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研修医の日常の疑問を解消するためのマガジン

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病院の後輩研修医達に向けて、有用記事をまとめています。 「研修医一年目の、辛かったあの頃」 右も左も分からないまま、難解な医学書を買い漁るものの、 「研修が忙しすぎて読んでい… もっと読む
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#医学生

心電図読影の「トレーニングの場」を作りたい

基本的に心電図というものから逃れられない「医師」という仕事- 外科の術前。 - 担当患者の入院時ルーティン。 - 健康診断での心電図異常。 一般採血とならび、どんな進路を選ぶ医師にとっても避けられないのが心電図です。 すぐに結果が出て、すぐに緊急性の有無の判断を頼まれる検査です。 心電図に自信がないまま中堅医師になってしまった!研修医と違って、中堅医師になると、なかなか自分の担当患者の心電図を相談しにくくなりますよね。循環器の医師に相談するのも「忙しそう」だし「こんなこと

心電図読影で大事なのは、ホームランを打つことではなく、「三振をしない」こと

「もしも心電図が小学校の必修科目だったら」 「もしも心電図が小学校の必修科目だったら(香坂俊 先生 著)」をご存知でしょうか? 香坂先生の「わかりやすく、かつぶっちゃけた話しぶり(書きぶり?)」に感銘を受けたことを(わかりやすいけど、小学生にはキツイよなとかツッコミながら読んでいたことも)覚えています。 あの本が出て8年も経つと知り、早いものだなと感じています。 なぜこの話題が急に出てきたか?といえば、、、本屋で偶然出会ったからです。手にとった瞬間「第2版」であるこ

単一疾患として理解が困難な心房細動

 過去に心房細動について、コメディカル向けの内容で述べたことがあります。  心房細動には「切り口」によっていろいろと種類があります。 ですが、同じ「心房細動」でありながら「患者によって病像があまりにも異なり『過ぎ』る」ため、「心房細動」という単一疾患として理解するのが困難になったと思います。 そこで、「○○○な心房細動」のように、病態別の対応を考える必要性に迫られているなと感じていました。 患者と病態によって勧める治療すら異なる 実際に、患者さんに治療法につい

ペースメーカ植え込み適応(ややこしく考えない)

今日のまとめペースメーカ植え込み適応について、ざっくり言えば、 徐脈性不整脈 + (それによる)自覚症状 です。ただし、大事なのが「可逆的な原因」があればそれをまず解決することです。特に多いのが薬剤性・電解質異常です。これらを補正もなお、徐脈が改善せず、それによる症状で患者さんが困っている場合に、「デメリット」を十分説明した上で植え込むのが「恒久式ペースメーカ」です。 Wenckebach型とか、Morbiz Ⅱ型とか、どうでもいい 今日もざっくり言い切りました!医療従

医療現場における「言語化」のパワー②

前回記事の続きになります。まだの方はそちらもみていただければと思います! 具体例B: 「患者の訴え」を言語化できるか?  では、次に考えたいのが、「患者の訴えをいかに言語化するか?」です。これはいかに上手に「主訴」として抽象化できるか、とも言い換えられるかもしれません。他人に患者情報をプレゼンするときに、「上手な主訴の伝達」ができるとスムーズですね。 「主訴」からはじまるプレゼンテーション 医師による患者プレゼンテーションは、年齢・性別に引き続いて「主訴」から始まりますよ

ペースメーカとICD・CRT 〜なにが違うの?〜

ぶっちゃけ、「ペースメーカみたいなやつ」というレベルの認知度 よく見かける「CRT-D植え込み後」患者さんというカルテ記載。でも、「ぶっちゃけ、ペースメーカーみたいなもんでしょ。それよりちょっとゴッツくて心臓が悪い人に入ってるんでしょ」というのがぶっちゃけ循環器以外の医師のもつイメージではないでしょうか。  なので、みなさんにわかりやすく違いを解説します。研修医向けには、下の4分割表を理解しようね、と教えています。 下の4分割表を覚えましょう! そもそも、ペースメーカ

急性心不全(心不全の非代償化)の治療

 心不全増悪の治療のメインは、  ① 心臓を休め、  ② 過剰な前負荷を点滴薬で除去する ことです。  状態が安定してきたら、入院中に、数々の内服「心保護薬」を追加していきます。これらは再増悪予防のための薬になりますが、詳しくは「慢性心不全」を再増悪させないための薬として別記事にまとめますよ! デコンペる みなさんは、「デコンペる」、なんて医師が話しているのを聞いたことがあるでしょうか。"de-compensated"はいわば「非-代償」です。代償されていた心不全が、非

心電図添削で、「よくある」研修医の読影間違い

以前、心電図読影について、心構えを述べましたが、実際に現場で研修医に指導していて感じる「よくある」間違いについて、述べていきます。今回は、「リズム」に関することではなく、12誘導心電図の所見に関することを取り上げます。 よくある間違い① 下記の3つを混同するA. 左脚ブロック B. 陳旧性前壁心筋梗塞 C. (通常の右室留置の)ペースメーカ波形  これは、分かる人には「あぁ、なるほど」と思われるところなのですが、意外と多い間違いですね。  特に、左脚ブロックというのは研修

急にCreが上昇! 全例で腎疾患の精査?

本記事のまとめ(本記事は下書き中ですが、公開しておきます) Cre上昇(いわゆるAKI)を認めた場合は、まずは可逆的なCre上昇の原因をすべて「指差し確認」し、「是正」してから考えましょう。  ・全身循環が悪いなら、全身循環を改善すること  ・糸球体内圧を低下させるような薬剤を一度中断すること (ついでに、薬全般を見直しましょう)  この2点に尽きると思います。  これらを「まず指差し確認」する癖をつけましょう。 まとめ画像を貼り付けます(最後まで読んでから、また確認し

医療現場における「言語化」のパワー①

「言語化」という、抽象的だけど、大切な話 今回は抽象的な話になりそうですが、「ウンウン」とうなずいていただけるのではないかと思う内容になっています。そして、無意識ながらに現場のみなさんが「これは大事だ」と思っておられることでもないかな?と思うことを話します。  抽象的すぎる内容なので、まずは、最初にいくつかの具体例をみていきましょう。今回は具体例1つ目です。 具体例A: 「ショック」と認識できるか? みなさんは「ショック」というと、どんなイメージが湧きますか?  ①医

心臓の解剖は「骨格」から②

前回の記事、 で、冠動脈の走行や、心臓のど真ん中にある大事な骨格構造のイメージはつかめましたか?実は、この心臓の「骨格」の中にもうひとつ書き加えて欲しい構造物がひとつあります。何でしょうか? さあ、この絵を見てください。違いに気づきますか?冠動脈の付け根に「もう一つ弁がある」ことに気づきましたか? 「心臓の骨格」の中にある「大動脈弁」と 「心臓の骨格」からずれている「肺動脈弁」 大動脈弁の当たりから、左右の冠動脈が分岐していることはご存じですよね?ということは、上図

「輸液」をシンプルに理解する第一歩

「初学者が輸液をシンプルに理解するには、こう考えてみては?」という提案です。 まず、  ① 急性期の輸液  ② 慢性期の輸液 を分けて勉強することです。 「主な輸液の目的が、シチュエーションによって違う」ということをしっかり理解しておいてください! そして、① 急性期の輸液は細胞外液を使用すること。 判断が難しいことや、判断ミスが命取りになることもありますが、「循環が破綻していれば基本的にはまず細胞外液を入れる」ことを覚えておいてください。 ② 慢性期

虜になる循環の生理学③「心拍出量」というキーファクター

復習 前回は、循環を語るのに ① 酸素運搬 ② 組織灌流 の2つを意識できていれば良いことが述べられていると紹介しました。  そして、②=血圧(ざっくり)でした。  ①については、集中治療室に入ればモニタリング(SvO2)できる。一般病棟では患者さんの慎重な観察(特に意識レベル、皮膚の冷感や網状皮斑の有無、尿量の3点)によっておおまかに循環がうまくいっているかをみる必要がありました。  それでは、今回述べる内容のまとめです。 今回の内容のまとめ・循環の①、②のいずれに

虜になる循環の生理学①本の紹介

 呼吸循環に関する基本の部分(細かい知識はすべて後回しにしてきたつもりです)をいくつかの記事で述べてきました。  ここで、実は先月くらいに読んで感動した本があったので、紹介しておきます。一種の書評です。もちろん、本書が気になった方は買って読んでいただいても良いのですが、僕がいつも現場で後輩に伝えていることと一致することが沢山あったので、一部抜粋し紹介しておきます。 書名はタイトル通り「虜になる循環の生理学」です。 多くの生理学書は実践的立場から書かれていない 僕は常々、