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薔薇の妖精

——13,4歳のころ書いた物語です。きちんと形にして公開したのはこれがはじめて。(ワードファイルは紛失のため、ノートからなるべく原文ママに書き起こし。)

 これは、そう遠くない昔のこと。
 マイは、14歳で、中学へ通っていた。彼女は、花を育てて、部屋に飾るのが大好きだった。特に、白いバラがお気に入りだった。
 ある日、マイは、白いバラが7輪も咲いたので、その花をつもうとした。すると声がしたのだ。
「待って! 花をつまないで!」
 びっくりして、声の方を見ると、小さくて、とても美しい、女の人が立っていた。
「私は、このバラの妖精。どうか、この花を、つまないで。そのかわり、あなたの願いをかなえてあげるわ。」
 マイは自分をつねってみた。
「イタッ! 夢じゃないのね。本当に、願いをかなえてくれるの?」
「ええ、そのかわり、ひとつだけ。」
 マイは、うれしそうにほほえんだ。
「好きな人と、両思いになりたい!」
「分かったわ!」
 そう言って、妖精は消えた。マイはあまり信じていなかった。

 次の日、マイが学校へ行くと、友達のカナが、にやにやしながらかけよってきた。
「おはよう。」
「おはよう、カナ。どうしたの?」
「マイ、マイの王子様が付き合ってほしいって!」
「えーっ!」
 マイはまたつねってみた。
「イタッ!」
 妖精は、きちんと願いをかなえてくれたのだ。

 家に帰って、マイは妖精にお礼を言った。
「いいのよ。」
 妖精も、バラも、昨日より美しくなっていた。

 数日後、マイの彼氏が家に来ることになった。マイは「あした、アシタ、明日!」とつぶやいている。しかし、なんとなく家の中が殺風景だ。
「そうだ! 花をかざろう。」
 庭に出てみても、咲いているのは、あの、白いバラだけだった。バラは日に日に美しくなっていた。まよわずマイは手を出した。妖精は、
「やめてーっ!」
とさけんだが、かまわずマイは1つ花をつんだ。
「もう、あなたに用はないの。」
「キャー!」
 妖精は、もがき、苦しんだ。悲鳴を聞いたマイは、怖くなって、根からバラを抜いてしまおうとした。ところが妖精は、力をふりしぼり、さけんだ。
「つるよ! 巻きつけ!」
 バラのつるがのびてマイに巻きつき、身動きができなくなった。妖精が両手を広げると、とげが1つ、大きく長くなった。妖精が、手を振り下ろすと、とげは、マイの心臓に、つきささった。
「うっ…。」
 悲鳴を上げる間もなく、マイはたおれた。
 血が流れ、見る見る地面は赤く染まった。
 
 1週間後、マイの家族は、引っこした。家もとりこわされた。マイの死に方を見て、ここは呪われていると思ったのだ。
 後に残ったのは、血をすって、真っ赤に染まった、バラだけだった。

「イヤーッ!」
 気がつくと、マイは、自分のベッドで寝ていた。
「? 今までのは、すべて夢なの?」
 そこへ、フッと、あの妖精が現れた。かすかに笑っている。
「いいえ。あなたが私をつもうとしたから、まぼろしを見せたの。」
 マイは、ほっと安心した。
「フゥッ。ごめんなさい。」
「いいのよ。それより今日は、あなたの彼氏が来る日でしょう。」
 ウインクして、妖精は消えた。
「えっ、あっそうだっけ? でも、やっぱり家の中が殺風景ね…。そうだ!」

 今、マイの家に、彼氏が来ている。部屋には、白いバラがかざられている。
「この花、きれいだね。」
「でしょう! でもね、実はこれ、造花なの!」


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