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支援者には支援できないもの

事業所を運営していて時々驚かされることがあります。
それは、「利用者さんが他の利用者さんを支援している」様子を見た時です。
 
 
うちの事業所は、比較的利用者さん同士の交流が多い方だと思います。
時には恋愛が生まれ、時には友情が芽生え、そして時にはトラブルも起きます。
 
 
必ずしもいいことばかりがそこで起こるわけじゃありません。
ちょくちょく当事者間のトラブルの仲裁に入ったりもします。
過去には大問題が起きたことだってあります。
 
 
場所によっては利用者さん同士の連絡先の交換を禁じているところもありますし、当然恋愛などはご法度としているところもあります。噂レベルでは、そもそも仲良くなってプライベートで交流することすらも禁じている、という話も聞いたことがあります。
でも、僕らが彼らの自由な交流を制限することはやっぱりなんか歪な気がして、うちの事業所では過度な規制はしていません。
 
 
 
ともかく、利用者さん同士が交流することには様々な変化を見てとることができます。
 
 
長らく対人交流に不安や恐さを持っていて、他者とコミュニケーションをとることができなかった方が、ある無邪気な利用者さんによって笑顔で人と関わる姿を見せることがあります。
僕ら支援者がどんなに頑張ってフランクに関わっても優しく関わっても、なかなか打ち解けにくかった利用者さんがたった1人の利用者さんによってその心をいとも簡単に開いたりするんです。
 
 
過去にも利用は開始したものの、なかなか事業所に通うことができなかった利用者さんが、他の利用者さんの関わりによって毎日事業所に通えるようになったこともあります。
もちろん利用者さん同士がお付き合いを始めたことでそれぞれがエンパワメントされて前に進むようになったことも度々あります。
 
 
当然トラブルなんかもあるんですが、それはそれで長い人生をこれから生きていく上でとても重要な経験を踏んでいます。
失恋だって人生のどこかであるでしょうし、友人との関係性が悪くなることだってあるはず。
知らずに、よかれと思ってやったことが自分の思わぬ形で問題になる、ということだってあると思うんです。
 
 
もしそんな経験を例えば社会に出てから初めて経験したとしたらなかなかのダメージになると思うんです。
人によっては仕事が手につかなくなるレベルかもしれない。
社会に出てからだと、今は多くの場合支援者が間近にいる状況じゃないので、すぐにその対処ができないことも少なくありません。
 
 
 

だからこそ、支援者が身近にいてタイムリーに一緒に考えることができる時にこそいろんな体験、経験をしておいてほしいと思っているから、あれこれ制限しないという環境を作るようにしているんですが、つくづく驚かされることばかりです。

 
 
 
でも、こうした場面を見て勉強させられるのは、「支援者が本人とってメインの存在になっちゃいけないんだなぁ」ということです。
 
 
現場で支援をしていると、つい支援者が本人が人生のステップを進んでいく上でのキーパーソンになりがちです。
僕も少なからずそういう向きがあると思います。
 
 
本人をなんとか前に進めようとするが余り、支援者が利用者さんのあらゆる場面でキーになってしまう。
僕ら支援者としては、利用者さんが自分を目一杯頼ってくれるようになることは一種の喜びだったりします。
自分の助言をしっかりと受け止め、困ったときはすぐに相談しにきて、しっかりと頼ってくれているのを感じていると、やたらと充足感を感じてしまいます。
 
 
もちろんそれが全て悪いことではないんです。必要な時にはそれは必要なんで。
 
 
だけど、支援者には絶対にできない支援もあります。
 
 
友達だから生まれるもの。
恋人だから生まれるもの。
職場だから生まれるもの。
家族だから生まれるもの。
 
 
相手や環境があって、その中で本人が生きづらさや悩み、困りごとが生まれたときにサポートすることはできるんですが、逆に言えば、支援者が本人の「環境」のど真ん中にいるとそれは歪になってしまうんだなぁ、ということです。
 
 
 
・・・まぁそんなこと言われるまでもないよ、という話かもしれませんが。
でも実際に支援の現場の中では支援者が当事者の環境のど真ん中で采配を振るってしまっている、ということ、多分なくはないような気がします。
支援者が本人の生活の環境をいじるのではなく、もちろんサポートはするんだけど、環境の外から支援をする、というのが本当は必要なんだろうなぁ、というのを利用者さん同士が関わる中で彼らが成長する様子を見ながら改めて感じさせられます。
 
 
最近事業所運営を考えるときに特に彼らが社会の中で生きていく、ということを念頭に置いたときに一番しなきゃいけない支援って何だろう、ということをよく考えるんですが、もちろん本人に向けての直接支援も必要なんですが、事業所をどんな環境、どんな場所にしなきゃいけないのか、ということに行き着きます。
 
 
放置するわけでも無責任なつもりも毛頭ないんですが、もっと本人達が作っていく場所、というような余白を持たせたほうがいいのかな、と思ったりもします。
 
 
僕ら支援者、というのは先生でもなきゃ管理者でもありません。むしろできるだけ自然な環境の中で本人達の様々な経験が生まれるような場づくりをしていくことが必要なんじゃないか、と思うんです。
 
 
支援者では支援できないことがあるからこそ、環境や時間、タイミングや空気感という偶発的なものだったり化学反応的なことが生まれる環境ってすごく大事なんじゃないかな、と思います。
 
 
事業所、という場づくりも大事な支援のきっかけになるんだよなぁ、という話でした。



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