メルセデスの逆襲は本物か

メルセデスにやっと速さが戻ってきた。どうしてこんなに時間がかかってしまったのか。7回の優勝経験のハミルトンを擁する常勝チームとしては余りにも低迷し過ぎだろう。

なぜ冒険する必要があったのか?

2021年にドライバーズ選手権で負けたとはいえ、常勝チームであったメルセデスが2022年からの大幅なレギュレーション変更で大博打であるゼロポッドを採用する誘惑に駆られたのは何故なのか。

一つには余りにも効果的だったのでこのアイデアを捨て去るのは余りにも惜しいと思った。通常のサイドポッド型に比べて1秒のアドバンスがあったと言われている。でもこれはメルセデスが上手くグランドエフェクト効果を生かせ切れていなかった事を示している。

通常サイドポッドは余計な張り出しなので空力上邪魔な存在である、それが無ければドラッグが減りマシンはより早くなるはずだった。

しかしサイドポッドを邪魔な存在でなく、空気を加速させるプラスの存在と考えると利用価値が上がってくる。メルセデスはやっとこのスタートラインに立つことができた。

しかしこの通常のサイドポッドにして2戦目の通常型サーキットでいきなり2、3位になったのだから、今期のスタートからなぜできなかったのか今となっては惜しまれる。

それも昨年のブラジルで唯一の優勝を飾ってしまったのが影響したらしい。それで自分たちは間違っていなかった。もっともっと速く出来る筈と。しかしブラジルは空気が薄くてドラッグ少ない、空気を加速する空力の効果が少ないなど影響を考えれば、そんなに浮かれる事はなかった筈である。

事実その後のレースでは再び低迷しているので目を覚ますチャンスは幾らでもあったのに、なぜ2023年の新型まで引きずってしまったのか。そこまでゼロポッドを引っ張ってしまった責任者は誰なのか。

そもそもなんで、こんな大博打を打ってしまったのか?

2021年の最終戦に運用方法に異議を申し立てたメルセデスは結局は破れ、八年連続のドライバーズタイトル連覇は消えた。これも接戦に持ち込まれたせいで、圧倒的競争力の差をつけて2022年を迎えたいという野心があったはずだ。それがゼロポッドに飛びついた理由ではないか。

本来なら常勝チームなのだから失敗の可能性がある新しいソリューションは取らないはずで、堅実に効果が定まった方法を取り、豊富な資金で細部の部分で差を付けるのが王道だ。近年のコストキャップもメルセデスの判断を誤らせた要因の一つかもしれない。

豊富な資金が使えなくなるから、他が誰もやってない方法で出し抜くしかない。結局ゼロポッドであってもタイヤが剥き出しのF1ではリアのサスペンションなど空気抵抗になる部分が多いので無くすだけでは効果がなく。サイドポッドで上手く整流した方が空気抵抗が少なくなるという事らしい。

とにかく1年半もゼロポッド続けてしまった代償は余りにも大きくレッドブルの独壇場を許しているし、ハミルトンの人生も大きく狂わせる事態になってしまった。

それもこれも8年間のコンストラクター連続優勝を果たしたチームだから敗戦の代償は余りにも大きく、思い切った戦略が見事に外れてしまった結果なのだろう。

近年振るわないウィリアムズ辺りがゼロポッドを採用するならいざ知らずそこまで冒険しなくてもよいチームが道を迷ってしまった近年稀にみる事故である事は間違いないだろう。

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