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2019.06.23 光あじさい苑


来週からこの辺りもいよいよ梅雨入りらしい。

本音を言うと、花を見て、写真を撮るのに適しているのは、少し曇っていて、何なら程よく、しとしとと雨の降っているような日であると思う。

太陽の光が反射して、花の色も眩しく本来の色がとらえられなくなってしまうからだ。


しかし、6月の終わりはもう見え始めてしまっている。

ぐずぐずしていて機を逃しても残るのは悔いばかりなので、ようやく紫陽花を見に出かけてきた。


時刻は9時を過ぎた頃。ゆっくりと道すがらも楽しみたいので、あじさい苑の反対側の駐車場から歩く。

見ごろを迎えた紫陽花たちと対面するためには、そこそこ急な坂道を登って行かなければならない。

道すがら、街路樹のお茶の木の上部がすっかり細かい蜘蛛の巣に覆われているのが視界の端に入ってくる。或いは、毛虫なのか……?葉と葉の間がまるでクリスマスツリーの飾りの雪にする綿を薄く伸ばしたような繊維で繋がれているのだ。

足が6本以上ある、脊椎のない、もぞもぞした生き物たちとはあまり仲良しになれない性質なので、できるだけ距離を取りたい。しかし、蜘蛛たちは景気良く、大勢で、狭い歩道の両側にまんべんなく住居を構えているものだから、身を縮めて中道を行くしかなかった。

 

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途中で、ヤマモモの木があった。以前、徳山動物園のミーアキャットが召し上がっていたあの実がなっている。

この頃、地面に落ちた実はよく見るが、今日は木になっている状態で低い場所にいてくれたので、写真に収めておいた。なかなかにおいしそうだ。


あじさい苑にたどり着くまでにも、紫陽花の株がぽつりぽつりと花を咲かせていて、それだけでも十分にきれいだ。

それらの株の中の房の中の一つに、ぶんぶんと大きな羽音を立てながら、身をうずめて体を花粉だらけにしている、もふもふとした黒い影が……。私が例外的に親しみを覚える昆虫のひとり、マルハナバチだ。かわいらしい、まるい姿が好きなので、カメラを向けたが、逃げられてしまった。

どんなに懸命に話しかけても、言葉の通じない相手はいるものだ……。


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さて、気を取り直して。やっとあじさい苑への道の入り口に差し掛かる。

ここには大きな白い花を咲かせる大きな木があるのだ。

以前、どうしてもその名が分からずに、特徴をひたすらネットで検索して、たどり着いたのが「マグノリア」の名だった。何とも詩的でうつくしい名であることだ。

それ以来この花のことを、マグノリア、マグノリアと呼んでいたが、マグノリアとはモクレン属のことを指す言葉らしい。正確に言うと、マグノリア・なにがしという名があるはずなのだ。

今日はじめて、あの木がタイサンボクと言う名だと言うことを知った。つまり、どうやら、マグノリア・グランディフローラという名になるようだ。(これまた、インターネットの力を借りて知った。)

もはや芸名か、キャラクターの名前のようだが、学名そのものなのだ。ラテン語ってそれだけでかっこいい。


そこから、虫は飛び回り、木の陰からは鳥のさえずりの響き渡る森の小道をしばらく行く。少し面白いなと思ったものの写真を撮る。

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孤高の紫陽花。ニチニチソウのよう。

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自らの頭が重たげな紫陽花

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目も覚めるような青い紫陽花。


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そしていよいよ、メインのあじさい苑だ。

まず目に飛び込んできた、見渡す限り、涼やかな彩り。

ここへ来るのはたしか一昨年以来なのだが、その時より少し、花が少ないようだった。昨年の豪雨のためか、崩れ落ちてしまっている斜面もある。

下の写真は、一昨年前の様子だ。まるで夢の中の世界のように、どこまでも紫陽花が続いている。

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そのときと比べ、青~紫色が多くなっているのは、土の成分が変わってしまったのだろうか。時期のためではなさそうなので、果実のように当たり年というのがあるのかもしれない。

期待をあまりに高くしてしまっていただけで、本当に、とてもうつくしかった。

見渡す限りに花の咲いていること、花々の間を通り抜けて行く路があることは、永遠の憧れであり、それを簡単に叶えられるのだ。身近に、そんなものが存在しているのを、これからも見逃さないようにしていたい。


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紫陽花が一番うつくしく見えるのはどこだろうと歩き回る。

そのなかで、小さな睡蓮の花を見つけた。ぺったりとした葉がかわいらしい。睡蓮を見かけるとつい、自分が小さくなって、この葉に乗っかるのを想像してしまう。

そうして小さな池のそばで辺りをぐるりと見まわしていると、声高くウグイスが鳴いていた。

かわいらしく丁寧に「さえずり」を響かせていたのだが、その声がとても近いなと思った瞬間に、警戒の「地鳴き」に変わってしまった。

※追記:訂正。あの時聞いたのは、「地鳴き」ではなく「けきょけきょけきょけきょ」という「谷渡り」でした。ウグイスの「地鳴き」はまた別の鳴き方があるようです。

自分がここへ来たせいかもしれないので、慌てて「大丈夫だよ!何もしないよ!」と、声のする方へ言ってみる。それを聞いたからか、居場所を知られないためか、飛んで行ってしまったのか、声は止まった。悪いことをした。


ところで、ウグイスの声は、完璧でないほうがかわいらしい。

個人的、「ほーほけきょ」の「けきょ」にアクセントが効いて、少し舌足らずなように聞こえる鳴き方がとても好きだ。

「ほー、ほけ、っきょ……!」と懸命に鳴いているウグイスを、想像してみてほしい……。


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さて、少し歩くと、赤い紫陽花のうつくしく見えるところもあった。

あじさい苑のすぐそばの駐車場へ降りてみると、一番眺めがよかった。

目の中にくっきりと印象を残してくれるような、濃く、はっきりとした色の紫陽花たち。もっと見られるに越したことはないが、今年得るべき紫陽花成分の必要最低限の量は摂取できたので、満足だ。

自分が好きな色だから、それの印象が強く残っているだけだろうか、私は紫陽花を見ていると、紫や青の金平糖を思い出す。

なんだか口の中が甘い気分になりつつ、帰りの坂道を下っていると、面白いものを見つけた。

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枯れ葉に紛れて、どどどんと大きなキノコが3つも顔をのぞかせていた。

なんだかよく分からないが、食べないほうがよいタイプの見た目だ……まるでバターロールのようにつやつやしている。

帰宅後にキノコ、画像で検索してみると、似ているのはテングタケ?なるほど、まちがいなく、食べないほうがよいキノコだ……。


今日はここまで。

今回の外出では、暑さにやられることも、のどが渇くこともなかった。

おあとがよろしいというほどではないが、キノコのおかげでちょっとしたオチまでついてしまった。

今度はどこにでかけようか、そろそろ暑くなってくるので、考えあぐねている。


(2019.06.23に別ブログで掲載した内容を少し手直しして写真を増やしています。)

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