【前編】THE RIGHT OF KAIJU(978字) │ 特撮ショート
「隊長、まだ本部から返答はないんですか」
ビジネスマンが行き交う昼時の丸の内。突如として現れた怪獣の駆除のために、警備機で飛んできた二人の隊員がいた。獲物を狙う鳶の様に、怪獣の頭上をゆっくりと旋回している。
「まだだ。怪獣保護団体から承認されていない」
「このままだと、被害は広がり続けます」
大の大人が機内で口論しなければいけないのは、近頃目につく怪獣の権利を主張する保護団大の存在を、警備隊が無視できなくなったからだ。関連施設の破壊や、隊員達の個人情報をネット上で拡散するなど、妨害活動に余念がない。
警備隊は法的措置をとり、警察も検挙対象として取り締まり始めたが、枚挙に暇がなく、警備隊は泣く泣く団体との間に、怪獣駆除ガイドラインを結び、出動時は必ず運用することを決めた。現場で駆除の必要性を一次判断し、その内容を本部を経由し、団体に都度連絡。攻撃の可否を問うことになった。
「今回の駆除は中止だ。あとは彼らに任せる」
本部から命令が飛び、隊長はそう告げた。
「馬鹿げている。理由を教えてください」
「四つ足だから、だそうだ」
警備機は基地へと踵を返し、代わりに団体員達が乗るヘリが颯爽と飛んできた。嗅いだことのない臭いのする青色の煙を巻きながら飛ぶと、怪獣はそれに気づき、ヘリの跡を追った。そのまま港湾まで飛び、怪獣は海に入って姿を消したらしい。
次に現れたのは、巨大なサボテン型の怪物獣。愛知県春日井市のとある住宅街で、突如地中から湧き出てきた。直ちに駆除が要請されたが、こちらも中止。理由は、植物であれば痛覚が存在する恐れがあるためと発表された。なお、怪植物は成長を続け、抜け落ちる棘のせいで、周辺の住宅がいくつも倒壊する被害が報告されている。
サボテン被害などには目もくれず、続いて現れたのは、パラシュートと同じくらいの大きさのクラゲの怪獣であった。小さいが、数百は下らない群れで対馬沖から発生。海中から出て空中に浮遊し、間も無く長崎県上空までやってきた。だが、この怪獣の上陸は季節性のもので、梅雨前からお盆まで現れるため、捕獲し研究され、今では養殖魚の初期飼料として有効活用されていた。
地元の漁業組合と協力して捕獲に向かった警備隊だったが、やはり無駄骨に終わる。団体は乱獲と過剰な鮮魚食品の供給につながるとして、捕獲を中止するよう要請してきた。
【後編】はこちらから
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