見出し画像

小国のヒロイン。

HSP勢で内向型人間のオタクがお送りする「オタ語り」。

今回は、私が運営している女子スポーツ作品専門ブログ『Winning Heroine』にて3年前に取り上げたエントリをアップデートしてお届けします。

テーマはスポーツにおける『小国のヒロイン』。

どうぞごゆるりとお付き合いください。


自国選手ばかりのオリンピック報道

2024パリオリンピックが開幕が近づき、メディアでも五輪代表に選ばれた選手がメディアに紹介されることも多くなりました。

一方で、国内の報道といえば、ほとんどが日本の選手ばかりで、海外の選手の活躍などが報じられる機会が少ないのが現状です。

私は、オリンピック・パラリンピックという、世界中の人たちが集まる祭典で、自分の国の選手ばかりに注目するのはもったいない!と思うのであります。

近年、日本人はすっかり内向きになったと評され、円安などの影響もあり、海外に出かける機会は減ってしまいました。

グローバル化もあり、日本の世界的な存在感は薄れがちと言われる中、国内の状況だけに目を向けていることは「井の中の蛙」を助長することにもつながりかねません。

スポーツにおいても、世界を見渡してみると、様々な国の選手たちが力をつけてきており、かつては日本のお家芸と呼ばれた競技でも、なかなか上位に食い込むのは難しくなってきているのが現状です。

例えば野球のMLBでも、《大谷翔平》選手の報道ばかりが目立ちますが、MLB全体の中で日本人選手の割合というのは1%程度にすぎません。(参考:wikipedia)

近年は「日本人すごい!」という翼賛的な番組も多いですが、世界という広い視点で考えると、ちょっと違和感を感じる今日この頃です。

"オリンピック離れ"の本質

2020東京オリンピックがパンデミックで一年延期された際も、多くの方たちが開催に疑問を持ったことは記憶に新しいですが。

私自身、今の商業主義的なオリンピックに対して、大いに問題を感じるのは事実です。

大阪万博が国民の支持を得られていないように、大型のイベントに多額の税金を使うことに対して、私も賛同できかねることは多々ありますが。

開催に否定的な声が開幕前には多かった一方で、実際に開催された後のアンケートでは、「開催してよかった」という声が多かったという調査結果もあります。

一方、新型コロナウイルスの感染拡大で大会が1年延期となり、ことし7月から開催されたことについては、

「開催してよかった」は52%
▼「さらに延期したほうがよかった」が25%、
▼「中止したほうがよかった」が22%でした。

出典:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211211/k10013384081000.html

その理由について、一番多かった答えが、「選手たちの努力が報われたから」というものでした。

「開催してよかった」と思う一番の理由は何か聞いたところ、

▼「選手たちの努力が報われたから」が59%、
▼「日本での開催を楽しみにしていたから」が19%、
▼「新型コロナウイルスの感染が収まるのを待っていたらいつ開催できるかわからないから」が12%などでした。

出典:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211211/k10013384081000.html

つまり、実際に観戦した人たちが、「選手たちの頑張り」を見て、心を動かされたということが言えるのではないかと思います。

私は、今のオリンピックについて、必ずしも肯定できない部分は多々ありますが、それでも、「世界中のアスリートたちが集まって、努力してきたことを披露する場」というのは絶対に必要だと思っています。

派手な開会式やパフォーマンスなどのエンタメは抑制して、「選手たちの真剣勝負」に、しっかりとフォーカスした大会というものが求められている気がするし、観戦する人たちも、純粋に頑張っている選手を見て勇気づけられたことも多いのではないかと感じます。

「オリンピック離れ」と言われますが、結局は、「選手の真剣なパフォーマンス」をしっかり伝える工夫をIOCが怠ってきたことが背景にあると思います。

また、スポンサー契約をめぐる汚職事件や、JOCの諸問題(※)なども依然として改善される兆しが見えないことも社会の支持を得られない一因となっているように思います。

2010年バンクーバーオリンピックにおける日本勢の不振に関して長野オリンピック金メダリストの清水宏保が、コーチやトレーナーではなくJOCの役員に金が使われている現状を「お金の使い方が逆でしょう」と痛烈に批判している。フジテレビとくダネ!」では、派遣された選手の数より役員の数が多い点や、選手をエコノミークラスで移動させている点を指摘、司会の小倉智昭は「お金の使い方が変」と述べている。

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/日本オリンピック委員会

札幌五輪招致なども、国民の支持が得られず問題は結局棚上げされましたが、自分たちの利益や「経済効果」ばかりを期待して、結局はアスリートや国民のことがないがしろにされていると言わざるを得ません。

小国のヒロイン特集

ここからは、世界的にみて規模が比較的小さな国出身の女子アスリートを取り上げていきます。

私は女子スポーツを扱ったアニメやゲーム・コミックといった作品を25年間追い続けるオタクでありまして。

実際のスポーツに関しても幅広く関心を持っており、国内選手に注目されがちな昨今において、世界には素晴らしいアスリートたちがたくさんいるので、ほんの一部ですが紹介していきたい次第です。

①アレッサンドラ・ペリリ(サンマリノ)

国土の面積は十和田湖とほぼ同じ、イタリアの中にある"世界で最も古い共和国"【サンマリノ】。
人口3万人ほどの小さな国で、同国初のメダルを獲得した東京オリンピックのヒロインが《アレッサンドラ・ペリリ》選手。

クレー射撃で銅メダルを獲得した彼女は、サンマリノを五輪のメダル獲得国の中でも史上最も小さな国へと導きました。

2012年のロンドン五輪では、メダルに惜しくも届かず4位。
しかし、東京オリンピック2020では、クレー射撃混合でも銀メダルを獲得し、2つのメダルを獲得する快挙で、国内ではその栄誉をたたえて記念の10ユーロ銀貨が発行されることに。

人口3万人ですから、横浜市の100分の1よりも少ない規模。
にもかかわらず、素晴らしい活躍を果たした《アレッサンドラ・ペリリ》選手の名前を見て、「山椒は小粒でもぴりりと辛い」という言葉が思い浮かんだのでした。

②フローラ・ダフィー(バミューダ)

イギリスの海外領土である、北大西洋(アメリカの東側)にある島国、【バミューダ】。
独立国ではないため、国連には加盟していませんが、IOCが承認し、地域として参加する権利を持っています。

ちなみに【バミューダ】の面積は53.3㎡で、東京都足立区とほぼ同じ。
人口は7.2万人ほどなので、岡山市の10分の1ほど。
そんな規模の地域でありながら、オリンピックのトライアスロン競技で見事優勝を果たした《フローラ・ダフィー》選手とは。

病気やケガなどにも泣かされ、08年の北京五輪では途中棄権。
その後のレースでも1桁順位にすら届かないことも。
しかし、バミューダという島を愛する彼女は、くじけませんでした。

優勝の際には島民全員で出迎えたという伝説を残したと言われる彼女は、「小さな島国でも、やればできる」ということを証明した存在であり、オリンピックだからこそ、実現できたことでもあります。

③ショーナ・ミラー=ウイボ(バハマ)

カリブ海、西インド諸島に浮かぶ英連邦王国のひとつ、【バハマ】。
人口は39万人で、宮崎市とほぼ同じ。

そんなバハマが生んだヒロインは、2016年リオ五輪陸上女子400m決勝でアメリカの有力ライバル《アリソン・フェリックス》を僅差で退けた、《ショーナ・ミラー》選手。

ゴール直前、差し切られそうになりながらも、倒れ込むようにしてゴールした彼女の執念と、大接戦のレースは今でも鮮明に覚えています。

ちなみに、国別のオリンピックにおけるトリビアですが、人口あたりのメダル獲得者の割合では【バハマ】がトップクラス。
(記事は2007年のものなので古いですが、現在もその傾向は変わらず)

ジャマイカなどと同様、カリブ海の島国は、決して大きくないにもかかわらず陸上短距離では優秀な選手を輩出し続けています。
なお、《ショーナ・ミラー》選手は東京2020においても400mで連覇を達成。これからもバハマの次世代の選手に要注目です。

④ディストリア・クラスニキ(コソボ)

バルカン半島に位置し、面積は岐阜県ほどのヨーロッパの国家【コソボ】。
度重なる紛争などもあり、国内では長らく混乱が続いていましたが、オリンピックにおける柔道では2016年リオ五輪を皮切りに、女子柔道で金メダルを3つも輩出し、存在感を高めています。

東京オリンピック2020で48kg級金メダルを獲得した《ディストリア・クラスニキ》選手。
2024年もヨーロッパ選手権で優勝するなど、好調を維持しています。

人口は190万人ほどと、決して大きくない国ながら、非常に高いポテンシャルを持つコソボ選手の共通点は、「スピードとパワー」を兼ね備えている点です。
豪快な投げ技が持ち味で、パリ五輪でも彼女の大外刈りが炸裂する期待は十分と言えます。

⑤サスキア・アルサル(エストニア)

平昌オリンピックの入場行進で「美人すぎる旗手」として一躍脚光を浴びた、バルト三国のひとつ【エストニア】の《サスキア・アルサル》選手。

エストニアの面積は45,000㎡で、ちょうど九州・沖縄を合わせたほどの大きさ。IT大国であり、報道の自由度ランキングでも上位の常連。
なお、大相撲で大関になった《把瑠都》さんもエストニア出身。

そんな《サスキア・アルサル》選手の本職はスピードスケート選手で、平昌オリンピックのマススタートでは大逃げを打って4位入賞しています。

エストニア国内でもその美貌から人気が高く、YouTubeではなんと彼女の素敵な歌唱力まで聞くことができます!
(知らない方は女優さんかと思うでしょうが、彼女はアスリートです)

「saskia alusalu」で画像検索すると、彼女のモデルのような美しい佇まいを垣間見ることができるので、気になる方はチェックです。

競技以外の楽しみ

オリンピックでは、メダルの数や成績ばかりが注目されがちですが、私はやはり、様々な国の文化や価値観に触れられるという側面に着目しておりまして。

先日は、オリンピックのモンゴル代表の洗練されたユニフォームが話題となりました。
伝統的な衣装に現代的な要素を盛り込み、非常にスタイリッシュにまとめている点が秀逸です。

東京2020においても、【カザフスタン】の陸上女子三段跳び《オルガ・リパコワ》選手が纏っていた衣装が話題となりました。

ファイナルファンタジーの音楽に合わせて登場し、『FF感半端ない』『ゲームのヒロインのよう』とネットでも絶賛されていた"お姫様衣装"が観客を虜にしたのも懐かしい出来事。

また、東京2020では、アスリートのみならず、「大会スタッフのヒロイン」の物語もありました。

バスを乗り間違えたジャマイカの陸上選手に手を差し伸べ、競技に無事に間に合ったというエピソード。その後、選手はなんと110mハードルで金メダルを獲得し、スタッフに報告とお礼をする動画が公開され話題を呼びました。

ジャマイカ政府がこのエピソードに敬意を表し、選手をサポートした大会スタッフの方をジャマイカに招待するという粋な計らいが実現。
オリンピックならではの温かい物語に、思わずほっこり。

分断の時代に、「ひとつにまとまる」ことの重要性

現代は「分断」の時代と言われます。
地球温暖化対策ひとつとっても、なかなか前に進むことが難しい社会。

しかし、足元では、夏の日中に屋外でスポーツをすることすら難しい環境が定着しています。

様々な意見の違いはあっても、「ひとつにまとまる」ということができなければ、問題を解決することはますます難しくなると言わざるを得ません。

オリンピックのような大型イベントは、以前と比べれば存在意義が薄くなり、社会の関心も低下しています。

しかし、「世界の人たちが集まって何かをする」ということが、実はとても大事なことだと思います。

世界の指導者たちが集まって会議する「サミット」もその一つ。

話し合いには意味なんてない、だから辞めてしまえ、となれば、世界はますますバラバラになってしまうでしょう。

特に「内向き」志向が強い日本は、「議論そのもの」を拒絶する風潮が強まっているように思います。

私は現状のオリンピックに対して、もちろん課題や懸念も大きいと感じていますが、だからといって「世界中の人たちが集まること」を辞めてほしくありません。

様々な国の人たちが集い、自分に無いものを目の当たりにすることによって、今までの自分の価値観が崩される経験をしたアスリートが数多くいます。

女子卓球界のヒロイン《早田ひな》選手は、「オリンピックを経験したことで、メンタルや技術が成長した」と語ります。

アスリートのみならず、私たち市民だって、「スケールの大きなもの」を目の当たりにして、人生に影響を与えることが大いにあるはずです。

海外旅行に行っても、必ずしも価値観が変わるとは言えません。
でも、そこで「気づき」を得たことで、人生にポジティブな影響があった人は少なからずいるはずです。

何かと人の意見に干渉しがちで、"同調圧力"が強い日本。
でも、海外の生活を経験して、人と比べなくなった、という人もいます。

私も「会社員で働くのが当たり前」という日本の常識に疑問を感じて、個人事業主として今、生きていますが、それは海外の人たちの生き方にヒントを得たからでもあります。

海外からいろんなものを取り入れて、日本は豊かになった

鎖国をしていた江戸時代に比べて、明治以降、海外のものを積極的に取り入れた日本は、現代では当たり前のインフラが飛躍的に整備されていきました。

議院内閣制や裁判制度。学校教育に病院、鉄道や物流、電話や水道など。現代社会でも広く利用されているこれらの仕組みやサービスだって、もし鎖国を続けていたら、どうなっていたか。

また、「スポーツ」に関しても、江戸時代以前はほとんど行われていませんでしたが、欧米からそれを伝えた人たちのおかげで、日本でもそれが定着することにつながった事実があります。

また、日本人の平均寿命は、戦後に大きく伸びています。

食の欧米化が、成人病の原因になっているとやり玉に挙げられることも多いのですが、それは一面的な理解にすぎません。

平均寿命が延びた要因は、「日本人の食生活が変化」し、動物性たんぱく質や脂肪の摂取量が伸びた、という明確なデータがあります。

なぜ、戦後に飛躍的に平均寿命が延びたのでしょうか?それは、日本人の食生活が変化し、肉、乳、卵などの動物性食品タンパク質と脂肪の摂取量が増えたからです(図表1)。

出典:https://www.nvlu.ac.jp/food/blog/blog-046.html/

なにかと「日本古来の~」というナショナリズム的な価値観がもてはやされる傾向が強まっている昨今。

出典:https://www.nvlu.ac.jp/food/blog/blog-046.html/

でも、日本人の健康や生活を向上させたのは、「世界中の叡智がもたらされたから」こそです。

皆が当たり前に使っているスマホや生活家電だって、世界中のメーカーの部品が使われています。
いつも食べている食事も、様々な国の食材でできています。

「日本」という狭い世界だけに目を向けていると、こうしたことに気づきにくくなります。
でも、本当は、私たちは「世界と繋がっている」。

色んな人たちのおかげで、豊かな生活が送れているということに気づいていけば、きっと外国人差別や偏見なんて、無くなっていくのだと私は思います。

今回の記事タイトルも「小国のヒロイン」と、敢えて記しましたが、国の規模の大小にかかわらず、様々な地域の文化や価値観に、興味を持って生きていく人が増えたらいいなぁ、と思いつつ。

私が敬愛する女子スポーツ作品『ウマ娘』に登場する、とあるキャラクターのセリフを引用してこの記事を締めくくりたいと思います。

ほーっほっほっほ!シーキングザパールよ!知ってる?世界は可能性に満ちているの。私がそれを証明してみせるわ!

『ウマ娘 プリティーダービー』 【シーキングザパール】のセリフより引用
ワールドワイドなパールさんがお礼を言いたいようです

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?