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循環器系の「基礎」

さっそく、「循環器系」をざっくりいきましょう!

ここまでで、

① ヒトは多細胞生物で、もともと一つだった細胞が分裂増殖し、グループに分かれて分業している。

② 役割分担しているグループ別に学んだ方が効率が良い。

ということを解説してきました。

では、その「グループ」のうち、さっそく、循環器系から学びましょう。

「役割分担」の中でも「心肺機能」は「土台」

よく、運動なんかをしていたら「心肺機能が良い」みたいに言われることがありませんか?みんななんとなく使っているこの「心肺機能」ですが、要するに、体力のことと思って貰えばよいかなと思います。持久力ですね。

この「持久力」は、いわば「いかに効率よく酸素を取り込み、全身で上手にエネルギーに変換できるか?」だというイメージを持ってください。今後、何回も強調しようと思っていますが、「酸素」が取り込めなくなる(酸欠)と、確実にヒトはエネルギー不足になって、やがて死にいたってしまいます。この酸欠状態は、栄養失調の場合と比べても明らかに早いスピードで死に至ります。だから、酸素の取り込み、運搬というのはヒトが生きていく上で「土台」なのです。

「心肺停止」は、「死」と隣り合わせ

「心肺停止」という言葉を見かけたことがあるかもしれません。

特に、大規模災害や事故の場合に、ニュースが報道するのは、「○○人が心肺停止」という言い方。これは要するに「医師によって死亡確認されてはいないが、心肺機能が果たせていない状態」です。わたしはニュースを見ていてこの表現を見ると、この方々はほぼ現場で死んでしまっていて「死亡確認されていないだけ」なんだろうな、というふうにとらえます。

心肺停止になった場合、約5−10分以内に「心肺蘇生」が開始されないと確実に「脳」がダメになってしまいます(速やかに心肺蘇生が開始されても、確実に助かるともいえませんが)。つまりその人の死を意味します。それくらい「心肺停止」というのはかなり「死」と隣り合わせの状態なのです。だから、循環器系と呼吸器系の役割については「医療現場で働く限り最低限の『ニュアンス』は理解しておいて欲しい」と思っています。

「循環器系」は物流システム

多細胞生物であるヒトでは、たくさんの細胞(約37兆個という果てしない数といわれています)が共同生活しています。もともと単細胞だった頃は、各細部が自由に(?)酸素や栄養素を取り込んでエネルギーにできていましたが、ここまで集団生活になってしまうと、体内の奥の方にあるような細胞たちが酸素や栄養素を取り込めなくなってしまいます。そこで、全身の細胞が酸素や栄養素を取り込めるよう、「循環器系」という物流システムがあるのです。「循環器系」と言われるとピンとこないかもしれませんが、これはいわば

**① 心臓(ポンプ)**



**② 全身に張り巡らされた血管(交通網)**

のことだと思ってください。

心臓はイメージしやすいと思いますが、全身の血管の中を血液が巡るための「動力源」です。心臓が止まると血流がなくなる、というのは想像しやすいでしょう。

また、血管は全身にくまなく血液(つまり酸素と栄養素)を届けるための交通網です。どこかが詰まると、「つまった先」のエリアが酸欠になって死んでしまうということが起こります(これを、○○梗塞、と呼びます。心筋梗塞と脳梗塞が有名ですね)。

循環器系がうまくいっているか?をみる「要」は「血圧」と「脈拍数」

心臓が規則正しく鼓動し、それが血管に圧として伝わっている程度をみるのが「血圧」や「脈拍数」になります。これらを見ることで、なんとなく「うまくいってそう?」かどうかを予想しています。

いわゆる「バイタルサイン(生命兆候)」とよばれるいくつかの「測定値」のうちの2つです。これは、いかに循環器系が生命維持に直結しているかを実感しませんか?

医療従事者を目指すみなさんは、「体表から脈を触れる有名な場所」は覚えておいてくださいね!

- 首→頸動脈
- 手→上腕動脈橈骨動脈(橈骨と尺骨、どっちが親指側だっけ?)
- 足→大腿動脈膝窩動脈(膝「下」じゃないよ!)

特に、橈骨動脈は良く触れるクセをつけておいて損はないと思います。「ん?」と違和感を感じる「きっかけ」になることがありますよ。

「心臓の診察」といえば「聴診」だけ?

もちろん、心臓の動きを透かして見ることができたら、それに勝ることはありません(心エコーなら結構みえるようになってきました)が、そうはいきません。

硬い肋骨に囲まれており、触診も難しいです(かろうじて鼓動を感じる程度です)。

だから音を聴く「聴診」くらいしか心臓の診察はない、ともいえます(極端なことを言い過ぎだと怒られそうですが、極端に簡単にして分かりやすくするのがわたしのレクチャーのポリシーだとご理解ください!)。

でも、そのただ一つの診察法ともいえる「心臓の聴診」は正直、「ケッコー難しい」です。それこそ、慣れと経験がモノをいう世界ですので、看護師さんやコメディカルが心臓の聴診をする場合は「なんちゃって」で仕方ないだろうなと本気で思っています。

覚えておいてほしいことはまずこれだけにしておきましょう。心音にはI音とII音という2つの音があって、これらは、心臓の中の「弁」が閉まる時に聴こえる音なんだよ、ということですね。患者さん向けに説明するときは「ドックン、ドックン」の「ドッ」がI音、「クン」がII音、というような感じです。ざっくりすぎてごめんね!

まとめ

- ヒトにおいて、心肺機能は「即」死に直結する極めて重要な「土台」的機能。
- 心肺機能(酸素を効率よく取り込み、エネルギーにする)を担うのは循環器系・呼吸器系。
循環器系は、酸素や栄養素の「物流」システム。とくに酸素の流通が途絶えると速やかに全身の細胞が死に始める。
心臓はこの物流の「ボス」的存在。止まると物流が一斉に停止する。
血管はこの物流システムを支える交通網。どこかが詰まると、その先のエリアが酸欠になる。
- 循環器系を診察だけで評価するのは難しい(だからこそいくつかの検査を組み合わせて評価する)。
- 循環器系の評価で重要なのは「血圧」と「脈拍数」。患者さんの橈骨動脈に触れるクセをつけよう(もちろん感染予防はしっかりね)。

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