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観光客様に、ウェイターちゃんは無邪気に笑う(まえがきその5)

ベトナムは社会主義国である。とは言っても、40年近く前のドイモイ政策以降、国際社会との関わりも強い。街並みは次々と近代化されているという。

現在、国家が正式に社会主義国を名乗っているのは、ベトナム・中国・北朝鮮・キューバ・ラオスの5カ国だ。ただし、これらの国以外にも、経済を国家が管理している地域はあるし、民主化に取り組んでいない国家もそれなりにあるという。(調べたら色々出てきたが、長くなるので割愛する)

ぼくは、昔から社会主義国というものに興味があった。日本やそれを取り巻く環境とは全く違うルールに生きている人がどんな生活をしているのか見てみたいと言う気持ちがあった。勝手なイメージとして、社会主義にはどこか窮屈で自由のないイメージがあった。

ベトナムに行くことにした2週間前にラオスにいたのだが、先述した通りラオスは社会主義国である。
ぼくは現地に滞在している間、そのことを知らなかった。知らないうちに社会主義国に足を踏み入れていた。

思えば、ラオスは豊かな国では無かった。
国内有数のハブ空港、ルアンパバーン国際空港の入国審査は、大きな体育館のような建物の一角に、昔の鉄道の改札のような場所があり、そこに2人の審査官が座っているだけだ。そこでパスポートを出し、顔写真を照合するわけだが、撮影に使うカメラはUSB端子のついたWebカメラ。帰国してから近所のヨドバシカメラで、全く同じものが2000円ほどで売られていた。

その後も、ラオスはハイテクの押し寄せた気配がなかった。はっきりいって街レベル、国レベルで貧しいのだろう。
けれどもその貧しさに、悲壮感はなかった。もちろん苦労は多いだろうけれど、街角でスムージーを売るおばさんの笑顔は優しさに溢れていたし、レストランで働く10代前半と思しき少女も、誇らしげに料理を運んでくれた。

何かを選択したり、贅沢をするような自由はないかもしれない。それでも、人生を浪費しているというような印象はなく、与えられた人生を主体的に消費しているように見えた。
目的もなく健康的な生活を送り、志もないのに周囲に劣らない程度の努力をしている。そんな日本に住むぼくの人生に対する向き合い方とは全く違う感じだった。

この印象をもう一度確かめるべく、ベトナムの生活に浸かってみる必要がありそうだ。
案外、社会主義の行き方というものに、学ぶことは多いのかもしれない。
そう思ったのは、ぼくが観光客様だったからだろうか…。

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