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20年生きてきて一番の"合わない"友達

出会い

思えば最初に出会ったときから「苦手なタイプだ」と思った。

そのときの彼女はザ・女子といった感じのかわいい服を着ていたが、

どこかあか抜けない雰囲気のある子だった。

大学のオリエンテーションが終わって、みんなでLINEグループを作ろうと

ちょっと無理して男子にも女子にも声をかけているように見えた。

当然私にも声をかけてくれた。

私も大学にはまだ友達がいなかったのでうれしかった。

ただ、そのときの猫なで声のような甘ったるい声が耳に残った。

いつメン

オリエンテーションが終わって、なぜか私と彼女は「いつメン」になった。

いつメンは私と彼女、他2人を合わせて4人だ。

本当は、彼女と同じグループになるのは極力避けたかった。

しかし、いつメンになったのは、

他の2人とは仲良くしたかったことと、

彼女が何となくグループに入りそびれて

私たちの輪に入りたそうだったこと、

ただそれだけだったと思う。

私たちは、講義では隣同士に座り、

空きコマはみんなでおしゃべりするような

ごく普通の大学生の女子グループだったと思う。

4人の仲

4人の仲は悪くない。

良い。と言わないのは、私がずっと感じてきた違和感があるからである。

私たちは4人でいることが多かったが、

一緒にいても話が盛り上がったり、爆笑したりすることはなかった。

ただ授業の話や当たり障りのない話をしてダラダラしていた。

沈黙も多かった。

そうするとみんなスマホを見始めてしまう。

そんなとき、私は「何で今一緒にいるんだろう」と思う。

ただ、4人のうち2人同士になると不思議と楽しい会話が続くのだった。

何でそれが4人になるとできないのか、わからない。

必死に話を振ってみても続かない。

誰かが広げようとすることもない。

授業がオンラインになっても、

1人が集まろうといえば、みんなでご飯に行った。

そのときの私は、

「一緒にいても疲れるから行きたくない」

という自分の心の叫びを見て見ぬふりをして

集まりに行き、毎回くたくたになって帰ってきた。

大学でも、遊びでも、

4人でいることが快適だとは思わなかった。

私と彼女

いつメンの中でも、私と彼女だけは2人で遊んだことはない。

最初は彼女に誘われていたが何かと理由をつけて断った。

そのうち、誘われなくなった。

彼女を苦手かもと思った私の直感は間違っていなかった。

すぐにスキンシップを求めてくるところ、

授業中寝ているのにプリント見せてと言ってくるところ、

ご飯中もスマホを見たり髪を直したりするところ、

待ち合わせの時間に平気で遅れてくるところ、

いつメンの誕生日会なのに前日にドタキャンするところ、

しかも後から入った遊びの用事を優先して。

そしてあの甘えた話し方と声も。

挙げたらきりがない。

全てが好きになれなかった。

何かがプツンと切れた

私たちいつメンは同じサークルに所属していた。

私と彼女は、役職に就いた。

役員になったら、最後まで仕事を全うしなければならない。

だが、彼女は一切仕事を手伝わなかった。

LINEグループも既読スルーだ。

他の役員で協力すれば大変だけど何とか仕事は回る。

彼女は、申し訳ないとは微塵も思っていないようだった。

そしてある日、彼女から一通のLINEが来た。

「サークルやめたいんだけどこのままグル抜けていいかなー?」

怒りを通り越して呆れた。失望した。

大学生だから、もう大人だから、苦手な人でも

それを表に出さないように上手く付き合わないとって思っていた。

私の中で何かがプツンと切れてしまった。

こんな風に思った人は今まで生きてきて初めてだった。

なぜだろうか

どうしてこんな些細なことで、と思うかもしれない。

私もそう思った。

考えた末に出した答えは

〈あのLINEが直接の原因ではない。

今までの不信感や不満が少しずつ少しずつ積もっていって

あのLINEでたまたまあふれてしまったんだ〉

ということだった。

彼女はサークルを辞めた。

私が一応手続きのためにメールをしてと言ったから

業務的なメールだけを残してLINEグループを抜けた。

他の役員にも説明なく去ったので、私が説明した。

あの日から、もう彼女とは今までのようにニコニコ

話すことはできなくなった。

傍から見れば変わらないように見えるかもしれない。

けど、私の心はもう変わった。

もう4人でご飯に行こうと誘われても行かないだろう。