スライド05

【noteで研修】事例から学ぶアセスメント入門-赤ちゃん/おじいさんの事例から-

昨年度は、さまざまな場所でアセスメントに関する研修をさせていただきました。遠方の方より、受講したいとのご希望もいただきましたので、noteで研修と称し、実際のスライドと解説コメントをまとめてみました。以下、実際に行った研修と同じスライド内容になりますが、実際の研修ではロールプレイやグループワークなどを含んでいます。

以下が目次となります。
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【目次】
1.泣いている赤ちゃんへの対応から学ぶアセスメント
2.骨折して自宅退院に不安を覚えるおじいさんへの対応から学ぶアセスメント
3.アセスメントの重要性ポイント
4.アセスメントシートの意義
5.アセスメントにおける「検証」
6.アセスメントをより深めるためのフレームワーク・知識
7.オススメ書籍
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それでは行ってみましょう。本エントリのテーマは「アセスメント」です。
対人援助の現場に身を置く方であれば必ず耳にしたことがあるであろう「アセスメント」ですが、言語的定義はさまざまです。

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本エントリでは、さまざまな定義を紹介することよりも、アセスメントの概要を理解していただくことに重きをおきますので、ひとまずはスライドの通り「現場で、対象者を支援する方法の根拠となる仮説(〜かもしれない)を考えること」と理解してください。
 たとえば、お医者さんが腹痛を訴える患者に対して、問診や触診や検査によって仮説を立て、仮説を確かめ、薬を出すという一連の行為における「仮説を立て、仮説を確かめる」ことがアセスメントというふうにイメージしてください。
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1.泣いている赤ちゃんへの対応から学ぶアセスメント

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まずはじめに、泣いている赤ちゃんに対して、わたしたちが取り得るであろう行動を例にして、アセスメントについて説明をしていこうと思います。
 みなさんのお子さん、もしくは知り合いのこどもさんが、目の前で泣いています。近くにいる大人はあなたしかいません。さて、あなたはどのような行動をとりますか?

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ひとまず、ぱっと思い浮かぶものを3つあげてみました。
・あやす
・ミルクをやる
・おもつを替える

ほかにもあると思いますが、とりあえずはこの3つを例にして考えてみたいと思います。この3つに共通するのはなんでしょうか?
そうです。すべて「行動」ですね。泣いている赤ちゃんに対して、わたしたちが取り得る「行動」です。

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さて、ここでみなさんに質問です。
「なぜ、その行動をするのですか?」

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どのような行動にも、突き詰めていけば、その行動をとる「理由」があります。泣いている赤ちゃんに対して、

・あやす
・ミルクをやる
・おもつを替える

という行動をとる際、その行動の背景には行動をとる理由となる「仮説」があるのです。

・あやす→寝起きで機嫌が悪いのかもしれないから(仮説)
・ミルクをやる→ミルクの時間が過ぎており、お腹が空いているのかもしれないから(仮説)
・おもつを替える→うんちのにおいがしたので、おむつが気持ち悪のかもしれないから(仮説)

というような感じです。くりかえしますが、行動の背景には行動をとる理由となる「仮説」があるのです。
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わかりやすいように、表で整理すると、こんな感じになります。

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そして、もう1点、大切なポイント!それは、根拠(〜かもしれない)には、仮説の根拠となる情報がある、ということです。

根拠となる情報なき仮説は、妄想でしかない、のです。仮説には、仮説の根拠となる情報がある。いいかえれば、わたしたちは、何かしらの情報を根拠に仮説(〜かもしれない)と考え、行動を起こしているのです。

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仮説が複数浮かべば、1つ1つの仮説から導かれる行動をとることができます。赤ちゃんの事例についていえば、あやしても泣き止まない、おむつをかえても泣き止まなくても、仮説がいくつも浮かべば、その仮説にそった行動を赤ちゃんに対してとることができます。

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そして、アセスメントにおいては、たくさんの仮説の数がでることがまず大切です。なぜなら、仮説が1つしか思い浮かばなければ、とりえる行動も少なくなるからです。
 泣いている赤ちゃんに対して、機嫌が悪いのかもしれない、という仮説しか浮かばなければ、「あやす」という行動にかとりえず、お腹が空いていてぐずっていたのであれば、あやしつづけるただけでは、赤ちゃんが泣き止まない、ということにもなりかねません。

アセスメントにおけるまず大切なポイントは

・たくさんの〜かもしれない(仮説)を立てること
・仮説の根拠となる情報があること

です。
いかがでしたでしょうか。もう少し勉強してみたいという方は、以下ぜひご購入いただけると嬉しいです。わたしが代表をつとめるNPO法人Social Change Agencyの活動資金(新しい研修をつくったり、新しい実践現場を開拓したりする)に充てさせていただきます。ぜひ応援いただけると嬉しいです!

また、ここまでの内容がわかりやすかったと思っていただけたなら、このnoteをシェアいただけると嬉しいです。以下、このエントリの残りの目次です。

2.骨折して自宅退院に不安を覚えるおじいさんへの対応から学ぶアセスメント
3.アセスメントの重要性ポイント
4.アセスメントシートの意義
5.アセスメントにおける「検証」
6.アセスメントをより深めるためのフレームワーク・知識
7.オススメ書籍

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2.骨折して自宅退院に不安を覚えるおじいさんへの対応から学ぶアセスメント

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つづけて、おじいさんの事例をみてみましょう。あなたは、おじいさんの担当の福祉課の職員だと仮定しましょう。骨折をして病院に入院していたおじいさんから「足腰がおぼつかないから退院したくない」と連絡がありました。

おじいさんはなぜ「足腰がおぼつかないから退院したくない」と言うのでしょうか?その理由を考えていく=仮説を立てていくことが、アセスメントの大切な最初の一歩になります。

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表にしてみるとこんな感じです。「足腰がおぼつかないから退院したくない」というおじいさんの言葉の背景にある理由を、〜かもしれないという仮説として頭の中にたくさん出していきます。

繰り返しになりますが、仮説がたくさん出れば出るほど、支援計画の数にもつながるので、まずはたくさんの仮説(〜かもしれない)をだすことがアセスメントにおいて重要です。

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そして、仮説には「根拠となる情報」があるはずです。根拠となる情報のない仮説は、仮説ではなく妄想だ、というのはさきほどもお伝えした通りです。

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〜かもしれない(仮説)と、仮説の根拠となる情報、この2つがあってはじめて、どのような行動をおこすか(支援計画)につながっていくのです。

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こちらも先ほどもお伝えしましたが、仮説がたくさん出てこなければ、行動(支援計画)の数も少なくなります。なんども言う通り、複数の「〜かもしれない(仮説)」を思い浮かぶことが大切です。

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3.アセスメントの重要性ポイント

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上記がアセスメントのポイントです。

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ここからは、現場でよく使われる「アセスメントシート」と、アセスメントにおける「検証」について、簡単にお伝えをします。

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4.アセスメントシートの意義

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アセスメントシートは、端的にお伝えすると、アセスメントにおける「〜かもしれない(仮説)」を立てることをサポートしてくれるものです。

上記の表の「シートの項目(例)」と書かれているところに、利用制度、家族関係、住環境などの記載がありますが、多くのアセスメントシートにおいては、このような記載欄があります。

アセスメントシートにおける記載欄は、欄を情報で埋めることが目的ではなく、アセスメントにおける「〜かもしれない(仮説)」を立てることをサポートするものである、ということを忘れないでください。そのように理解をすると、情報を埋めることに捉われなくなります。

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5.アセスメントにおける「検証」

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つづけて、アセスメントにおける重要なポイント「検証」です。アセスメントは、いちど「〜かもしれない(仮説)」を立てて終わりではなく、いちど立てた「〜かもしれない(仮説)」を確かめること(検証)が必要になります。そして、仮説を検証するために、目の前にいる対象者に関する情報を収集するわけです。
 このスライドでは、おじいさんの例について、たくさんの仮説が出ていることを示しています。ですが、すべての仮説について、1つずつ順番に介入していくには、仮説に優先順位をつけることが大切になります。
 そのためには、さきほどもお伝えしたとおり、仮説の根拠となる情報を収集し、優先順位の高い仮説と、低そうな仮説(捨てる仮説)を判別していく必要があります。

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このスライドのように、情報を得ることで、仮説を確かめる(検証する)ことができます。最初に立てた仮説が、情報をえてみたら、的を外していた仮説であるとわかれば、その仮説は捨てることができます。情報を得ることで、仮説は絞ることができるのです。

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ですので、アセスメントは1度行っておわりではなく、支援の過程でなんども繰り返し、より、クライアントのニーズに近い仮説を見つけていく必要があります。このスライドのように、最初に立てた仮説に対して情報を得ることで、仮説が絞られれば、その絞った仮説に対して、介入をする(支援計画を立てていく)ことができます。

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表で表すとこのようになります。確度が低そうな仮説は捨てることができ、クライアントのニーズに近いと思われる仮説に対して、行動を起こすことができます。

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以上、本noteで研修のまとめです。アセスメントにおいて重要なことは、以下3点です。

・たくさんの「〜かもしれない(仮説)」が思い浮かぶことがまず大切。

・アセスメントシートは、それを埋めることが目的なのではなく、「〜かもしれない(仮説)」を立てることを助けてくれるもの

・アセスメントは1回で完結せず、立てた仮説を検証するためにクライアント関する情報を収集し、仮説を捨てたり、優先順位をつけたえうで、行動(介入/支援計画)につなげていく

いかがでしたでしょうか?アセスメントに関する基礎的なポイントを理解して、現場でクライアント関わる際に、そのポイントを意識して繰り返し、仮説と立てる→情報を得て仮説を確かめる、ということを行っていくことだ大切です。実際の研修では、ロールプレイも織り交ぜながら、仮説を立てる、仮説を検証するということを行っていただくのですが、noteで研修では割愛をせざるを得なかったので、ぜひ、実際にオープンな研修を開催した際にはご参加いただけると嬉しいです!!

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以下、付録として、アセスメントをもっと深く学ぶための知識などをご紹介しておきます。ぜひお目通しください。

6.アセスメントをより深めるためのフレームワーク・知識

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7.オススメ書籍

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