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【英語本】『英文読解を極める』北村一真【ブックレビュー】

つい先日のkindle版セール期間中に購入した北村一真先生の新書本。

著者の北村先生の本は『英文解体新書』とベストセラーにもなった『英語の読み方』を読んだことがあって、重厚で読み応えがありながら読者へのサービス精神にも溢れる作風が特徴。ただ本書については新書ということもあってか、かなりあっさりとした仕上がりの印象ではありました。

それでもセールの縁もあり買って読み終えたことだし、個人的に印象的な学びの箇所もあったので、そこをいくつかメモを。

1.the powers that beは聖書から!
私はこのフレーズ自体はPublic Enemyの'Fight The Power'でよく知ってはいました。

We've got to fight the powers that be!

いやー、いつ聴いても格好良い!
スパイク・リー監督のMVも最高やー。
この曲とMVついてはオーサカ=モノレール中田亮さんの素晴らしいレビューもあります。


でも、なんでbeなんだろう?というのをずっと謎に思っていました。

ローマ信徒への手紙13章の1節に登場する「存在する権威は全て神によって定められたもの」という言葉に由来し、「時の権力者、上位者」を意味します。beは「存在する」という完全自動詞の用法ですが、areではなくbeとなっているのは、be動詞の3人称複数現在がbeだった古い時代の英語の名残です。

Ah-ha!
そういうことだったのかー

2.not budge an inchはシェイクスピアから!
このフレーズは繰り返し読んだ『英文解体新書』の冒頭に出てくるものであり、また私のそれこそバイブルである『英語のハノン』シリーズのフレーズ編Drill4.4に、

He won't budge an inch.

として出てくるものなので印象に残っていたのですが、これも、

答えは述語動詞のnot budge an inch「ビクとも動かない、少しも譲らない」です。これは戯曲の『じゃじゃ馬ならし』に登場するフレーズで....

シェイクスピアの原典を読むのは正直かなりきついのですが(『ハムレット』を読もうとしたことはある!)、こういったフレーズの出典を知っているだけでも、英語蘊蓄としてちょっとドヤれるのと(笑)、一度頭に入れたものの記憶のフックとなって忘れにくくなる、引き出しやすくなる効能が期待できそう。

その他、All...are created equal, bully pulpit, lame duck, glass ceiling, red/blue stateといった政治に関するフレーズもかなり紹介されており、今年がまたアメリカ大統領選挙の年ということで大いに有用なものとなりそう。

あとできうれば『英語の読み方』の巻末にあったようなお役立ち表現集とかのサービスがあれば嬉しかったりもしましたが、それは望蜀の類なのかもしれません。。

※追記
最終章の日英の情報構造の違いに基づく直訳・意訳論については、水野的先生の新刊『日本人は英語をどう訳してきたか』という本でも議論になっているお題のようですが、こちらは私は未読です。ただ最新学術議論には門外漢の一英語学習者の私的には、どんな順番で訳そうが日本語と英語はどだい違う言語なんだから、そこまで目くじらたてんと適当に伝わるところで折り合いつけたら良いのでは?などと思っちゃいます。事物↔︎英語、事物↔︎日本語、英語↔︎事物↔︎日本語の関係性は勿論重要ですが、英語↔︎日本語は越えられない磨りガラス越しにお互いを眺めるようなもの。例の袋を、ビニール袋としようがヴィニール袋にしてみようがヴァイナル袋にしてみようが、コンビニをコンヴィニと表記してみようが、plastic bagやconvenience storeとの隔たりは単語レベルですら永遠に埋まらないのだから。。それよりも各言語がいかに事物を認知し表現するのか、にリソースを割く方が、少なくとも学習者には資するのではなかろうかと。それが英語を英語で学ぶ、ということ?まあよくわかりませんが。。

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