『主戦場』
『主戦場』を観て来ました。
公開から4ヶ月のロングラン。平日21:00~にも関わらず、人が入っていて驚きました。
都内では、渋谷のイメージフォーラム、吉祥寺のアップリンク、東中野でもまだ上映しています。
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慰安婦問題について、論点を整理し、様々な立場、特に対立する2者両者の意見を取り上げ、深めていくドキュメンタリー映画です。
特徴的なのは、監督が日本人でも韓国人でもなく日系アメリカ人であること。それもあり、海外(主にアメリカですが)ではこう見られているのか、こんな動きがあるのか、日韓だけでなくこんな思惑もあるのかということも初めて知れました。
第三者的な比較的中立的な視点から取材検証し歴史的背景も考察したジャーナリズムでした。
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実は、公開されたばかりの4月から何度か「観に行くべき」と勧められていたのですがなかなか行けずにいました。
腰が重かったひとつの理由に「慰安婦問題について知識がなさすぎるから」があります。
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私は、教科書に「慰安婦」の文字がなかった世代です。
高校の頃だったか、ニュースで少女像を巡るのデモの様子やを見て「慰安婦」というものの存在を知りましたが、最初は看護師みたいに戦時下の病棟で世話する人の事かと思っていたくらいなんにも知らなかったし、知る機会もなかった。
性の話題も疎かった私は(私自身疎いですが、日本全体、特に教育現場で性の話題がタブー視されるのもあると思います)説明を聞いてもどうもピンときませんでした。
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さすがにこの歳になった今は、当時の慰安婦の役目、少女像の設置と撤廃で揉めていること、日本政府と韓国で見解が違うこと、ときどきデモが行われていることくらいは知ってはいます。
でも、日本政府と韓国ではなぜ・どの点で意見が食い違っていて、韓国ではどの論点においてデモが行われているのか、経緯や問題点はまったく理解していないし知りもしていないという自覚がありました。
だから、そんな状態でいきなり慰安婦問題を巡る論争を見たって何もわからないのではないかと思っていたのです。意味もわからずヘイトとナショナリズムの罵詈雑言を浴びる2時間になるのではと4月は思っていたところがあります。
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実際はそんなことはなく、むしろ私のように慰安婦問題をほとんど知らない人が見やすい映画でした。
少しづつ順を追って経緯を説明し、論点を整理し、両者の主張を並べ、その主張の正当性・信憑性を第三者視点で考察する。
わかりやすかったし、問題点もやっと理解できました。
また、よくこれだけの面子に取材できたなと驚きます。そしてそれを、よく2時間に編集したなと。
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今になって行こうと思ったのは、ひとつにはあいちトリエンナーレの『表現の不自由展』の話題があったから。やはり、知っておくべきではと危機感を抱いたのがあります。
感想はいくつかあるのですが、今、私たちのリテラシーと望む国家の在り方、自分たちの人権と自由が問われているように感じました。あなたたちは自分たちの手で、何を選ぶのかと。
慰安婦問題を扱う映画と紹介されていますが、その内容(特に後半)は言論の自由と人権、戦争と政治と国家の在り方について慰安婦問題を入口に考える2時間でした。
そんな視点で観た私には、観る前よりも香港のデモが他人のこととは見れないし、他にもさまざま考え直したいことが出てきています。
『主戦場』というタイトルは映画内インタビュイーの言葉から取られたものだそう。
けれど、私にはもっと広い意味で平穏に見える日々で物事が起き巻き込まれているよと、自分たちで考え政治を変えたり守るべきものを守ったりしなければならず、一人ひとりこそ、今の社会こそ、その戦いだよと。そんなタイトルに思えました。
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