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be accustomed to 原形!? ━映画『日の名残り』より

used to 原形「以前は〜だった」とbe used to 〜ing「〜することに慣れている、〜するのが常である」の使い分けは大学入試英文法の中でもっともよく出題される問題の一つと言われたりしますが、そのbe used to 〜ingとほぼ同義になる表現としてbe accustomed to 〜ingも一緒におぼえますよね。

I was accoustomed to talking with older people.
(私は年上の人と話をするのが常であった。)

ところが、先日Netflixでカズオ・イシグロ原作、ジェイムズ・アイボリー監督の映画『日の名残り』"The Remains of the Day"(1993)を観ていると、

こんな表現が出てきました。主人公の執事スティーブンス(アンソニー・ホプキンス)が女中頭ケントン(エマ・トンプソン)に対し父親への呼び掛け方を注意したところ、彼女が言い返してきた台詞。残り1h58mぐらいのシーンです。

In other houses, I was accustomed to address the underservants by their Christian names.
(他の家では、下働きの者をクリスチャンネームで呼ぶことになっておりましたので)

be accustomed to address!?
ing形ではなく、原形になっていますね。。

原作小説にも同じシーンがあるので調べてみると、

I have in the past been accustomed to addressing the under-servants by their Christian names and saw no reason to do otherwise in this house.(p55)

とto 〜ingと通常の文法通りになっていました。映画のは単なる言い間違いなのか?

これについて興味を持っていろいろ調べてみたところ、以下のnoteの記事がコメント欄を含めて、とても勉強になりました。

ydwさんはサマセット・モームの"Of Human Bondage"(1915)に出てきた

the Vicar was accustomed to read prayers

から興味を持たれ、この表現の歴史的変遷についてGoogle Ngram Viewer等を活用しながら仮説を展開されています。かつてはbe accustomed to 原形が優勢だったが、20世紀を通じて〜ing形が主流になっていった。さらに解説書によっては「〜するのが常である」の意味の時はto 原形を使うとの記述もあると。

映画『日の名残り』の引用シーンは第二次世界大戦前のイギリスなので、be accustomed to 原形が使われていても時代設定的におかしくはないわけですね。特にこの文脈では「〜するのが常である」の方のニュアンスですし。映画がそのことを意図していたかは不明ですが、この表現の奥深さに触れられる体験となりました!

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