はじめての降圧薬
「種類が多すぎる」ことが悩みのタネ
研修医で、外科や整形外科などをローテートしていると、入院患者さんの血圧管理を頼まれることもあるかもしれません。
また、症状はないものの「血圧が高い」というだけで救急外来を受診される患者さんを診ることもあるかもしれません。
でも、「降圧薬は種類が多すぎてお手上げ」になりやすいと思います。
この記事では特に「一年目」の研修医がおさえておくべき降圧薬の知識について「ざっくり」述べたいと思います。いつも通り結論からいきましょう!
結論
・血圧コントロールは生活習慣病管理であり、外来で診ることが原則
・今すぐその血圧を下げなければいけないのか?を考える
(そんな患者さんは「血圧が高い」だけで受診することはめったに無い)
・どうしても血圧を下げてほしい(数字を下げてほしい)という人には
アムロジピン2.5mgを1日1回。
血圧が高くてもすぐに命に別状はないと説明し「安心」してもらう。
普通、急いで血圧を下げる必要は「ない」
まずおさえておくべきことは、
「『入院して、今すぐ下げるべき病態』以外は、のんびり下げる。」
ということです。
そもそも血圧が高いというだけでは症状がありません。だから健診などで指摘されるまで気づかれないことが多いわけですよね。
高血圧によって合併症をきたすのは、「高血圧を長期に放置した」ことが原因のことがほとんどです。ですから、「たまたま目の前に血圧の高い『だけ』の患者さんがいても焦らない」ことです。
「高血圧の管理」は普通は外来通院でするものです。だから外来通院をメインで担当しない限り「内服降圧薬」は使いこなせなくても大丈夫です。
血圧が高くて「心配で仕方ない」人には?
どうしても血圧が高くて心配と言われた場合のみ、安心してもらうためにお守りとして渡すなら「カルシウム拮抗薬」であるアムロジピンをオススメします。理由は、純粋かつ単純な降圧薬だからです。血圧を下げる以外に複雑な作用があまりないこと、長時間作用することなどがウリです。
2.5mgなどの少量で良いでしょう。心配性な患者さんは安心するだけでも血圧が下がる可能性もありますしね。
入院で速やかに降圧が必要なケースは?
一方、たしかに「原疾患が急速に悪くなる可能性があるので、速やかな降圧が求められるケース」というのもあります。これは、急性大動脈解離やクモ膜下出血、脳内出血(下げすぎは良くないといわれていた時期もありますが)、そして急性心不全(肺水腫)などですね。
「降圧により速やかに状態が改善する」あるいは
「降圧しないと時々刻々と病態が悪くなる」ケースです。
こういったケースでは静注の降圧薬が必要です。初期研修医1年目のみなさんが覚えておくべき降圧薬は二種類だけです(絞りました)。
ニカルジピン(カルシウム拮抗薬の静注薬)
ニトログリセリン(硝酸薬で、心不全に好んで使用されます)
まずはこの2つについて使い方(希釈の仕方や、注意点)をおさえておけば安心です。
静注薬は、なによりも「使い慣れる」ことが大事です。「使い慣れている」ことこそが最大のメリットになります。
しかし、そもそもこういった緊急性の高い症例を初期研修医のみなさんが「いきなり一人で」対応しなければならないケースはめったに無いと思います(できればそうであってほしい!)。
ところで、ニカルジピンは末梢から使用する場合は希釈しないと静脈炎を起こすので、中心静脈投与にするか、末梢から投与する場合はしっかり希釈してあげてください!
「別件で入院している患者さん」の血圧がたまたま高いとき
別件で入院中の患者さん、たとえば手術目的に入院している患者さんが血圧が高くても、急ぐ必要はありません。
入院すると毎日血圧測定をしますので、
① 普段高いのに放置していた患者さん
② 健診を受けてなかった人の高血圧
が判明することがあります。そもそも、③ 入院患者は、緊張していたり痛みで血圧が高い可能性も十分あります。
ですから、落ち着いた頃、もしくは退院しても血圧が高い、というような場合に初めて外来通院を勧めます。テンプレっぽいのを下記に用意してみましたので参考にしてください。
「○○さんは入院中、血圧が高かったようです。もちろん、入院のストレスや痛みで高かっただけかもしれませんし、断定はできません。ですが、もしかすると普段から「高血圧」なのかもしれません。念のため、退院してからも血圧測定を続けましょう。
退院してからも、上の血圧(収縮期血圧)がずっと140mmHg以上(ざっくりでいいです、患者さんが覚えられるように伝えましょう)あったら、通院が必要になると思うので、(できればお近くの医院の)外来を受診しましょう。」
高血圧を指摘されて外来にきた患者も、まずは血圧手帳をつけるところから始まる
実際に外来に来ていただいた後も、まずは「血圧手帳」を渡して毎日の血圧を記録するところから始まります。そこで「やはり血圧が高いですね」となれば、まず「二次性の除外」をします。採血の一部の項目は外注なので、すぐ結果は出ません。
二次性の高血圧症が否定できたら、降圧薬をちょっとずつ開始し、血圧を記録してもらう。そして通院しながらコンプライアンスを確認する、というような地道な作業になります。
通常の高血圧診療が、いかに「のんびり」なものかご理解いただけたでしょうか?安心してください、すぐに下げてあげないといけない病態は、すでに述べたように、「大動脈解離」とか「クモ膜下出血」とか、「心不全」で入院になるような患者さんくらいです。
「内服」降圧薬を学ぶ順番はどうしよう?
上記の通り、点滴に比べて「内服」降圧薬については、勉強する優先度は低いです。とはいえ、「内服」降圧薬について「まったく勉強しなくて良い」わけではありませんよね。どんな順番で勉強すれば良いでしょう?
内服の降圧薬は、「まずカルシウム拮抗薬」を覚えましょう。アムロジピンとニフェジピンを知っていれば十分でしょう。
どの種類の降圧薬なのか?を見抜く方法 〜語尾に注目〜
とはいえ、「患者さんの内服している薬のうち、どれが降圧薬なのか?」を分かるようにはなっておきましょう。そこでコツをお伝えします。語尾に注目です(一般名」にしか使えませんが、結構使えますよ!)。
カルシウム拮抗薬:〜〜ジピン
ACE阻害薬:〜〜プリル
ARB:〜〜サルタン
β遮断薬:〜〜ロール
降圧利尿薬:〜〜チアジド
もちろん例外はありますが、少しでもみなさんの毎日の業務負担が解消されれば、この記事を書いた甲斐があります。
ちょっとずつ知識を深めたい方に向けて、また記事を書こうと思うのでお待ち下さい!
参考書
僕は、一つ前の版を使って学びましたが、こういう「副作用症例」から学ぶことが大事かなと思います。降圧薬こそ、「有害事象なく使用してナンボ」だと思うからです。
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