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スキな教会建築。(写真あり)

"HSP勢"で"内向型人間"のオタクがお送りする「オタ語り」。

今回は、私が好きな『教会建築』について。

日本にはたくさんの寺社仏閣がありますが、マイナー志向の私は「教会」の方が落ち着くというか、波長が合う感じがしておりまして。

その理由や、教会建築の魅力について語っていきたいと思います。
※今回の記事は5,000文字程度です


HSP勢にやさしい教会建築めぐり

お寺や神社は、比較的山の中などにあることも多く、それに対して教会というのは「市街地」に存在することが一般的です。

私はクルマの免許を持っていないので、どこに行くにも公共交通機関を利用することになるため、やはりアクセスのしやすさの関係で教会に分があります。

また、「人混み」が苦手なHSP気質のある人間は、たくさん人が集まるところが苦手です。

一部の観光地化された有名なお寺や神社は、人がたくさん訪れていることがありますが、それに比べると、「大量に人が押し寄せる教会」というのはあまりないので、そういう意味でもHSP勢には有難いところです。

さらに、お寺などでは「護摩焚き」や「お香」などの煙や臭いがたちこめるスポットも多く、それが心地いいという方もいらっしゃるのでしょうが、物理的な刺激が苦手なHSP勢にとっては、なんとも近づきがたいことがあります。

厳かな場所でひとり立つのが好きな私にとっては、お寺や神社よりも、教会の方が落ち着く場所だったりするのです。

国内にいても「異国情緒」が味わえる。

お寺や神社は、ご縁結びや合格祈願など、「個人的な願い」を祈りに来る方が多いという印象があります。(個人的な感想です)

また近年は御朱印を求めて列ができていたり、おみくじやお守りの販売所が併設されていたりすることもあるため、お寺や神社は、「具体的なご利益」を目当てに訪れる人も多いのではないでしょうか。

それに対して、教会では「世界が平和でありますように」といった、より普遍的な願いを祈る方が多い印象で、何かの「見返り」を求めて訪れる人は少数派であるように感じます。

キリスト教というのは、その教えを全世界に広げるべく、昔から多くの方たちが活動してきました。

"全世界に行って、福音を宣べ伝えなさい"

マルコの福音書 16:5

聖書は、世界で最も多くの国の言葉に翻訳され、あまねく人々に読まれています。

中世の頃、海を渡って外国に行くことがとても危険だった時代。
西洋の宣教師の方たちは、途中で難破するかもしれない、生命の危険を冒しても、様々な国に渡航してキリストの教えを宣べ伝えていきました。

今、その努力のたまものとして、キリスト教はグローバルな規模で世界に広がっていることを、教会に来るたびに思い出すのです。

私は「内向型人間」で、いまだ海外旅行に行ったことが経験がないのですが、日本国内にいながらにして、教会建築には「異国情緒」が味わえるという魅力があります。

海外から来た宣教師や神父の方たちが建てた教会には、国や時代を越えたグローバルで普遍的な思いがたくさん詰まっているように感じます。

「ヘボン式ローマ字」を考案した《ジェームス・カーティス・ヘボン》や、日本で数多くの西洋建築を手がけた《ウィリアム・メレル・ヴォーリズ》など、病院や学校の普及といった活動に従事し、日本の社会的インフラの基礎を築いた海外の伝道師は実は意外と多いのです。

「豊かな国」の貧しさ

ノーベル平和賞を受賞した修道女の《マザー・テレサ》は、1981年に来日した際、こんな言葉を述べています。

豊かな国ほど 心が貧しい。
物質的な貧困に比べて心の貧しさは深刻です。

マザー・テレサの言葉

当時は高度経済成長期の真っ只中にあった日本。しかし、その一方で、《マザー・テレサ》は日本の問題を鋭く指摘していました。

現代においても日本は先進国でも最も自殺者や心を病む人の割合が多い国と言われます。

「経済」を心のよりどころにしていた日本は、経済が好調だった頃に比べて、すっかり自信を失ってしまいました。
物質的なものばかりを大事にして、精神的な豊かさというものを忘れてしまった日本人のことを、今から40年前の《マザー・テレサ》は見抜いていたと言えると思います。

日本だけでなく、経済的に発展していく国々は、いわゆる伝統的な宗教や信仰に対する関心を失っていく傾向が強いです。

しかし一方で、格差が強まり、また社会の中で居場所を失った人たちの苦悩というのは、昔よりもかえって深くなっている気がします。

でも「教会」という場所は、実は誰にでも開かれている場所です。

敷居が高くて近寄りがたい、という印象を教会に抱いている方もいらっしゃるかもしれませんが、ミサや礼拝がある日曜日を除けば、見学自由という教会も多いです。(場所によって違うので、要確認ではありますが)

さまざまな人の祈りを受け止めてきた教会という場は、コミュニティが崩壊している現代にとって、これからとても重要なスポットになっていくような気もしています。

好きな教会建築

ここからは、私が好きな教会を紹介していきます。
外観だけでなく、内部の雰囲気も含めて良かったところをピックアップ。

なお、訪れる際は、自家用車では駐車スペースがないことも多いため、公共交通機関を推奨したいところです。(教会は"観光地"ではないので)

また、教会堂内部の撮影は原則として許可されていないことがほとんどなので、ご注意ください。

東京復活大聖堂

「ニコライ堂」の名で親しまれる、お茶の水に存在する正教会の名建築。

東京復活大聖堂(2013年撮影)

1891年に竣工。関東大震災で被害を受けるも修復され、戦時中も空襲を受けずに残り、1962年には国の重要文化財に指定。

日本で最大の正教会の聖堂で、東京においてもその類稀なる外観から、存在感は抜群です。

東京復活大聖堂(2023年撮影)

いわゆる「ドーム型」の屋根はロシア風建築にみられる特徴で、高層ビルに囲まれながらも、しっかりと威容を放つニコライ堂は、いつ見ても絵になる風景としてそこにあります。

大和キリスト教会 カルバリーチャペル

神奈川県大和市にあるプロテスタント教会、「カルバリーチャペル」。

外観を綺麗に撮影しようと思うと電線に阻まれてしまうのが難点ですが、すごく凛々しい佇まいをした教会です。

カルバリーチャペル(2013年撮影)

そして、外観というより、個人的には内部の圧巻の広さを体験していただきたいのですが、2階まで席があるというまるで劇場のような作り。

内部の撮影はためらわれたので、実際に中に入って確かめていただきたい、地域に根差した教会です。

カトリック赤羽教会

赤羽駅のすぐそばに位置する、美しい薔薇窓が特徴のゴシック様式が眩しい「カトリック赤羽教会」。

カトリック赤羽教会(2015年撮影)

太平洋戦争の空襲で焼けた工場跡に建築され、1949年に誕生。
以来75年、すっかりこの地に馴染み地域に愛される教会。

隣には幼稚園が併設され、アウシュビッツ強制収容所で身代わりとなって殉教した《マキシミリアノ・コルベ》神父の名前が冠せられています。

弘前昇天教会

青森県弘前市の日本聖公会のレンガ造りが美しい「弘前昇天教会」。

木の扉が特徴的で、内部の作りも荘厳で落ち着きがあります。

弘前昇天教会(2017年撮影)

弘南鉄道の中央弘前駅からもほど近く、アクセスが良いのも嬉しいポイント。聖堂は1921年設立。煉瓦はイギリス方式で積み上げられ、木材は青森さんのヒバが多く用いられているとのこと。

1995年に聖堂は青森県の重要文化財に指定。

函館ハリストス正教会

函館を代表する教会と言っても差し支えない、ランドマーク的存在の「函館ハリストス正教会」。

1860年に設立されましたが、函館大火によって全焼してしまい、1916年に再建。復活聖堂は1983年に重要文化財に指定。

函館ハリストス正教会(2017年撮影)

いわゆるビザンティン建築で、外壁の美しい白は漆喰によって塗られています。内部のイコン画は日本のイコン画家、《山下りん》によるもの。

ちなみに、ハリストス正教会の近くには、「カトリック元町教会」と、聖公会の「函館聖ヨハネ教会」があり、近距離で3つの歴史ある教会が固まるというのは日本においてはかなりレアなスポットと言えるでしょう。

googleマップのスクリーンショット

堂崎教会(堂崎天主堂)

長崎県の指定有形文化財にもなっている、五島列島の福江島にあるカトリック教会。

五島列島で最初に建設された聖堂で、内部は資料館として活用されています。

堂崎天主堂(2018年撮影)

レンガ造りの外観もさることながら、内部が木造でステンドグラスは五島列島のシンボルである椿がモチーフになっていて、天井は特徴的なリブ・ヴォールト式。

施工に関わった《鉄川与助》氏は五島列島の教会群の多くを手掛けており、世界遺産や有形文化財に多数指定されています。

カトリック小樽教会 富岡聖堂

北海道小樽市に存在する、「カトリック小樽教会」。
2015年までは富岡教会と呼ばれており、1929年の建築。

赤い三角屋根が特徴の美しい建築も素敵ですが、内部のステンドグラスも荘厳で、柔らかい光が聖堂内を包み込む神秘的な雰囲気が忘れられません。

カトリック小樽教会 富岡聖堂(2019年撮影)

聖堂は小樽市の歴史的建造物に指定されているのですが、修繕の維持費用がかさむため、併設の司祭館は近年解体の憂き目に。

また、小樽市内の別の場所にある住ノ江聖堂は、今年閉鎖されてしまうというニュースもありました。

とはいえ、2025年春には、閉鎖された聖堂を利用して、お店が入居する予定。古い建築をなんとかして残そうとする市民の方々に感銘を受ける私なのでした。

旧手賀教会堂

千葉県柏市に存在する、首都圏最古の、珍しい"かやぶき屋根"の教会堂、「旧手賀教会堂」。

明治14年に民家を教会堂に転用した、"転用教会堂"で、日本で現存する唯一のもの。

旧手賀教会堂(2024年撮影)

アクセスがそれほど良いわけではないのですが、私の住んでいる地元に近かったので、自転車で現地を訪れました。

近年保存修理工事がありリニューアルされ、平日でも内部を見学することができるようになりました!

ロシア正教会の教会堂で、函館ハリストス正教会でもイコン画を描いた《山下りん》の聖画が所蔵されています。(聖画の拝観は行われていません)

番外編:見た目は教会…?

神戸北野教会

昔から海外の玄関口だった港町・神戸。
モスクや教会も多く、様々なタイプの洋風建築を目にすることができますが、新神戸駅からほど近くにある「神戸北野教会」は、実は結婚式場。
(いわゆるウェディング専用チャペルというもの)

神戸北野教会(2011年撮影)

ただ残念ながら最近は、結婚するカップルが減っているうえ、結婚式自体を行わない人も多いようで、施設自体も使われないことが増えているとのことで、残念な気持ちもあります。

神言修道会 多治見修道院

1930年創立、岐阜県多治見市にある「多治見修道院」。

多治見修道院(2016年撮影)

敷地内にブドウ畑があり、毎年ワインフェスタが開催され、ここで製造されるワインも楽しむことができるそうです。

教会や修道院というと、世俗から分離されたイメージがありますが、多治見修道院は、「地域に開かれた施設」。
地元の人たちとの交流を重視する姿勢に感銘を受けました。

碌山美術館

個人的に見た目がなんとなく教会っぽい美術館、長野県安曇野市にある「碌山美術館」。

日本の近代彫刻の礎を築いた、《荻原碌山》の作品が展示されています。

碌山美術館(2021年撮影)

最寄りの穂高駅は社殿型の瓦屋根の特徴的な駅舎で、そこから徒歩で500mほどの距離にあり、比較的アクセスが良いのも嬉しいポイント。

美術館の中庭は季節によって色合いが豊かに変化し、さまざまな情景を楽しむことができます。


内向型人間ゆえ、遠方への旅行には1年に1度ほどしか出かけられない身ではありますが、それでも教会を訪ねはじめて10年ほどが経過しました。

今年の秋は岡山方面を訪れる予定です。
「教会建築巡り」は今後も私の生涯のライフワークになりそうな予感がいたします。

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