じところをぐるぐる廻って

ここにいるよ あなたが迷わぬように
ここにいるよ あなたが探さぬよう

星のない暗闇で 彷徨う二人が歌う歌
波よもし聞こえるなら 少しいま声を潜めて"

by上田現「ワダツミの木」

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彼女はパッと見 人目を惹く 
とても華やかな美人 
幼少期から目立って人の輪の中心に立つタイプ
つまりはスクールカーストの上位にいる人間
そんなんだからイジメとは無縁で
男子生徒からも崇拝され大切にされた

いわゆるモテ女だったのだけれども
彼女が心奪われたのはたった一人の男性
幼馴染でもあった彼とは相思相愛の仲
誰もがそのまま二人が一緒になると疑わなかったろう

けれど彼女には叶えたい夢があった
自分が進みたいと思う道 
魂が求める人生のステージ
夢を叶えるためには上京を選ぶしかない

彼は彼でどうしても地元を離れられない
彼にも実現したい夢があり 進みたい道があった
それは地元でしか叶えられないこと

二人は別れを選び 
それぞれ別のパートナーを得ることになる

しかし絆は切れることなく
互いに対するよき理解者 親友として 
男女の境界線を保ったままに
付き合いは続いていくこととなった

プラトニックだからこそ
かけがえのない永遠のパートナーとして
唯一の人であると 心の大半を占められつつ
それを支えにして生きるかのように

そう
彼女にとっての"理想"
魂のかたわれたる人は別れを選んだその日から
紛れもなく この彼になった

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さて月日は流れ
彼女は長年連れ添ったパートナーに裏切られ
離婚という現実を突きつけられていた

失意の彼女は
仕事で訪れた南の島でとある出会いをする

彼が彼女に言った言葉が
デジャビュを伴って
魔法のように遠い日の記憶を呼び覚ます

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