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2019.8.1 萩博物館・特別展「危険生物大迷宮」

気がつけば、梅雨も明けて、すっかり信じられないような暑さに世界中が飲み込まれてしまっている。

私は、寒さよりも暑さの方がずっとずっと苦手だ。

自分の部屋から一歩も外へ出たくなくなる前に、博物館へ行くことにした。博物館ならば、屋内なので、暑さにやられてしまうこともない……!(その意味では水族館もおすすめだ。)


今の時期、萩博物館では夏休みの子供がターゲットなのだろうか、ちょっとエンターテインメント的なタイトルと紹介で特別展をやっている。去年か一昨年はたしかUMAの解説やその伝説の元になった生物剥製が勢ぞろいだった。

今年は危険生物がテーマの「危険生物大迷宮」ということで、それはつまり、あんなもふもふや、こんなにょろにょろが、必ず居るにちがいない……!と期待して、私はここに臨んだ。


館内は空調が効いていて本当に心地よい。

まずはまっすぐ特別展の方へ向かうと、暗いトンネルが入り口になり中へと続いている。さすが「大迷宮」これは大冒険になりそうだと進んだ先に、真っ先にいたのは……。

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クロヒョウ、ウンピョウ、チーター……と、さっそくの大型猫ちゃんたち。

ご覧あれ、クロヒョウの毛並みと模様の美しさ、ウンピョウの小柄ながらたくましい体つき、チーターのすらりとした足腰!なにより、剥製でしか見られない、なんだか間の抜けた顔。

どうしても、顔の部分は特に、元の姿を再現するのが難しいのだろう。見る側としてはそこもリアルであるに越したことはないが、これはこれで愛嬌がある。

それに、これほど近い距離で、柵も金網もなしに、逃げも隠れもしない彼らをじっと観察できる機会は、動物園や野生ではありえない。本当に、貴重な機会なのだ。


次に進むとすぐ会えるのは、狼だ。

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写真はタイリクオオカミ。

日本犬やハスキーなど、スピッツ系の犬はやはりこのような形をのこしているので、オオカミを見ても一見大きな犬とも思えるが、間近に見るとやはり何もかもスケールが違う。マズルの長さ、耳や牙の大きさ、足の太さ、しっぽの長さ。

それを見てもなお、犬好きの私はわんちゃん!とはしゃぎたくなったが(実は大型ネコ科動物にも、つい、ねこちゃん!と内心思ってしまう。)、考えてみればこんな彼らが群れを成して襲ってくるのである。

しかも、本気で狩って食らうつもりで、命がけで。

それは、ひとたまりもないな……。


剥製だけではない。

この特別展では骨格標本も展示されている。

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順に、ライオンの頭蓋、トラの頭蓋だ。写真になるとわかりづらいが、明らかにトラの方ががっしりと大きい。それから標本の状態のほかに、ライオンとトラの違いがわかるだろうか?

道の左右を挟んで置いてあるこれらの間を何度も往復して眺めてみたが、私にはよくわからなかった……。


次に進むと、まだまださらに体の大きな肉食獣たちに出会えた。

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上から順に、ライオン、カッショクハイエナ、ヒョウ。

ネコ科の動物は特に、動物園で会っても寝ていることが多く、全身の立ち姿は、実は見られた機会が少ない。

つくづく真剣に観察しているのに、自分の犬猫の感覚からか、脚と首の下と耳とお腹をもふもふさせてほしいと思ってしまうが……。

ところで個人的に、このカッショクハイエナの表情が、我が家の愛犬が遊んでもらえることを期待しているときの表情と似ていて、気に入ってしまった。実際はどうなのだろうと世のハイエナの写真を調べてみると、口を半開きにして口角を上げているときの表情は、やはり犬のような趣があってかわいらしかった。



さて、剥製の中でも、四つ足の獣より形が生きているときの姿に近いように思えるのが鳥類だ。

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オオワシ、イヌワシ、フィリピンワシ、ハーピーイーグル、ハクトウワシ。猛禽の彼ら、そろいもそろってイケメンだ。

足首あたりまで(本当は人間でいうとかかとのあたりを越えたところまで)もふもふとした羽毛で覆われているのもおしゃれだと思う。

特に、ハーピーイーグルの言う名前は、ある意味大人も子供もぐっときそうだな……とても強そうだ。


ところで猛禽類といえば、私の好きな言葉の一つに「ぬくめどり」というものある。

普段は小鳥を食らうタカが、冬の寒い晩に捕まえた小鳥を小さな湯たんぽのようにして足先が凍えないように温める。朝になって小鳥を解放したタカは、その日は小鳥の飛び去った方へは行かないのだという。

なんだか、やさしいロマンのあるおはなしだ。


さて、再び肉食の獣たちだ。

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後ろにいるのはベンガルトラ、手前の真っ白なトラがスノーホワイトタイガーだ。

トラの白変種のホワイトタイガーは秋吉台サファリランドでも会えるが、なかでもさらに希少な、縞模様まで真っ白なトラがこのスノーホワイトタイガーだ。

色も縞模様もないその顔は、バッチリきめていたお化粧を落としてすっぴんになってしまったような、あまり凄みのない印象だったが、それでもこの体の大きさ、脚の太さ、爪や牙はかわらない。


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こちらはウルバリン。この名を聞けば、やはりさるアメコミヒーローが頭に浮かぶが、まさにそのものの姿だ。ヒグマをも襲う恐ろしくも強い獣、クズリ。

幼いころ本で読んで植物のスグリと混乱していた気がする。イタチがジャムになったり、果実が襲ってくることになるくらいなら、ウルバリンと言ってくれればよかったのに。
(ウルバリンはイタチ科クズリ属です。)


今回、実物を間近に見られたという意味で、特に圧倒された動物がいる。

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シロクマだ。もはや、襲われたらなどとも想像できない、圧倒的なサイズ。ひたすらに、大きい。自分と同じ哺乳類だとは思えないくらいだ。

仔シロクマはあんなに真っ白でころころふわふわとして、かわいいのに……こんなに巨大化できるのはすごいことだなと思う。とはいえ、仔シロクマも実物を目の前にしたら圧倒される重量なのだろう。


猛禽ではないが、とても怖い鳥の剥製もいた。

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かの有名な(?)ヒクイドリだ。あの鮮やかな色は剥製の姿に残せないらしい。

写真や映像でしか見たことがないが、あの派手さも怖さに一役買っていたようだ……。少し写真や動画で見るより穏やかな顔に見える。

この子は徳山動物園所蔵。確かに、言われてみれば徳山で会ったことがあったかもしれない。今度確かめてみるとしよう。


ようやく、爬虫類たちも現れた。

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順に、コモドオオトカゲ、イリエワニ、ボア、キイロアナコンダ。

この4匹の中でも圧倒されるのは、やはりボアだ。先ほどのシロクマよりもっと、自分の生きている日常からは理解できないほどに長い、大きい。

星の王子さま冒頭にゾウを飲み込んだウワバミの絵が登場するが、実際の大きさを見てみると、小象くらいなら可能なのではないか、そしてまさにあの絵のようになるのではないかと思ってしまった。

瞳だけが、つぶらでかわいらしい。

これは写真ではわからないので、ぜひ、実際に見てほしいものの一つだった。


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イリエワニとカバの頭骨を見た後……。


……唯一の撮影禁止スペースへ。

一体何がいるのかと、どきどきしながら入っていくと、ガラスの向こうに箱が3つ置かれていた。

箱の中には一つに一羽、小さな小鳥の標本が横たわっている。すべてモズの仲間のようだったが、そんな小鳥の何が危険なのか。

なんと、毒をもった鳥たちだった!

食べるものから毒をとりこんでいるようだ。爪や牙もなく、ぬめぬめした皮膚や粘液もなく、それでも危険な動物もいるのだ……。


ここから再び、撮影可能な展示に戻る。

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写真は、カモノハシとチスイコウモリ。

カモノハシは、てっきりもう少し抱えて持ち上げるような大きさかと今まで勘違いしていたが、ひょいと手で軽く持ち上げられるようなサイズだった。

こんな小さなかわいい動物の、どんなところが危険なのか。そう、彼らには毒があるのだ。

本当に、面白い動物だ。ふわふわとした毛皮を持ちながら、水かきがありくちばしがあり、卵を産んで、乳で育てる。

もう一つ、自分の勘違いに気づいたのだが、カモノハシを頭に思い浮かべるとき、ビーバーのしっぽのようなごつごつしたうろこ状のものを想像してしまっていた。こんなにふわふわのしっぽだったとは……。


チスイコウモリはとても小さかった。

コウモリは、大きな種類ほど花の蜜や果実が好きなのだから、子どものころに考えがちな世界とは真逆だ。実際、小さなときに、少しだけがっかりしたような記憶がある。大きくて形がはっきりしている方が、バットマンだったり、吸血鬼だったりのイメージには近いので……。


ここからは両生類や爬虫類のホルマリン漬けが多くなり、写真を撮るのは難しかった。

負け惜しみのようになるが、特に彼らはやはり、眠っていてもいいので生きている姿が見たいと思う。静岡県にイズーという楽園があるようなので、いつか行ってみたいな。


危険生物としての虫たちの展示もたくさんあった。私は虫が苦手なので、あまりまじまじと見られなかったが……。

それにしても、アリや蚊の標本もあって、こんな小さくて脆いものをよくぞと、感動してしまった。

しかし、サソリくらいしか写真を撮っていないのを、今、少し悔いている。せめて、どんな虫がいたかだけ、文字で書き留めておけばよかった。

今度からは、そうしようと思う。


そろそろ展示も終盤、ハイブリットとして登場した、新しい様々な危険生物の剥製と標本があった。

ハイブリットの語源とされるヒュブリダ(イノブタ)はいなかったが……。

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ゆるキャラのような名前の、レオポン。ライオンの頭とヒョウの体をもっている。

いつか、神話のキメラや妖怪の鵺のような生き物も、作り出せてしまうのではないかと、そんな気がしてくる。


同様に、ハイブリットであるハブやオオサンショウウオの交雑種のホルマリン漬けを見た後は、身近な危険生物の展示があった。


いわゆる害獣になるような動物や、カエルや虫など毒のある生き物たち。

未だにアマガエルにも毒があると知らない人は大人にもいるようだったが、そんなことよりも、虫でもカエルでも元気に捕まえていた幼少期の自分は、毒のことをきちんとは知らなかったので、よくそのまま目を擦ってしまったりしなかったものだと、ひやりとした。


さて、最後の最後、これまでたくさんの危険生物たちを見てきたが、この世で最も危険なのは……のお決まりの落ちもあり、迷宮を出る。

危険生物たちに対し、やはり私も人間なので、悪い言い方だが、安全なところから、都合のいいように、彼らを愛で続けたいと思う。


萩博物館には常設展でもたくさんの剥製や標本の展示がある。小鳥や獣や虫や貝、深海魚の標本もある。

昆虫等は特に、引き出しがたくさん並んでいて、一つ一つ引き出して見れば、いつまででも眺めていられるのだと思う。

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足がずいぶん短くなっているが、ダイオウイカもいつも横たわっている。


郷土や歴史の展示、高杉晋作に関する展示も充実しているので、常に見どころは盛りだくさんだ。


今回は、特別展に集中した見方をしたが、またいずれ、ゆっくりと常設展も見に行きたいと思う。


(2019.08.01に別ブログで掲載した内容を少し手直しして掲載しています。)

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