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【参考書レビュー】『TOEIC L&R TEST 速読特急 正解のサイン』テッド寺倉

X(twitter)などで話題となりはじめているTOEIC関連の新刊本。テーマはPart7の読解力・速読力強化。著者のテッド寺倉さんはTOEIC満点60回以上のビジネス英語トレーナーとのこと。

まだ一読した段階ですが、類書とは一線を画すアプローチを含む斬新なTOEICのPart7対策本となっていると思います!

本書の特長を一言でいえば「TOEICスキーマの言語化」ではないかと。

「スキーマ」(schema)というのは言語学の用語でその領域に関する構造化された背景知識のこと。なので「TOEICスキーマ」と言えば、TOEIC的な英文を読み聴きする上で有効な前提知識ということになる。

こう言うと、TEX加藤さんが金フレの一言コメントに書かれているような「TOEICあるある」(TOEICの世界では飛行機は悪天候で遅延するし入場ゲートはしょちゅう変わる。コピー機は頻繁に故障するし、サービスにクレームを入れたら無料クーポンを貰えるなどなど)とか「ディスコース・マーカー」(howeverとかthereforeのような論理関係をしめす接続副詞など)のようなものを連想するかもしれない。

しかし本書のスキーマはそれらだけに留まらず先の話まで含んでいる。それを「正解のサイン」と呼んでおり、ここが斬新なのだ。

例えば、TOEIC学習者ならsuccessfulが「成功した」という形容詞で、applicantが「応募者」という名詞、それにmustやwillという助動詞の基本用法はそれぞれ知っているだろう。そこから本書は、

As successful applicants must be fluent in English, submission of a language proficiency test score is mandatory.

という例文をあげ、

助動詞がmustであれば、応募条件の説明。willであれば、合格者への通知や採用後の職務についての説明になる。

といった解説を加え、さらにmandatory「義務的な」という語への言及もあり、

Q. What is a requirement of the position?
A. Proficiency in a language.

というTOEIC的な応答も付されている。

つまり'successful applicants must'というカタマリがきたらそれが応募条件に関する「正解のサイン」と予測しながら読めるというわけだ。

実際、近年のTOEICを受けたことがある人ならはたと膝を打つだろう。確かにこのフレーズ、めっちゃでるし設問にも絡むわーと。

これはTOEICを何度も受けている上級者なら感覚的に身につけているものだ。こう来たらだいたいこういう設問に絡んでくるなと。ああ、annualね、はいはい、会議の回数ね、とか。

そういった上級者の感覚的なものをできる限り言語化しようとする試みが本書最大の特長だろう。be looking to doとかclosedなどこれまであまり言語化されてこなかったけれど、言われてみれば確かに、という「正解のサイン」たちが紹介されている。

本書の構成は、第1章がそういった「正解のサイン」への解説と例文集。第2章が実際のPart7に合わせた実戦演習となっている。2章の解説にはそれぞれ1章のどの「正解のサイン」が使われているかへの参照があるので、時間のない人は2章から手をつけて間違えたところ、読解に手間取った問題から1章の解説に飛ぶという使い方もできるだろう。

特に私が読んでいて感銘を受けたのは、本書p118にある、

この問題は、pleaseを伴う1文だけでは解けず、少なくとも2文は読まないと解けないようになっている。問題文を先に読んで、それに関連しそうな部分だけを検索する解き方では、むしろ行ったり来たりすることになるだろう。長文は正解サインを軸に、線で捉えるように読むことをお勧めする。

というくだりで、これは先に設問を読むことを推奨するよくある小手先の解答術とはまったく異なる。したがって各設問の解説も「正解のサイン」を軸になされており、「消去法」的なものが極力少なくなっている点も出色だ。

本書は一面においてTOEIC解答テクニック本という特質をもちろん持つし特にスコア700以上でLよりRの方が低く中でもPart7が苦手な人に最適な内容だが、それと同時に、TOEICを題材とした「スキーマ」による各単語・フレーズの働きへの理解を深めることで本質的な読解力・速読力も養成されるのだ!という王道の英語力強化本でもあると思う。

おすすめの新刊です!
私ももっと読み込んで勉強しよっと。

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